銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第19話:ノヴァルナ包囲網

#12

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 ノアの強い言い方に、ザリュードとバジラードは怪訝そうな眼を向ける。

「勝負はまだ、終わっていないだと?」とザリュード。

「他に誰かが、俺達と闘うとでも言うのか?」とバジラード。

「私が戦います」

 ノアの言葉に、一瞬唖然としたモルンゴール星人の兄弟は、直後に大爆笑を始めた。対照的に言葉を失う『ジュエルダガー』号クルーの三名。女性『ホロウシュ』達は困惑顔になり、アンドロイドP1-0号は、解析不能のデータでも与えられたかのように、黄緑色のセンサーアイを激しく明滅。テン=カイは、顔が見えない黒いホログラムスクリーンごと、頭を左右に振る。
 そして、ノアを一番よく知るカレンガミノ姉妹は、“あー、また始まったわ…”と言いたげな眼で、互いを見合った。

 その間に爆笑を収めたバジラードとザリュードは、残る笑いを言葉に交え、ノアにずけずけと言う。

「ムハッハッハッ! あんたが戦うだって?」

「俺は気に入ったとは言ったが、モルンゴール人の真似をしろとは言ってないぞ」

 兄弟はノアが格闘技で闘う、と言っていると思ったようである。身体能力的にヒト種がモルンゴール星人と闘って勝てるはずはなく、ただの戯言に聞こえても当然の話だ。そんな二人にノアは背筋を伸ばし、どこか挑戦的に告げる。

「何か勘違いをなさっているのではないですか? 私が所望しているのは、BSIユニットによる模擬戦です。外にあるアレは使えるのでしょう?」

 ざわめきだすノアの仲間達。ザリュードは真顔に戻って問い質す。

「あんた乗れるのか? 本気で言ってるのか?」

「無論です」

 即答するノア。しかしそこに、バジラードが口を挟んで来る。

「兄貴、もうそろそろ時間だぞ。駅に戻った方が…」

 ザリュードは「む。そうか」と頷き、ノアに言い放つ。

「お遊びの時間は終わりだ。どうせ俺達には勝てんさ。おとなしくそこの警官に、逮捕されときな」

「逃げるのですか!?」

 強い口調のノアの言葉に、不快そうな息を大きく吐いたザリュードは、大股で歩み寄ると、上から見下ろして恫喝した。

「なんだと?…デカい口を叩くのも、いい加減にしろ。女!」

 だが夫のノヴァルナや、亡き父“マムシのドゥ・ザン”の手を焼かせるほどの、女丈夫のノアである。小形恐竜のようなモルンゴール星人に、頭上から睨みつけられても、真正面からそれを睨み返し、怯む事は無い。

 キッ!…と、睨み合うノアとザリュード。するとその時、老いた女性の声のモルンゴール語が、呼び掛けて来る。

「その勝負、受けておやり!!」
 
 突然聞こえて来た声に全員の耳目が集まる。振り向いた視線の先にいたのは、モルンゴール星人の老女であった。淡いオレンジの色の肌をし、ボディスーツ式の身体機能サポートスーツを、やや前屈みになった体に装着している。その姿を見て、ザリュードとバジラードは声を揃えて呼び掛けた。

「婆ちゃん!?」

 少し驚いた様子の兄弟は、ザリュードの方がさらに問う。

「どうしてここへ? それにまだ書庫にいたんじゃないの?」

 兄弟の老女に対する言葉遣いに、ノアは眉をひそめた。ヒト族の自分達の眼からは、モルンゴール星人の年齢は見た目からは分かりづらい。年老いて来てから、体色が茶色がオレンジ、さらに白へと変化していくぐらいであり、この兄弟は実は若いんじゃないだろうか、と思う。

 モルンゴール星人の老女は、兄弟をジロリと見渡して言い放った。

「あんたらが早く着いたって連絡したから、切り上げて出て来たんじゃないか。だけど駅に降りても姿が見当たらないんで、駅員に訊いたのさ。そしたら皇国の連中を連れたモルンゴール人と、揉め事を起こして警察基地に行ったって言われて、追いかけて来たんだよ」

「お、俺達が揉め事を起こしたわけじゃないよ。あの“敗北者”の三等民が、駅員に絡んでたから―――」

 バジラードがそう言いかけたのを、モルンゴールの老女は「だまらっしゃい!」と、大声でで叱りつける。思わず肩をすくめる兄弟。

「駅員から聞いた話じゃ、騒ぎを大きくしたのはあんたらの方だろ。三等民だかなんだか知らないが、民間人相手に戦って勝ったって、何の自慢にもならないよ!!」

「だ、だからって、このヒト族の女とBSHOで戦っても―――」

 今度はザリュードが言い返そうとするが、老女はそれを遮ってノアに問い質す。

「あんた。BSIで勝負って事は、あたしらの世界で言うところの、戦士階級の女なのかい?」

「『ム・シャー』の事を仰っているのでしたら、その通りです」

 頷きながら応じるノア。問いを重ねるモルンゴールの老女。

「パイロットとして、自信があるから、勝負を挑んだんだね?」

「はい」

 きっぱりと返答するノアに、モルンゴールの老女は相好を崩し、「いいね。気に入ったよ、あんた!」と告げた。

「あたしゃ、ブランム・ハーナ=ベファル。この二人の祖母さね」

 自己紹介をする老女に、ノアはどうするか一瞬迷ったが、ライザ・メージェル=ウィーヴァーの偽名ではなく、本名を名乗る。

「ノア・ケイティ=ウォーダと申します」




▶#13につづく
 
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