50 / 132
ホムンクルス計画
大切な人がいない教室
しおりを挟む
学校の授業、いつも通りの風景、異なる内容であるはずのその内容はある少女の今の心では違いすらも分からない。
いつも同じ顔ぶれでみんなが居座る学校で少女にとってはひとつだけ大きな違いがあった。いつも仲良くしている少女、天草 綾香の姿がもう3日も見当たらないのであった。その少女、荒木 悠菜には連絡のひとつもなく教師たちには連絡があるのか綾香の事については話のひとつすら触れずにいつも通り教鞭を振るっていた。
初めはそう思っていた悠菜であったが、話ひとつ触れない上に机がひとつ空いているにも関わらず何一つ関心を示さない生徒たちの姿を見て不思議というものに頭を揺さぶられてクラスメイトの女子たちに訊ねるも、その瞬間みんな虚ろな目をして口を揃えてこう言うのであった。
「知らない、風邪か何かじゃない?」
普段から明るく悠菜と一緒にいたあの子、うるさいと怒られていた程の綾香がいなくなっても反応が薄過ぎる生徒たち。
ーもしかしてうるさいのがいなくなって嬉しいとか思って……なさそうー
可愛い容姿をしている綾香の写真を陰で褒め讃えながらいつも興奮して「可愛い、好き、結婚したい」などと変態共通の男ども独自の下半身で歌うような賛美歌の叫びをあげる男子生徒たちですら無反応な辺りに疑問を覚えた悠菜。
ーもしかして、綾香のこと覚えてるの、私だけ?ー
まるで世界からいなくなってしまったように誰一人として認識しない現状。誰に訊ねてもその瞬間生気を失い事務でやっているかのような回答。悠菜は決意を今ここに表明する。
「絶対に綾香を救ってみせる」
頭に何も話が入っていなかったが今は授業中、その一言に教師は振り向き睨みつけて怒号をあげた。
「お前授業の邪魔すんなよ! つーか救うってなんだよゲームか何かの夢でもみてたのか授業中に遊びのこととかマジでおめでたい頭してんな!!」
言葉の多い教師に頭を思い切り引っぱたかれて目に涙を浮かべながら大人しく座る悠菜であった。
☆
学校、授業の呪縛から解き放たれし少女はすぐさま家に帰り、半袖シャツに短いジーンズを身に着けて薄桃色のカーディガンを羽織る。そして帽子を被ってあんパンと牛乳という探偵気取りな物を持って外へと出かけるのであった。
悠菜が綾香を忘れない理由、それはきっと悠菜に宿る不思議な力のおかげであろう。
悠菜は目に意識を研ぎ澄ます。左手の薬指に赤い糸のような物を確認し、それが伸びている方向を見つめた。糸はある方角の空へと放物線状に伸びて途中で途切れて消えていた。
ー遠い、けど多分県外でもないー
ある日、トラックに轢かれて目が覚めた病院のベッドの上で隣りを見た時に映った綾香の泣き顔、そして目が覚めた事を知った途端にとびきりの笑顔を見せてくれた可愛い友だち。その友だちの去り際にたまたまふたりを結ぶ淡い赤い糸を見て分かったこと。綾香が救ってくれた、そして今も命が繋がっているのだと。
夕暮れの空の下、繋がりの証を辿って可愛い大切な綾香を探す悠菜であった。
いつも同じ顔ぶれでみんなが居座る学校で少女にとってはひとつだけ大きな違いがあった。いつも仲良くしている少女、天草 綾香の姿がもう3日も見当たらないのであった。その少女、荒木 悠菜には連絡のひとつもなく教師たちには連絡があるのか綾香の事については話のひとつすら触れずにいつも通り教鞭を振るっていた。
初めはそう思っていた悠菜であったが、話ひとつ触れない上に机がひとつ空いているにも関わらず何一つ関心を示さない生徒たちの姿を見て不思議というものに頭を揺さぶられてクラスメイトの女子たちに訊ねるも、その瞬間みんな虚ろな目をして口を揃えてこう言うのであった。
「知らない、風邪か何かじゃない?」
普段から明るく悠菜と一緒にいたあの子、うるさいと怒られていた程の綾香がいなくなっても反応が薄過ぎる生徒たち。
ーもしかしてうるさいのがいなくなって嬉しいとか思って……なさそうー
可愛い容姿をしている綾香の写真を陰で褒め讃えながらいつも興奮して「可愛い、好き、結婚したい」などと変態共通の男ども独自の下半身で歌うような賛美歌の叫びをあげる男子生徒たちですら無反応な辺りに疑問を覚えた悠菜。
ーもしかして、綾香のこと覚えてるの、私だけ?ー
まるで世界からいなくなってしまったように誰一人として認識しない現状。誰に訊ねてもその瞬間生気を失い事務でやっているかのような回答。悠菜は決意を今ここに表明する。
「絶対に綾香を救ってみせる」
頭に何も話が入っていなかったが今は授業中、その一言に教師は振り向き睨みつけて怒号をあげた。
「お前授業の邪魔すんなよ! つーか救うってなんだよゲームか何かの夢でもみてたのか授業中に遊びのこととかマジでおめでたい頭してんな!!」
言葉の多い教師に頭を思い切り引っぱたかれて目に涙を浮かべながら大人しく座る悠菜であった。
☆
学校、授業の呪縛から解き放たれし少女はすぐさま家に帰り、半袖シャツに短いジーンズを身に着けて薄桃色のカーディガンを羽織る。そして帽子を被ってあんパンと牛乳という探偵気取りな物を持って外へと出かけるのであった。
悠菜が綾香を忘れない理由、それはきっと悠菜に宿る不思議な力のおかげであろう。
悠菜は目に意識を研ぎ澄ます。左手の薬指に赤い糸のような物を確認し、それが伸びている方向を見つめた。糸はある方角の空へと放物線状に伸びて途中で途切れて消えていた。
ー遠い、けど多分県外でもないー
ある日、トラックに轢かれて目が覚めた病院のベッドの上で隣りを見た時に映った綾香の泣き顔、そして目が覚めた事を知った途端にとびきりの笑顔を見せてくれた可愛い友だち。その友だちの去り際にたまたまふたりを結ぶ淡い赤い糸を見て分かったこと。綾香が救ってくれた、そして今も命が繋がっているのだと。
夕暮れの空の下、繋がりの証を辿って可愛い大切な綾香を探す悠菜であった。
0
あなたにおすすめの小説
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる