10 / 140
どーも野菜狂信者さん、知ってるでしょ?ピットマスターでございます
鮭のちゃんちゃん焼き・日本酒?添え
しおりを挟む
朝になって例の肉バーガーを改良しようと思っていたんだが……
「ソース味ならマヨネーズ付ければいいんじゃない?お好み焼きみたいに」という、可愛い妹の一言を実践してみたらこれ以上手を入れる余地がない味に仕上がった。
マリアも絶賛していたし、タープなんて昇天しかけたくらいだ。
そういえば尊敬するピットマスターもあのサンドイッチは外側の肉にマヨネーズを塗っていたっけ……まさに盲点だったよ。
問題は肝心のマヨネーズが残り少ないって事なんだが……コンテストまで持つのか?
「というか可愛い妹よ……あれだけ太るのを気にしていた癖に自らカロリーを増やすのか?」
「だってそれ、私が食べる訳じゃないし」
それはそれで酷いが、事実ではあるな……
個人的には食って欲しい所だが、カロリー爆弾であるのは否定出来んので無理強いはすまい。
あれだけ数をこなしたお陰かベーコン作りもスムーズに進んだ。
マリアから頼まれた分に俺が使う分も含めて夕方になる前には全て終わらせられたよ。
まあ今回マリアが頼んだのは20頭分だけだったからその分早かったのもあるな。
何にせよこれで当分はベーコンに困らないだろう……タープがつまみ食いしなければ。
という訳で今回は俺がマリアの屋台まで運んでやった。
「ほれ、今回のベーコン」
「ありがとう」
マリアは明日には店を畳んでしまうらしいからな……作るのはこれが最後だろう。
畳んだ後は俺達に同行するみたいだが。
「それとこれ、渡すのを忘れていた報酬……この街でのベーコンの売上金の半分、8500バラン」
忘れてたのかよ……てっきりあの頬へのキスが報酬かと思ってたわ。
それはそれで充分に見合う報酬だったと思うが、思い返してみればあの時は前払いとか言ってたからな。
確かベーコンは昨日までの合計で80頭分は作って、500バランで売ってたらしい……既に34ブロックも売れたのか。
何にせよ今日の宿代と酒代は確保出来た。
「ベーコンはケンタン族には売れないと思うから、次はコンテストの後でカーニズ族に売るつもり」
そこはコンテストの前じゃないんだな……
ケンタン族は領土が燃やされたから買い物所じゃないし、ヴィガン族は野菜狂信者らしいから……まあ買われないだろう。
あ、野菜狂信者に食わせる肉も考えないとな……
魚も色々とあったが日持ちする物はなかったし、鰹節は手に入れたがやはり肉で勝負するべきか。
その方がピットマスターである俺らしいし。
「……ウメオ、何か悩んでる?」
「ん?ああ……ちょっとした厄介事があってな、頭が痛い」
実際マジで頭が痛くなるぞ……知恵熱が出たっておかしくないレベルの難題だ。
「ウメオが頭を抱える厄介事……気になる、教えて」
「いや、これはごく個人的な事だから……」
ってマリアさん?
人前で唐突に抱き付くのは止めて頂けませんかね?
薄いのに柔らかい胸部の感触がダイレクトに腕に伝わってドキドキしてあああーっ!?
「教えてくれないならこのまま、離れない」
止めて、俺の心臓が破裂しちゃうから、マジで止めて!
後、周囲の野郎共の視線が俺を刺し殺す勢いで降り注いでて恐い!
「教えて」
「…………はい」
うん、仮にマリアと結婚……まで行けるとは思えんが、万一で付き合えたとしても絶対勝てないわ。
別に勝つ気はないが。
人に聞かれて困る内容ではない物の嫉妬の視線が痛かったからマリアのテントに移動したぞ。
移動中もずっとくっ付いてて、ジロジロ見られて歩き辛かったが……何故か幸せな気分だった。
「……とまあ、そんな事があった訳だ」
「把握した……このベーコンを見て、別世界の知識で作られたと聞けば納得せざるを得ない」
結局全部話してしまった……別に秘密にしてた訳でもないけど、ベーコンで納得するのはどうなんだ?
この世界じゃ迷い人は珍しくはあっても知られていない訳ではないらしいが、それにしてもなぁ。
「ヴィガン族に肉か魚を食べさせる、それも1人や2人じゃなく大勢……確かに難題、ウメオが悩むのも当たり前」
解ってくれるか。
女神様も何で俺に振ったのやら……確かにこの世界にはない料理を作れるだろうが、俺はその道のプロって訳じゃないぞ。
「聞いた以上は協力する……肉の仕入れなら私に任せて」
「ありがとう……正直相場とか解らんから助かる」
商人のマリアならその辺は信用出来る。
タープは……信頼はしてるんだが何処か抜けてる所があるし、ベーコンが絡むとポンコツになるからな。
ってこれじゃ俺がタープをポンコツにした、って聞こえてしまうじゃないか……
タープは確実に俺に出会う前からポンコツだった……筈だ。
異論はあっても可能な限り聞きたくない。
「タープはすぐに帰ると思って言ってないだろうから教えるけど……この世界、一夫二妻か二夫一妻という制度で異種族婚も許されている、でも同性婚と近親婚は許されていない」
異世界物だとハーレムなんかも定番だった気がするんだが……この世界じゃ2人までなんだな。
まあ考えてみれば結婚したら養う必要があるし、嫁を増やせばその分出費も増える……余程の金持ちでもなきゃ破産しちまうか。
途端に現実を突き付けられた気分だが日本に比べりゃ優しい方ではある。
うん、ますます日本に帰る気持ちが失せて来た。
それと俺は男や可愛い妹と結婚したいとは思っていないからな?
「ウメオは元の世界、帰りたいの?」
「いや、全然、全く、これっぽっちも帰りたいとは思わん」
「……そこまで断言するとは思ってなかった」
「正直、故郷で大事なのは苺心だけだからな……その本人もこの世界に来ている以上未練はない」
心残りがあるとすれば俺をコキ使っていた元上司を殴り足りなかった事と、尊敬するピットマスター(故人)が出版したレシピ本を置いて来てしまった事ぐらいだ。
自由に行き来できるなら調味料や燻製用に茶葉を買いに行きたいとは思うが。
後はまあ、可愛い妹がどうしたいかだな。
「でも、良かった……私はウメオと、長い付き合いを望んでいる」
ベーコンが売れるからだよな、解っているさ。
それでもマリアみたいな美人なら歓迎するしかないじゃないか。
さて、可愛い妹とタープが戻って来た所でそろそろ夕飯を作るか。
昨日が肉まみれだったから今回は魚にする。
料理するのはタダで貰えるイワシと市場で見付けた蛤、そして半身で5バランだったサーモンだ。
一応マリアに魚は平気か聞いてみたが、行商を始めて長いしトウモロコシ以外なら何でも食べられるそうだ。
「って、何でマリアまで食う事になってるんだかなぁ」
「ウメオの料理が、美味しいのが悪い」
何で美味い物を作って責められなきゃならんのだ?
まあいい、とりあえず作るか。
イワシは3枚に下ろして小麦粉を纏わせたらカラッと揚げる、これは塩を振るだけでいいな。
蛤はそのまま炭火で焼いて、貝殻がパカッと開いた所に溶かしバターと醤油を垂らす。
何なら醤油は掛けずにバターだけで食ったって美味い。
そしてサーモン……半身を更に横半分にカットして頭側を使う。
尻尾側は切り身にしてから塩を降っておいて、朝飯の塩焼きにしよう。
鉄板にバターを落として、刻んだベーコンとありったけのキャベツを炒めて、しんなりした所で半身のままなサーモンを包んで、蓋をしてと。
その間に味噌と醤油、オレンジジュース、ガーリックパウダーをいい感じにブレンドして……サーモンに火が通ったらこれで味付けする。
後は調味料が沸騰して香りが出ればちゃんちゃん焼きの出来上がり……野菜がキャベツしかないのはこれしかなかったからだ、許せ。
こいつはちょいと行儀が悪いがサーモンの身と皮を毟り取りながら食うのが美味いんだ。
何より鮭の皮は食べない主義の可愛い妹が居ても残さず食べる為の措置でもある。
美味いんだけどな……鮭の皮。
失敗したな……蛤を食ってたらビールか日本酒が飲みたくなってきた。
だが今あるのはイチゴのワインだけ……これは蛤に合わん。
「このハマ、美味しい……コメ酒にとても合う」
「なぁイチゴ、そんな合うんか?ウチ、お酒を美味い思うた事ないんやけど」
「いや、私まだ未成年だから飲んだ事ないし……」
タープは明日ベーコン抜きにするからいいとしてコメ酒?
コメの酒……日本酒か?
解らん事は聞くに限るな。
「あーマリア、そのコメ酒って何だ?」
「昔、迷い人がカーニズ族にだけ作り方を教えたと言われているお酒……甘いコメから作っているのに、辛口でとても美味しい」
成程、間違いなく日本酒だわ。
カーニズへ行く理由が増えたが……出来れば今すぐ欲しい。
具体的には蛤が無くなる前に飲みたい。
「そういやカーニズ族は肉の他はコメっちゅー野菜を好んで食っとったなぁ……コメは美味いんやけどコメ酒は好かんわ」
タープは下戸なのか子供舌なのか……間違いなく後者だな。
「ウメオも、飲んでみる?」
「是非!」
杯ではなくコップで飲むのか……まあ風情やら何やらはこの際どうでもいいや。
殻に溜まったツユを啜って、酒をグイッと……飲み込んだら蛤を咀嚼して再び酒、これが美味いんだ。
「ふぅ……こりゃ美味い酒だ!」
欠点があるとすれば無限に蛤が食えてしまう所だな。
もっと仕入れておけば良かった。
「やっぱり……ウメオは味が解る人だった」
「これならこっちのイワシにも合う筈だが……イケるな」
「サーモンにも合う……美味しい」
やはり日本酒……もとい、コメ酒は魚に良く合うな。
しかも美人のお酌付き、幾らでも飲める!
「酒ってそんな美味いんかなぁ?」
「さぁ……解んない」
翌朝……俺とマリアは仲良く二日酔いになった。
久しぶりの日本酒だったのもあって飲み過ぎたか?
「……飲み過ぎた、でも後悔はしていない」
「……人は何故、こうなると解っていながら酒を飲むんだろうな?」
「……それは哲学、永遠の謎、解き明かす事の叶わぬ難題」
なお、朝飯は苺心が作ってくれたシカゴピザみたいなアップルパイだった。
二日酔いの胃袋には非常に重たい一撃となり仲良く夕方まで寝込む羽目になったよ。
それはそうとマリアさんや……俺を抱き枕にするのは止めて頂けませんかね?
頭と胃袋が痛む中で心臓がバクバクして眠れないんですが……
いや、嬉しいし振り払う気は一切ないけど。
「ソース味ならマヨネーズ付ければいいんじゃない?お好み焼きみたいに」という、可愛い妹の一言を実践してみたらこれ以上手を入れる余地がない味に仕上がった。
マリアも絶賛していたし、タープなんて昇天しかけたくらいだ。
そういえば尊敬するピットマスターもあのサンドイッチは外側の肉にマヨネーズを塗っていたっけ……まさに盲点だったよ。
問題は肝心のマヨネーズが残り少ないって事なんだが……コンテストまで持つのか?
「というか可愛い妹よ……あれだけ太るのを気にしていた癖に自らカロリーを増やすのか?」
「だってそれ、私が食べる訳じゃないし」
それはそれで酷いが、事実ではあるな……
個人的には食って欲しい所だが、カロリー爆弾であるのは否定出来んので無理強いはすまい。
あれだけ数をこなしたお陰かベーコン作りもスムーズに進んだ。
マリアから頼まれた分に俺が使う分も含めて夕方になる前には全て終わらせられたよ。
まあ今回マリアが頼んだのは20頭分だけだったからその分早かったのもあるな。
何にせよこれで当分はベーコンに困らないだろう……タープがつまみ食いしなければ。
という訳で今回は俺がマリアの屋台まで運んでやった。
「ほれ、今回のベーコン」
「ありがとう」
マリアは明日には店を畳んでしまうらしいからな……作るのはこれが最後だろう。
畳んだ後は俺達に同行するみたいだが。
「それとこれ、渡すのを忘れていた報酬……この街でのベーコンの売上金の半分、8500バラン」
忘れてたのかよ……てっきりあの頬へのキスが報酬かと思ってたわ。
それはそれで充分に見合う報酬だったと思うが、思い返してみればあの時は前払いとか言ってたからな。
確かベーコンは昨日までの合計で80頭分は作って、500バランで売ってたらしい……既に34ブロックも売れたのか。
何にせよ今日の宿代と酒代は確保出来た。
「ベーコンはケンタン族には売れないと思うから、次はコンテストの後でカーニズ族に売るつもり」
そこはコンテストの前じゃないんだな……
ケンタン族は領土が燃やされたから買い物所じゃないし、ヴィガン族は野菜狂信者らしいから……まあ買われないだろう。
あ、野菜狂信者に食わせる肉も考えないとな……
魚も色々とあったが日持ちする物はなかったし、鰹節は手に入れたがやはり肉で勝負するべきか。
その方がピットマスターである俺らしいし。
「……ウメオ、何か悩んでる?」
「ん?ああ……ちょっとした厄介事があってな、頭が痛い」
実際マジで頭が痛くなるぞ……知恵熱が出たっておかしくないレベルの難題だ。
「ウメオが頭を抱える厄介事……気になる、教えて」
「いや、これはごく個人的な事だから……」
ってマリアさん?
人前で唐突に抱き付くのは止めて頂けませんかね?
薄いのに柔らかい胸部の感触がダイレクトに腕に伝わってドキドキしてあああーっ!?
「教えてくれないならこのまま、離れない」
止めて、俺の心臓が破裂しちゃうから、マジで止めて!
後、周囲の野郎共の視線が俺を刺し殺す勢いで降り注いでて恐い!
「教えて」
「…………はい」
うん、仮にマリアと結婚……まで行けるとは思えんが、万一で付き合えたとしても絶対勝てないわ。
別に勝つ気はないが。
人に聞かれて困る内容ではない物の嫉妬の視線が痛かったからマリアのテントに移動したぞ。
移動中もずっとくっ付いてて、ジロジロ見られて歩き辛かったが……何故か幸せな気分だった。
「……とまあ、そんな事があった訳だ」
「把握した……このベーコンを見て、別世界の知識で作られたと聞けば納得せざるを得ない」
結局全部話してしまった……別に秘密にしてた訳でもないけど、ベーコンで納得するのはどうなんだ?
この世界じゃ迷い人は珍しくはあっても知られていない訳ではないらしいが、それにしてもなぁ。
「ヴィガン族に肉か魚を食べさせる、それも1人や2人じゃなく大勢……確かに難題、ウメオが悩むのも当たり前」
解ってくれるか。
女神様も何で俺に振ったのやら……確かにこの世界にはない料理を作れるだろうが、俺はその道のプロって訳じゃないぞ。
「聞いた以上は協力する……肉の仕入れなら私に任せて」
「ありがとう……正直相場とか解らんから助かる」
商人のマリアならその辺は信用出来る。
タープは……信頼はしてるんだが何処か抜けてる所があるし、ベーコンが絡むとポンコツになるからな。
ってこれじゃ俺がタープをポンコツにした、って聞こえてしまうじゃないか……
タープは確実に俺に出会う前からポンコツだった……筈だ。
異論はあっても可能な限り聞きたくない。
「タープはすぐに帰ると思って言ってないだろうから教えるけど……この世界、一夫二妻か二夫一妻という制度で異種族婚も許されている、でも同性婚と近親婚は許されていない」
異世界物だとハーレムなんかも定番だった気がするんだが……この世界じゃ2人までなんだな。
まあ考えてみれば結婚したら養う必要があるし、嫁を増やせばその分出費も増える……余程の金持ちでもなきゃ破産しちまうか。
途端に現実を突き付けられた気分だが日本に比べりゃ優しい方ではある。
うん、ますます日本に帰る気持ちが失せて来た。
それと俺は男や可愛い妹と結婚したいとは思っていないからな?
「ウメオは元の世界、帰りたいの?」
「いや、全然、全く、これっぽっちも帰りたいとは思わん」
「……そこまで断言するとは思ってなかった」
「正直、故郷で大事なのは苺心だけだからな……その本人もこの世界に来ている以上未練はない」
心残りがあるとすれば俺をコキ使っていた元上司を殴り足りなかった事と、尊敬するピットマスター(故人)が出版したレシピ本を置いて来てしまった事ぐらいだ。
自由に行き来できるなら調味料や燻製用に茶葉を買いに行きたいとは思うが。
後はまあ、可愛い妹がどうしたいかだな。
「でも、良かった……私はウメオと、長い付き合いを望んでいる」
ベーコンが売れるからだよな、解っているさ。
それでもマリアみたいな美人なら歓迎するしかないじゃないか。
さて、可愛い妹とタープが戻って来た所でそろそろ夕飯を作るか。
昨日が肉まみれだったから今回は魚にする。
料理するのはタダで貰えるイワシと市場で見付けた蛤、そして半身で5バランだったサーモンだ。
一応マリアに魚は平気か聞いてみたが、行商を始めて長いしトウモロコシ以外なら何でも食べられるそうだ。
「って、何でマリアまで食う事になってるんだかなぁ」
「ウメオの料理が、美味しいのが悪い」
何で美味い物を作って責められなきゃならんのだ?
まあいい、とりあえず作るか。
イワシは3枚に下ろして小麦粉を纏わせたらカラッと揚げる、これは塩を振るだけでいいな。
蛤はそのまま炭火で焼いて、貝殻がパカッと開いた所に溶かしバターと醤油を垂らす。
何なら醤油は掛けずにバターだけで食ったって美味い。
そしてサーモン……半身を更に横半分にカットして頭側を使う。
尻尾側は切り身にしてから塩を降っておいて、朝飯の塩焼きにしよう。
鉄板にバターを落として、刻んだベーコンとありったけのキャベツを炒めて、しんなりした所で半身のままなサーモンを包んで、蓋をしてと。
その間に味噌と醤油、オレンジジュース、ガーリックパウダーをいい感じにブレンドして……サーモンに火が通ったらこれで味付けする。
後は調味料が沸騰して香りが出ればちゃんちゃん焼きの出来上がり……野菜がキャベツしかないのはこれしかなかったからだ、許せ。
こいつはちょいと行儀が悪いがサーモンの身と皮を毟り取りながら食うのが美味いんだ。
何より鮭の皮は食べない主義の可愛い妹が居ても残さず食べる為の措置でもある。
美味いんだけどな……鮭の皮。
失敗したな……蛤を食ってたらビールか日本酒が飲みたくなってきた。
だが今あるのはイチゴのワインだけ……これは蛤に合わん。
「このハマ、美味しい……コメ酒にとても合う」
「なぁイチゴ、そんな合うんか?ウチ、お酒を美味い思うた事ないんやけど」
「いや、私まだ未成年だから飲んだ事ないし……」
タープは明日ベーコン抜きにするからいいとしてコメ酒?
コメの酒……日本酒か?
解らん事は聞くに限るな。
「あーマリア、そのコメ酒って何だ?」
「昔、迷い人がカーニズ族にだけ作り方を教えたと言われているお酒……甘いコメから作っているのに、辛口でとても美味しい」
成程、間違いなく日本酒だわ。
カーニズへ行く理由が増えたが……出来れば今すぐ欲しい。
具体的には蛤が無くなる前に飲みたい。
「そういやカーニズ族は肉の他はコメっちゅー野菜を好んで食っとったなぁ……コメは美味いんやけどコメ酒は好かんわ」
タープは下戸なのか子供舌なのか……間違いなく後者だな。
「ウメオも、飲んでみる?」
「是非!」
杯ではなくコップで飲むのか……まあ風情やら何やらはこの際どうでもいいや。
殻に溜まったツユを啜って、酒をグイッと……飲み込んだら蛤を咀嚼して再び酒、これが美味いんだ。
「ふぅ……こりゃ美味い酒だ!」
欠点があるとすれば無限に蛤が食えてしまう所だな。
もっと仕入れておけば良かった。
「やっぱり……ウメオは味が解る人だった」
「これならこっちのイワシにも合う筈だが……イケるな」
「サーモンにも合う……美味しい」
やはり日本酒……もとい、コメ酒は魚に良く合うな。
しかも美人のお酌付き、幾らでも飲める!
「酒ってそんな美味いんかなぁ?」
「さぁ……解んない」
翌朝……俺とマリアは仲良く二日酔いになった。
久しぶりの日本酒だったのもあって飲み過ぎたか?
「……飲み過ぎた、でも後悔はしていない」
「……人は何故、こうなると解っていながら酒を飲むんだろうな?」
「……それは哲学、永遠の謎、解き明かす事の叶わぬ難題」
なお、朝飯は苺心が作ってくれたシカゴピザみたいなアップルパイだった。
二日酔いの胃袋には非常に重たい一撃となり仲良く夕方まで寝込む羽目になったよ。
それはそうとマリアさんや……俺を抱き枕にするのは止めて頂けませんかね?
頭と胃袋が痛む中で心臓がバクバクして眠れないんですが……
いや、嬉しいし振り払う気は一切ないけど。
0
あなたにおすすめの小説
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる