最低な出会いから濃密な愛を知る

あん蜜

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第二十九話 進展

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 ベンに見つかってしまい、何を思ったのか、逃げられるはずもないのに気づけば踵を返し階段を駆け下りていた。

「おい!?」

 階段の踊り場で腕を掴まれそのまま後ろから抱きしめられる。

「おっと……ソフィア……なんで逃げんだよ……!」

「っ……すみませんっ……盗み聞きするつもりはなかったのです……!」

「わかってる。起きてたんだな……俺が中々戻って来ねぇから心配になって探してくれたんだろ……悪かった……」

 私を抱きしめるベンの腕が強まる。

「ぁ……っ」

「どこにも行くな」

「……えっ?」

 首筋に柔らかい感触が伝わる。

「ん……っ!」

 後ろから口づけされているのだとわかり、顔が一気に熱を上げる。

(こ、こんなところで……っ! お父様もお母様もこの時間にここへいらっしゃることはないでしょうけれど……っ)

する――

「あっ……!」

 羽織っていたケープがするっと取られると、くるりと体の向きが変えられ正面から抱きしめられた。

ぎゅぅぅ

「ぁ…………っ……」

 ベンの手が首の後ろに触れ、あたたかさが伝わってくる。

ちゅ――――

「っ!!」

(え えっ……!?)

 唇と唇が触れ合い、ますます鼓動が騒がしくなる。

「っはぁ……ベン様っ……だ、誰か来るかもしれませんのでンっ――」

 聞き入れてもらえることなく、何度もキスが交わされる。それでも、舌が口の中に入ってくることはないため、配慮してもらえているのだと感じた矢先、ベンの指が耳に触れた。

「んぁぁ……」

 吐息が漏れ出、口が開くや否や舌が口の中に入ってきた。

「~~~~っ!?」

 ゆっくりと、舌が動かされていく。

(うそうそ……だ、だめ……っ!!)

ね、ちゅ――――ぅ、にゅ、る――――ぅ

「~~~~……~~~~……っ」

 背中に触れられている手がすー……っと動き始めた途端、一気に焦燥感に駆られた。

「はぁっ ベン様っ………………やぁ…………っ」

 このまま続けないでほしいということを訴えようとしたのに、なぜか”やぁ”としか言えず、なんだかいやらしい言い方になったような気がして羞恥心が湧き立つ。

「……悪ぃ……」

 ベンはどこか切ない声色でそう言った後、優しく私を抱きしめた。

「ソフィアが俺の元を離れねぇか、不安なんだよ……」

「…………?」

「ソフィアが俺に対してどんな感情を抱いてんのか、わかってるつもりだ。全身から溢れ出てるからな」

「っ……!」

「けどよ、言葉で言われたことはねぇ……。要はだ、ソフィアの心ん中にわずかでも迷いがあるっつーことだろ? 婚約を解消する可能性がゼロじゃねぇ限り、どれだけ惚れさせる自信があろうと不安になることもあんだ……」

「っ……!!」

 はぁ……、と熱いベンの吐息が耳にかかる。

「わ……私は…………ベン様との婚約を、解消するつもりはございませんわ……っ」

「…………今なんつった――」

「好き……ですので……」

 半ばベンの言葉を遮るように、中々言えずにいた気持ちがすっと出た。
 ベンは抱きしめる腕を緩め、私の目をじっと見つめた。

「私は……っ! ベン様に恋をしています」

 ベンの瞼がパチパチ、と瞬きをした。

「そして……初めての恋で……最後の恋でもございます……っ」

 ベンへの気持ちを自覚してから言いたくても言えずにいた言葉の数々を、やっと伝えることができた。心臓がバクバクしているのはもちろんのこと、体温も上昇しているのがわかる。

 ベンの手が私の頬に触れる。

「今、最後の恋……つったか?」

 私はゴクリと唾を飲み、しっかりと頷いた。
 ベンのもう片方の手も、私の頬に触れる。

「ソフィアが今口にした言葉が何を意味するか、わかってんだよな……?」

「……はい……」

 真っすぐにベンの目を見ながら返事をすると、ベンの顔が近づきおでこに優しく口づけられた。そのまま目の隣、頬、顎、と顔全体に口づけられていく。

 優しい眼差しと目が合う。それだけで胸が激しく高鳴る。

「ソフィア、俺と結婚してくれ」

「…………はい……っ!!」

ちゅ――――――――う

「~~~~っ!!」

ちゅぅ――んちゅぅ――――むちゅぅ――――

「~~っ……んっー―――……~~~~……はぁぁんっ――――」

 口の中がベンの体温と混ざり合い、熱い愛でいっぱいになる。
 ベンの手が背中を這うように動かされていく。

「~~~~っ!!」

 その手は脇腹へと移動し、ゆっくりと上下に撫でられていく。

「~~~~っあぁ……! はぁぁ……べんさまっ……ここではンっ――――」

にゅ、ちゅぅ―――――ー

「~~~~~~っ」

 ねっとりとしたキスに全身が疼くような感覚になる。

「はぁ……はぁ……はぁ……ベンさま……っ」

「わかってる。ここではキスしかしねぇ。ここではな」

 ベンに抱きかかえられた状態で部屋へと戻る。

 ベッドに降ろされると、すぐにベンが覆い被さった。唇が重なる。

ぬちゅぅ――ちゅぴ――――んちゅ――――――ぅ

「っ――……はぁンっ――……~~~~っ」

 ねっとりとした口づけを交わしながら、ベンは私の脇腹やお腹に手を這わせていく。

(ひゃぁぁ……っ)

 やさしく舌を吸われた後、ベンの顔が遠ざかったと思ったらすぐに太ももにあたたかい手の感触が伝わってきた。

「ぁっ……!」

 当たり前のように裾が捲られ素肌が撫でられていく。内ももに触れられた手が沿うように上下に動かされ、一気にぞくぞく感と緊張感が押し寄せる。

「ぁっ……っ……~~……~~っ」

 少々はっきりと声が漏れ出てしまったところで、屋敷内にいる家族たちに聞こえるはずないのだが、実家でこのようなことをしているという恥ずかしさから懸命に声を抑える。
 ところが……

カリカリッ

「んあぁっ!!」

 盛大に声が漏れる。
 太ももの付け根――陰部のすぐそばに指が触れ、カリカリとこすられたのだ。

カリカリ、カリカリ――

「ぁっ ぇっ っ……まっ……~~~~」

 指が動かされる度、ビクンビクンと体が反応していく。信じられない場所を触られていることに気を留めている余裕はなく、その繊細で強い感触に太ももを閉じようとしても阻まれ、腰や腕を動かさずにはいられない。

「んぅ……はぁぁ……も、もぅ……ベンさま……っはぁ……はぁ」

 ベンの指が離れ、横になった状態でぎゅっと抱きしめられる。

「はぁぁ…………はぁぁ…………」

「……こわかったか?」

 頭をやさしく撫でられる。
 私が首を横に振ると、ベンは私のおでこにキスをしとろんとした目で微笑んだ。

「明日が待ち遠しくてしょうがねぇや」

「…………?」

 すぐにはなんのことかがわからず、明日の予定を頭の中で巡らせるも、結局わからなかった。ベンが目を閉じ、聞き返す雰囲気ではなかったため私も目を閉じた。



 翌朝、姉と挨拶を交わした後、私たちは馬車に乗り込み帰路についた。
 ガタガタと揺られながら、この時の私は、刺激が強すぎる夜がすぐ目の前に迫っていることを知らなかった。
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