エルフの森をキャンプ地とする!

ウサクマ

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(野菜狂信者に肉を)おみまいするぞー

恩師の昔話・遺言添え

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野菜狂信者共を退けてからもひたすらワニを解体して、以前イノブタを焼くのに使った様なコンロ4つに火を入れつつ準備を進めている。

というかこのコンロってまさか……

「そいつはダニエルが最後に設計したあのコンロを再現した物だ、こいつなら一度に4匹のアリゲーターを焼けるぜ」

そういやあのコンロの設計図はジョニーさんが持ってたんだっけな……しかし4つも作るとは。

まあワニもデカいしこれぐらいは必要だよな。

「……時間だな、焼くぞボーイ」

「おう!」

溜め池から出したワニは水気を拭き取ってスタッフィングを詰めて、料理用の糸で縛ったら塩コショウ、それに醤油とバーボンにコーン油を霧吹きでふりかけて……よし。

「最初の1時間はこのまま焼き続け、30分に一度様子を見ながら酒と油を霧吹きで湿らせてやれ……まあ完成までは4時間って所だな」

やっぱり丸焼きだと時間が掛かるな……

美味い物を食う為だから苦ではないにしろ待つ時間はソワソワする。

ってこれ、バーボンか?

「焦るなよボーイ、美味い肉を焼きながら酒を飲んで待つのがいい人生の楽しみ方って奴だ」

「それ、ダニエルさんの口癖じゃねぇか」

「だが、この世の心理だ」

お、美味いなこのバーボン……酒精が強いけどトウモロコシの甘味が出てて飲みやすい。




「……実はな、俺がこの世界に来たのはこれが2度目なんだ」

え……?

「1度目はこの世界の時間でおよそ800年前、そこから3年はお隣の領土で世話になっていてな……俺以外のあのピットメンバー全員がそうだったが何人かはそこで結婚もした」

ロリババアに会った時に言ってたあの時の、ってそういう事だったのか。

道理でジョニーさん以外の全員に結婚願望がなさ過ぎると思った。

そういや牧場長はイタリア人で、可愛い妹にマナーを教えていたのはブラジル人……他のメンバーも国籍はバラバラだったっけ。

バーベキュー好きが総じて集まったとか聞いたがこの世界で出会っていたのか。

「当時のベジマニア共は今より更に話が通じなくてな……元の世界に戻る事になった原因はお隣がベジマニア共との抗争に負け、村を焼かない代わりにあらゆる肉や魚を焼いては食っていた俺達を追放しろと言ってきたからだ」

それで戻って来て俺はダニエルさんに出会えた、って訳か。

「元の世界で俺達が再会を果たしたのはジャパン……ボーイがダニエルに出会う1年ぐらい前だったな」

そんな最近だったのかよ……

その割には全員日本語が上手かった様な?

「元々全員がソイソースから興味を持ったジャパン贔屓だったから本場のソイソースを味わう為に覚えたのさ、まあこの世界の言語も日本語だったし覚えて正解だった……文字は読めんがな」

スゲェな醤油!

うん、これからも重宝しよう。

そしてジョニーさんもこの世界の文字は読めないのか……何か安心してしまった。

「それに再会できたのはダニエルがカリスマピットマスターとして名声を得ていたからだ」

ダニエルさんは月に何本かの動画を投稿して、レシピ本を出すぐらいだからアメリカでは有名だったんだろう、ぐらいには思ってたが……予想以上だったわ。

ってバーボンの追加と……手紙?

「そいつはダニエル以外のピットメンバーがこの世界でボーイに宛てた遺言だ、レシピと一緒に渡そうと思っていたがこれだけは先に渡しておく」

「遺言……って他の皆もこの世界に来てたのか!?」

「ああ、転移した時間はバラバラで痕跡を辿るのには苦労したが……間違いなく全員が来ていた」

そんな……そんな事があるのかよ。

まだ話したい事や聞きたい事が山ほどあったってのに。

「ストロベリーには秘密にしておけよ、遺言はボーイの分しかないし……事実を知るにはまだ若い」

「ああ……解った」




遺言という割にはやけに薄いと思いきや寄せ書き風になっているのは気になるが……この世界の文字ではなく英語だから何とか読めるな。

勉強は嫌いな俺だが英語とバーベキューだけは真面目に習っておいて良かった。

【この手紙は後にこの世界に来るであろうウメオ・スズイという男に託す、そして我等のやり残した事を引き継いで貰いたい】

このクッソ汚い字は間違いなく牧場長だな……

実際に来たけど、何で俺もこの世界に来ると思ったんだ?

【我等はカーニズと呼ばれる地でラムの畜産を安定化させる事に成功したが、ラムの肉の美味さを教える事は出来なかった……原因は解っている、必要なスパイスと調味料、ハーブが足りなかったからだ】

ああ、ラムにしろマトンにしろマスタードかローズマリーがないと呆けた味になっちまうからな……

特にローズマリーは絶対に欠かせない。

【だからこそウメオがこの世界に来た時にそれらが手に入ると信じ、この悲願を託す】

まあ、手に入れようと思えば可能だし……トゥール様が言う女神のお茶会とやらが終わり次第着手しよう。

次は可愛い妹にマナーを教えていたブラジル人のティーチャーか。

……今更だがダニエルさんとジョニーさん以外の本名を聞いた事なかったな。

【俺達のやり残した事は牧場長が語ってくれていた、だから俺はアドバイスだけを書き残す】

アドバイスか……それは有難い。

【角が燃えている鹿と空を走る豚を食ったらどちらかのほんの一部でいい、皮でも角でも身に付けていればナイフの切れ味が上がるぜ】

すまん、もう知ってる。

って一部を身に付けてって……そういや今着てる上着はその鹿の皮を加工した奴だったな。

完全に偶然が重なったお陰だが、あの場でタープに出会えたのは幸運だった。

次は何よりもエビが好きだったクラッシュか。

【俺もティーチャーと同じくアドバイスだけを残しておこう、銀色のクラブを焼いたら甲羅を残しておけよ、どういう理屈かは知らんがその甲羅を使ってシーバスを料理するとコンロが汚れなくなるからな】

シーバス……まさか水の魔物ってスズキの事だったのか!?

まあ海水だろうが淡水だろうが平気で生きる上に凶暴な魚だからな……ある意味納得だ。

甲羅は確か記念にと思って幾つか貰って1つはキャリの部屋に飾って、残りは車の荷台に積んであったな……

ちゃんと腐らない様に処理はしたぞ。

【なお、この世界のシーバスは弾丸の様に勢いよく飛んで向かってくるから注意しろよ】

どこのサメ映画だよ!

まあ出方が解れば対処の仕様はあるだろ。

っと、最後は誰よりも酒を愛したスコッチだな。

【もしウメオがこの遺言を見たならば、海辺の町に居るであろう我が孫シェラフを訪ねてやってくれ……きっと良い友人になれるだろう】

シェラフの爺さんはあんただったのかよ!?

あんたの孫、ゲイになってるぞ!

だがまあ無理矢理迫る様な事はないし、付き合いは続けるよ。

突き合いをする気は一切ないけどな。

ってまた牧場長の字に戻ってる……

【最後にウメオ、いや我等の息子マイ・サンよ……日本に帰るにしろこの世界に留まるにしろ、1つだけ約束して欲しい
この先何があろうと、相手が何であろうと、バーベキューを心から楽しんでくれ……それが人生を楽しむという事だ】

……ったく、最後の最後まで俺を子供扱いしやがって。

こんな、こんな不出来な俺を息子と言ってくれてありがとな。

あの世でまた会おうぜ、俺の親父達マイ・ダディ
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