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第十三話 隣町
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いつの間に寝てしまっていたのか、まだ少し重たい瞼を開けたり閉じたりしながら、徐々に自分の体があたたかさに包まれていることに気付いた。
「……!」
「ん? 起きたか」
顔のすぐそばから声が聞こえ、おでこに吐息がかかる。
「ぁ…………あのっ…………」
意識がはっきりすると、途端に鼓動が騒がしくなった。はっきりとはわからないが、おそらく私の体は椅子に対して横向きに座っており、ベンの股の間に腰掛けているような形だ。そして上半身はベンの両腕に包まれ、密着している。いつどうやってこの体勢になったのか、いつから寝てしまっていたのか、全く記憶にない。
「もうすぐカシュワーニュに着くぞ」
「……えっ!」
カシュワーニュは私の実家――グレイン伯爵家のあるスイーチュリーの隣町だ。もうこんなところまで帰ってきていたとは驚きだ。とっくにお昼は回っているのだろう。つまり……
(ベン様はずっと、私が寝やすいように体を支えてくださっていたということ……!?)
「あのっ……申し訳ございません! このような醜態をさらしてしまい……」
「ん? 馬車で寝ることの何が悪い。自由だろ」
「その……ずっと支えていただいてしまって……」
「俺が好きでこうしたんだ。ソフィアはなんも悪くねぇだろ」
「……ですが……」
「意外だな。怒らねぇのか」
「へっ?」
「勝手に抱きかかえてんだぜ? すんなり受け入れたってことはだ、よっぽど気持ちよく眠れたか、あるいは俺に心を許し始めたってとこか」
「っ……!?」
「へぇ、図星か」
「ち、違いますわ!」
はははは、と楽しそうにベンが笑うと、その体の揺れが上半身に伝わってきた。なんだかとても恥ずかしい。
「もう大丈夫ですので、椅子に座り直しますわ」
ベンから離れようと体を動かそうとするも、ぎゅっと抱きしめられ阻止された。
「ぁっ……」
「もうすぐ馬車が止まる。すぐ降りんだからこのままでいいだろ」
「えっ……でも……」
「こうして抱きしめていたいんだが、ダメか?」
「っ……!?」
(どうしてそのようなお声で言うの……!? そして近い! 顔が近すぎるわ!!)
「……ダメでは…………ございませんわ……」
「そうか」
ちゅっ
「……!?」
頭に口づけされ、反射的に顔を上げる。どうして突然キスをするのかと訴えるつもりで顔を向けたのに、
ちゅう――――――
「!!!!」
今度は唇に口づけされ……
「――――――――――」
(……な、長い……!!)
昨日と今日で何度か唇にキスされたが、どれもついばむような短いキスだったから、一昨日のあの夜のように呼吸に戸惑うことはなかった。しかし今は、やさしく重なっているだけではあるものの、時間が長く感じられ頭が混乱しつつある。動揺や戸惑いとともに、一昨日の熱い熱い口づけが思い起こされ、胸がきゅーっと締め付けられる。
(こ……このまま、あの夜のように……熱いキスをされたら…………私はどうなってしまうのかしら…………っ)
しかしそれは取り越し苦労だったようで、ゆっくりとベンの顔が離れた。相変わらず目を見ることができず、視線を下に向けてしまう。
「はぁ……ダメだこりゃ」
「……?」
「このまま食いたくなっちまう」
「…………」
ぐりゅりゅるるぅ~~~~
「!!」
盛大なお腹の音が私のお腹から放たれ、同時に大きなはじらいが体を赤く染めていく。
「っ……申し訳ございません!」
「はっはっはっは! そういう意味で言ったんじゃねぇが、食いもんを連想させちまったんだな」
「……?」
意味を理解できずに首を傾げたところで馬車が止まった。
「おっ、着いたか。ここで腹ごしらえしてくぞ」
「あっ……はい」
私は馬車を降り、ベンに手を引かれながら市場へと向かった。
「……!」
「ん? 起きたか」
顔のすぐそばから声が聞こえ、おでこに吐息がかかる。
「ぁ…………あのっ…………」
意識がはっきりすると、途端に鼓動が騒がしくなった。はっきりとはわからないが、おそらく私の体は椅子に対して横向きに座っており、ベンの股の間に腰掛けているような形だ。そして上半身はベンの両腕に包まれ、密着している。いつどうやってこの体勢になったのか、いつから寝てしまっていたのか、全く記憶にない。
「もうすぐカシュワーニュに着くぞ」
「……えっ!」
カシュワーニュは私の実家――グレイン伯爵家のあるスイーチュリーの隣町だ。もうこんなところまで帰ってきていたとは驚きだ。とっくにお昼は回っているのだろう。つまり……
(ベン様はずっと、私が寝やすいように体を支えてくださっていたということ……!?)
「あのっ……申し訳ございません! このような醜態をさらしてしまい……」
「ん? 馬車で寝ることの何が悪い。自由だろ」
「その……ずっと支えていただいてしまって……」
「俺が好きでこうしたんだ。ソフィアはなんも悪くねぇだろ」
「……ですが……」
「意外だな。怒らねぇのか」
「へっ?」
「勝手に抱きかかえてんだぜ? すんなり受け入れたってことはだ、よっぽど気持ちよく眠れたか、あるいは俺に心を許し始めたってとこか」
「っ……!?」
「へぇ、図星か」
「ち、違いますわ!」
はははは、と楽しそうにベンが笑うと、その体の揺れが上半身に伝わってきた。なんだかとても恥ずかしい。
「もう大丈夫ですので、椅子に座り直しますわ」
ベンから離れようと体を動かそうとするも、ぎゅっと抱きしめられ阻止された。
「ぁっ……」
「もうすぐ馬車が止まる。すぐ降りんだからこのままでいいだろ」
「えっ……でも……」
「こうして抱きしめていたいんだが、ダメか?」
「っ……!?」
(どうしてそのようなお声で言うの……!? そして近い! 顔が近すぎるわ!!)
「……ダメでは…………ございませんわ……」
「そうか」
ちゅっ
「……!?」
頭に口づけされ、反射的に顔を上げる。どうして突然キスをするのかと訴えるつもりで顔を向けたのに、
ちゅう――――――
「!!!!」
今度は唇に口づけされ……
「――――――――――」
(……な、長い……!!)
昨日と今日で何度か唇にキスされたが、どれもついばむような短いキスだったから、一昨日のあの夜のように呼吸に戸惑うことはなかった。しかし今は、やさしく重なっているだけではあるものの、時間が長く感じられ頭が混乱しつつある。動揺や戸惑いとともに、一昨日の熱い熱い口づけが思い起こされ、胸がきゅーっと締め付けられる。
(こ……このまま、あの夜のように……熱いキスをされたら…………私はどうなってしまうのかしら…………っ)
しかしそれは取り越し苦労だったようで、ゆっくりとベンの顔が離れた。相変わらず目を見ることができず、視線を下に向けてしまう。
「はぁ……ダメだこりゃ」
「……?」
「このまま食いたくなっちまう」
「…………」
ぐりゅりゅるるぅ~~~~
「!!」
盛大なお腹の音が私のお腹から放たれ、同時に大きなはじらいが体を赤く染めていく。
「っ……申し訳ございません!」
「はっはっはっは! そういう意味で言ったんじゃねぇが、食いもんを連想させちまったんだな」
「……?」
意味を理解できずに首を傾げたところで馬車が止まった。
「おっ、着いたか。ここで腹ごしらえしてくぞ」
「あっ……はい」
私は馬車を降り、ベンに手を引かれながら市場へと向かった。
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