銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#16

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 さらにイディモス=モティガンの本隊と交戦中の、ノヴァルナと『ホロウシュ』の方も決着がつこうとしている。

 イディモスのBSHO『ザンゲツMI』は、さすがに“コーガ五十三家”の前線指揮官機だけあって動きがいい。俊敏性、反射性、精確性、どれを取っても一級品であった。だがそれがむしろ、対ノヴァルナ戦で裏目に出た。ノヴァルナが潜在的に持つ特殊能力、“トランサー”を引き出してしまったのだ。

 それは至近距離で自分に向けられた『ザンゲツMI』が装備する、銃剣の銃口を見た時である。“こいつは躱せねぇ!”と感じた瞬間、ノヴァルナの意識がニューロネットラインの海に解き放たれた。あらゆる感覚が『センクウ・カイFX』と、完全に一体化し、自分の機体だけでなく敵味方全ての機体にまでリンクが及ぶ。

“来た!―――”と、ノヴァルナ。

 仕留めた!…と思い、トリガーを引いたイディモスだったが、眼の前で『センクウ・カイFX』の姿が消える。

「!」

 身の危険を感じ、咄嗟に機体を翻させるイディモス。その直後、背後に回り込んでいた『センクウ・カイFX』が、クァンタムブレードを薙ぎ払った。間一髪、その斬撃をショルダーアーマーの切断で凌いだイディモスは、さらに回避運動を続けながら、困惑の言葉を口にする。

「こ!…これは!?…どういう…」

 全方向にランダムに回避するが、まるで先回りするように間合いを詰め、ブレードを振るって来るノヴァルナに、イディモスは一転、防戦一方に追い込まれた。それもそのはずで、“トランサー”を発動するという事は、NNLの支配者になるという事であり、NNLを通じてイディモスの『ザンゲツMI』が、どのような動きをするかも把握する事ができるのだ。それを“トランサー”もなくギリギリのところで躱しているのは、むしろイディモスの技量の高さを示していると言っていい。

「く…おのれ!」

 強く歯を喰いしばるイディモス。無数の斬撃に、無数の防御。無数の火花が二機のBSHOの周囲に散る。

「やるじゃねぇか!!」

 不敵な笑みを大きくしたノヴァルナは、「だったら、コイツはどうだ!?」と言葉を続け、スロットルレバーのセレクターを切り替えた。

「高機動戦闘モード、スタート」

 収録されたノアの声が静かに告げ、コクピット内の出力表示モニターが一斉に変化すると、『センクウ・カイFX』頭部のセンサーアイが、鋭く“見開いて”緑色からコバルトブルーへ輝きを変える。
 
 『センクウ・カイFX』が装備する“高機動戦闘モード”は、ノヴァルナが“トランサー”を発動してこそ、本来の機能を発揮するものである。そしてその力が解放された『センクウ・カイFX』は、今しがたのノアの『サイウンCN』が赤い稲妻のようであったなら、こちらはそれ以上の白い閃光のようであった。

 イディモスがサイバーリンクを通じ、相手の急加速動きを察知した時にはもう、『センクウ・カイFX』は間合いに入り込んでいる。

「見えな―――」

 叫びながら距離を取ろうとするイディモスだったが、その時にはすでに、『センクウ・カイFX』がクァンタムブレードで描いた大きな円によって、両腕両脚を切断されていた。

「ぬあ!」

 続いてガガガン!…と背後からの衝撃。すれ違いざまに『センクウ・カイFX』が、バックパックを撫で斬りにして行ったのだ。一斉にアラームが鳴り出し、二基の小型対消滅反応炉が両方とも、緊急停止した事を告げる。

 もはやこれまでか…と覚悟するイディモス。ところがノヴァルナは、戦闘不能に陥った『ザンゲツMI』には眼もくれず、光の矢となって一直線に飛び去って行った。それに続く二十個の輝きは、ノヴァルナの親衛隊『ホロウシュ』である。この時になって初めてイディモスは、自分の配下のBSI部隊がすべて、行動不能にされている事に気付く。完全な連携負けであった。

「これほどの強さとは…それにこのコースはまさか」

 イディモスはノヴァルナ達が撤収したものと考えていたのだが、コンピューターが再計算したコースを見てある可能性に気付く。それは“輿入れ艦隊”の前方へ回り込もうとしている、自軍の母艦部隊のコースと重なっており、ノヴァルナ達はその阻止に向かった可能性である。だがイディモスは“いや、そんなはずは…”と首を振った。ジャルミス暗黒星雲の濃密な星間ガスが、艦隊の現在位置を隠しているはずであり、距離的にも今から到達するには遠すぎるであろうからだ。

 それらの認識は間違ってはいなかったが、しかし知っている範囲での認識であった。ノヴァルナの『センクウ・カイFX』は、最大速度でコーガ家の母艦艦隊との距離を詰めると、宇宙空間で停止。バックパックのウエポンラックから、大型のライフルを手に取る。新装備の超空間狙撃砲、『ディメンション・ストライカー:サモンジ』だ。しかし敵艦隊への狙撃ポイントは遠すぎる。ここでノヴァルナは驚くべき技を使った。“トランサー”発動状態で全ての神経を、NNLとのリンクに集中させたのである。そして探り当てた。今まさに、フェアンのいる“輿入れ艦隊”の前方へ回り込もうとしている、コーガ艦隊の居場所を。



▶#17につづく
 
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