あたし、料理をする為に転生した訳ではないのですが?

ウサクマ

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首都で生活と資金稼ぎ

旨味の元が臭いの元らしいです

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再び王様から依頼を受けた翌日……行商市まで後4日となりました。

アプさんとコカちゃんはナクアちゃんと一緒に例年通りの屋台を出すのでこちらはあたしとロウにアトラさんで……回りますかねこれ?

こういう時のロウは余り頼れないのでアトラさんには頑張って貰いましょう。

いざとなったら王宮から何人か派遣して頂きますけどね。

で、今は試作品用のポクー肉に貰ってきた骨を使っていくつか作ってみたのですが……

「久しぶりのトンカツ……ソースもカラシもないけど美味ぇ」

「このトンコツスープっていうの、匂いはアレだが癖になるねぇ」

「角煮っていうの柔らかくて……美味しい」

「この冷しゃぶサラダという料理はマヨネーズに合いますね」

「ナクアはこのチャーシューっていうのが好きー!」

うん、中々好評ですね。

アトラさんはマヨネーズよりポクーを味わって欲しいのですが。

余談ですが角煮を作る時、お酒を大量に使ったせいでアプさんとアトラさんから物凄く睨まれました……怖かったです。

因みにこの世界のお酒は芋や米を原料にした透明なショウチュウと呼ばれる物でした。

何で焼酎があるのに酢や醤油がないのかは聞いてはいけない事なのでしょうね……多分。

せめて酢があればマヨネーズを作る手間が少なく済むんですが。

後は蜂蜜から作る黄金色に輝くお酒があるそうですがそれは王族だけが、それも特別な時にしか飲めないらしいです。

唯一飲んだ事があるというサーグァ様からの情報ですからきっと真実なのでしょう。




で、その日の夕飯に成果の報告がてら王様達にも出した訳ですが……

勿論王様の夫人達やヴァレンさんにも出しましたよ。

でもヴァレンさんはもう引退したと聞きましたが何で王様に同行しているのでしょうか?

「確かに美味いのだが……これ等を屋台で出すのは難しいのではないかね?」

まあそう言われるだろうとは思っていましたよ。

他の屋台との兼ね合いもあって竈は2つしか使えないらしいですし。

角煮は作り置き可能ですが手間が掛かり過ぎますし、人件費だけでかなりしてしまいます。

トンカツは一々揚げてる時間がないですし冷しゃぶサラダは野菜を刻むのに時間が掛かります。

「御心配には及びません、屋台で出すのはこれです」

はい、いつぞやのラーメンもどきにチャーシューを乗せました。

焼豚チャーシューと言いつつ煮豚なのはお約束って事でご愛敬下さい。

他の具は煮玉子とタマネギのみじん切りだけです。

本当なら長ネギ使いたいんですけど、ないんだから仕方ありません。

でもアトラさんのツテでパン屋でしか使えない強力粉が手に入ったので、だいぶ中華麺っぽくなりました。

「ほぉ、いつぞやのラーメンとやらか……前のより凄い匂いがする上にやけに白いな」

「以前と違いポクーの骨だけを10時間程煮込んだスープです、白いのは骨の骨髄……いわゆる旨味の元が溶け混んでいる証拠です」

詳しくは知りませんが強火で煮込み続ける事でコラーゲンが乳化するとか何とか……

あたしもよく解らないので説明は許して下さい。

生姜があれば一緒に煮込んで匂いを抑えられるんですがなかったので諦めます。

因みに味付けは塩と小さじ1杯の醤油です。

「このコクのあるスープに固い麺が合いますねぇ」

最初に食べたのはやはりサーグァ様でした。

トンコツスープにはサッと湯がいた固い麺が1番です……柔らかい麺が好きな人も居ますけど。

それに屋台の立ち食いなら麺を茹でる時間を減らせばその分お客が回りますからね。

王様も売り上げは関係なく、なるべく大勢に食べて貰って欲しいと言ってましたし……ある意味ピッタリな料理でしょう。

何よりこの世界では骨が安い所か無料タダで手に入りますし。




「成程……匂いはアレだが良い味だ」

「サーグァさんが躊躇なく食べてたから不安はありませんでしたけど……予想以上の味です」

「わたくしはちょっと……」

「生まれて初めてポクーを食べる事が出来た……我が生涯に一辺の悔いなし!」

サーグァ様への信頼感に救われましたね……とはいえエリナ様は無理だった様ですが。

日本でも美味しいけどこの匂いに耐えられない、と口に出来ない人は結構居ますからね。

何でそんなの出すんだって?

ロウが好きな物を作って何が悪いのですか?

「このスープ……もしかしたら!」

おや?ヴァレンさんが何か取り出してスープに入れてますね。

「やはりか……このスープにはおろしたガリクが良く合う!」

「ガリク?」

もしかしてニンニクの事でしょうか?

確かに本場でもおろしニンニクや紅ショウガ、変わった所で辛子明太子を入れて食べる人が居ますし……合わない筈はないですね。

「ガリクはこの国のグヌットでしか育たない珍しい植物で、匂いと刺激が強過ぎるし食べた後に口臭が酷くなるせいで余り普及はしてませんが一部に愛好家が居ますわ」

サーグァ様が食べるのに夢中になってるからかエリナ様が教えてくれました。

グヌットって……確かコカちゃんが行くのを嫌がっていたアマゾネスの集まる村でしたっけ。

得られる物が魚かニンニクなら魚を選んで正解でしたね。

「確か他にもジンジャーという辛味と刺激の強い植物も育ててましたね……これはガリク以上に人気がないからグヌットだけで消費されている様ですが、根の部分をレモン果汁に漬けて食べられているみたいですわよ」

ジンジャー……間違いなく生姜ですね。

何でこれは名前がそのままなのかはこの際どうでもいいでしょう。

「そのガリクとジンジャーとやら、何とか手に入りませんか?」

「ふむ、一応理由を聞いてもいいかね?」

「ガリクは仕上げに少量混ぜて、ジンジャーはポクーの骨と一緒に煮込む事でこのスープの匂いを消し、旨味を増やす事が出来ます」

中にはトンコツスープに豚骨以外の副材料を使うのは邪道だと批判する人も居ますが、ここは日本じゃありませんからね。

万人受けを狙うなら匂いを抑えた方がいいでしょう。

実際エリナ様の他にもコカちゃんとナクアちゃんが臭くて食べられないと言ってましたし。

慣れれば病み付きになるんですけどね……ロウやアプさんの様に。




「このスープが更に美味しくなるのですか!?」

予想通り真っ先にサーグァ様が反応しましたね……

「それは非常に興味深いな……よし、馬を出そう!」

「あなた、お待ち下さい!グヌットに向かった男性の末路はご存知でしょう!」

「最悪の場合公衆の面前で腹上死、運が良くても不能になってしまいます!」

エリナ様とマリー様が必死に王様を止めていますね……

うん、本当にあの時グヌットを避けたのは正解でした。

それにしてもこの世界じゃ同性でも子供を作れるらしいのに何で男性がそんな目に合うんでしょうか?

「グヌットは元々誰からも相手にされなくなった娼婦や適齢期を過ぎても相手が見つからなかった貴族の娘が集まって出来た村だからな……男性を襲うのはあの村の住民の本能としか言えん」

今度はヴァレンさんが教えてくれましたが……要約するとモテなかった女性の怨念が渦巻いている、と。

そしてトゥグア様の愛で子孫だけは残せてしまうから怨念が脈々と受け継がれてしまって今に至ると、そういう事ですか。

探せばモテなかった男性だけの村なんかもありそうですね……絶対に近づきたくありませんけど。

というか、そんな村はさっさと滅ぼした方が国の為になるんじゃ?

「ならば仕方ない……ヴァレン、馬に乗れる女性騎士を選抜せよ!何としても2日以内にジンジャーを可能な限り手に入れるのだ!」

「ハッ!」

どうやら入手する事が出来そうで一安心です。

それはそうと何で2日?

早いに越した事はないし一応試作はしたいですけど。

「サーグァの為なのは勿論だが、私だって美味い物を食べたいのだ」

王様は本当に正直ですね!

ある意味助かりますからいいんですけど。
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