呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

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風使いと〈斬撃の巫女〉

奈々美の力

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 そこは背の低い山の頂き。魔女研究所を見下ろすことの出来る山。そこから見下ろした建物、闇色の景色に染められた研究所は活動しておらず、あまりにも怪しい存在と化していた。
 奈々美は箒に乗って宙に浮いていた。見下ろす景色、そこへ向かって突撃するように風と一体となるような軽やかさで魔女研究所へと降下していた。
 そして入ったそこ、無機質さすら見通せない暗闇の中、歩いていくと急に電気がついた。
 目の前に立っていたのは白衣を着た少女、エレオノーラ・セヴェロディヌスカ、〈北の錬金術士〉だ。
 エレンは手にフラスコを持っていた。それが手から離れて飛んで行く。
「あの時と同じ」
 〈東の魔女〉がただ一度指を鳴らすだけでフラスコは吹き飛ばされて壁に叩き付けられる。
「残念なの」
 突如天井が開き、フラスコが3つ降ってきた。
 不意の出来事、その3つを頭に受ける。割れたガラスから漏れた液体はただ奈々美を濡らしただけ。
「何?」
 呆然とする奈々美と笑うエレン。
「成功なの!」
 奈々美は訊ねる。
「一体何をしたの」
 エレンは笑う。
「教えるわけないの」
 奈々美は目の前の相手を睨み付けて手を突き出す。魔力を練り込み魔法を撃とうとした。しかし、その結果は静寂。
「もしかして」
「気付いたの」
 そう、あの3つ、それは魔法封じ。数からして恐らく3つの属性を封じ込めているのだろう。
「なら……これしかない……でもっ!」
 エレンは駆け出した。
「あとはあの女を殺して国外へ逃亡するのみなの」
 奈々美は追いかけるも、壁が開き、天井が開き、フラスコが床に叩き付けられてそれらは燃え盛る炎となりゆく。
「やはり……あれしかないものね」
 奈々美は目を閉じる。それは苦しみと向き合う行い。

 奈々美の身体は燃え上がり始める。

 奈々美の身体を焼く炎。

 奈々美は悲痛の叫びを上げ、もがき、床を這いずるように動き始める。
 奈々美の胸辺りを肋骨の如く覆う炎、背骨のような炎、顔をも焼こうとする炎。
 自身の力が悪魔となりて自身を殺そうとする。
 奈々美はこの世の中でも有数の醜さを持った苦しみの声で呻きながら、燃え盛る悪魔のような姿でエレンを追いかける。
 背中より三本一対、計六本の炎の翼が生えて、更に苦しめていく。
「ああ、返……せ…………わた……し、の……とお」
 見えて来たエレンの元へと翼をはためかさて飛びついた。
「返せ! 返せ!!」
「お前が奪った側なの!」
「知るかっ!!!」
 地獄のような唸り声とあまりにも汚い怒声を醜い心と共に撒き散らしながら炎の悪魔の如き魔女はエレンの首を締め、力を入れる。
 エレンが抱えている眠れる少年には炎ひとつ触れない、触れさせない。
「くたばれ」
 そうして〈北の錬金術士〉は意識を燃やし尽くし、奈々美は炎を無理やり収め、時々微かに噴く炎に焼かれながらフラ付き歩き、十也の方へと歩み寄り、起こしてしまわないようにそっと抱き締めて死に際のような無様な歩みで立ち去るのであった。
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