銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第3話:スノン・マーダーの一夜城

#06

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「カァアアアアア!!!!」

 男は人間のものとは思えない乾いた叫び声を放つと、ホーリオに襲い掛かる。間髪入れずライフルのトリガーを引くホーリオ。モードは麻痺にセットしてある。黄色いビームが銃口からほとばしり、細かな稲妻となって男の前進に絡みついた。だが男は、麻痺ビームを全く受け付けない。陸戦隊員としての体術の心得もあるホーリオは、襲い掛かった男を“背負い投げ”で投げ飛ばした。男は向こう側の壁に、背中から叩きつけられる。

 するとその時だった。通路キノッサ達のいる通路の前後から、四つん這いになった男達がさらに二十人ほど、ひとまとめになって現れた。

「き、気を付けろ!」

 ハートスティンガーが警告を発する。次々に跳躍し、異形の男達は襲い始めた。素手で、ライフルの銃把で、脚で、ハートスティンガー達は、襲って来る男達に応戦する。だが異形の男達は素早く、タフだった。人間は四つん這いでは動きが鈍るはずだが、異形の男達は常人以上の動きを見せる。瞬く間にハートスティンガーの部下が二人、複数の異形の男達に捕まって、通路の奥に連れ去られてしまった。

「うっ、うわぁあああああ………」
「助けてくれぇええええ………」

「ライフルを殺傷モードにしろ!!」

 事ここに至ってはやむなし、とハートスティンガーは部下に命じた。普段は寡黙なホーリオが、指示を追加する。

「同士討ちに注意して発砲!」

 それらの言葉にハートスティンガー達は瞬時にセレクトレバーを操作し、ブラスターライフル本来の機能の“殺傷”モードへ切り替えた。まるで四本足の肉食獣のような機敏な動きを見せる異形の男達に、灼熱のビームを浴びせる。
 しかし反撃に移ったものの、異形の男達の素早さに対応するのは困難であった。殺傷能力のあるビームを受けてもなお、一発、二発程度では、異形の男達は行動を停止しなかったのだ。激しい戦闘を経た結果、四人の異形の男を仕留めはしたが、異形の男達はハートスティンガーはさらに二人の部下を捕らえ、撤収する際に連れ去ったのである。

 残ったのはキノッサにカズージとホーリオ。そしてハートスティンガーとその部下が三人と、アンドロイドのP1‐0号だけとなってしまった。

「大丈夫なのかい? あんた達」

 通信機から問い掛けて来たのはモルタナだ。彼女は『ブラックフラグ』号に残って、キノッサ達をサポートしていたのだった。
 
 モルタナの問いに、キノッサは重い口を開いて報告する。

「背中に大きな虫みたいなのを張り付けた、奇妙な男達に襲われて、半分ほどの人数が連れ去られてしまったッス…」

「む、虫!?…そ、そうかい。一度船に戻るかい?」

「いえ。少し考えさせて欲しいッス」

 そう言ってキノッサは、モルタナとの通信を終えた。いま『ブラックフラグ』号へ戻ってしまうと、立て直しに大幅な時間が掛かるように思えたのだ。データパッドの表示情報を素早く探り、何か使えるものが周囲にないかを調べる。すると二十メートルほど先に、医務室があるのを発見した。

「ここをもう少し行った所に、医務室があるッス。一旦そこへ向かいましょう」

「賛成だ。今のまま中央指令室へ行くのは、向こう見ず過ぎるってもんだからな」

 キノッサの言葉に頷くハートスティンガー。そこへP1‐0号が、襲って来た男達の中の一人を指差して提案する。

「医務室なら丁度いい。この襲撃者を一人、運んで行こう。何がどうなっているのか、手掛かりを得られるかも知れない」

「けんどもこのステーションば今、ペグ・マザンのみで稼働してて、ジャハスンのアソネン・リグは使えないのでバ?」

 バイシャー語を交えて、非常用電源のみが稼働している状態の今は、医療室の機械が使えないのではないかと、懸念を口にするカズージ。自分達がまず中央指令室へ向かおうとしたのも、このステーションのメイン対消滅反応炉を起動し、主電源を回復させるためであったからだ。だがP1‐0号には別の見解があった。

「それはおそらく大丈夫だと思う。医務室などの、緊急性を要する事態が発生する可能性がある施設は、独立した別個の非常用電源が確保されていて、それを起動すれば、ほぼ全ての機器を使用できるはずだよ」

「なっほどだバ」

 納得顔で応じるカズージに頷いたキノッサは、ハートスティンガーに向き直り、襲撃して来た異形の男の遺体を一人、部下に運ばせるよう指示する。そして先頭をホーリオ。最後尾をハートスティンガーが警護する形で、一行は慎重に医務室へ歩を進めた。

 医務室へ到着し、充分に警戒しながら中へ入る。幸い異形の男達などの待ち伏せはなかったが、内部には何体かの白骨死体が転がっていた。この放置ステーションをアジトにしていたという、略奪集団のメンバーかも知れない。

「お猿。非常用電源を入れてくれ。あそこだ」

 壁に灯る緑の光を指差したP1‐0号はそう言って、早速診察台へ向かった。

「こんな時まで、偉そうに猿呼ばわりすんじゃないッス」

 ブツブツ文句を垂れながらスイッチを押すキノッサ。天井照明が明るく点灯する中で、P1‐0号はキノッサの文句に言い返した。

「こんな時だからこその、“緊張緩和”さ」




▶#07につづく
 
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