銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#24

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 イースキー家に奇跡は起こらず、やがてトモスの旗艦は、サンザーの『レイメイFS』から対艦徹甲弾を大量に喰らったあと、『ヒテン』の主砲一斉射撃によって爆発。トモスはその寸前に艦を脱出した。

 旗艦が爆発した事により、守備部隊の大半はウォーダ軍に投降。最後まで抵抗した一部の艦は壮絶な最期を遂げ、バサラナルムの最終防衛線は崩壊した。
 あとは惑星地表と地中・海中に配備された、対宇宙兵器への精密攻撃と、一部地上施設への降下・制圧という、最終段階を残すのみとなる。

 するとここで地表制圧部隊の全ての将兵に対し、異例とも言えるノヴァルナ・ダン=ウォーダ自らの訓示があった。内容はバサラナルムの住民に対する、暴行・略奪の絶対禁止令だ。
 敵勢力の植民惑星を制圧した場合、必ずと言っていいほど起きるのが、一般市民への暴行・略奪である。古来より脱却できぬこの悪しき慣習は、人類が銀河に進出した現在も続いている。およそ百年前に発生した“オーニン・ノーラ戦役”では、皇都惑星キヨウですら、暴行・略奪の限りを尽くされた。また二年前の、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラ率いるイマーガラ家による、オ・ワーリ侵攻の際も、ギィゲルトが禁じたにも関わらず、オ・ワーリの領民に対する暴行・略奪が行われたのである。

 こういった事も踏まえ、ノヴァルナが下した禁令は、苛烈とも言えるほどのものであった。
 まず、暴行・略奪を行った者は、これまでにどのような戦功があったとしても、主犯・共犯を問わず極刑。その直接の上官は禁固二十年ののち永久追放。部隊指揮官はその階級に応じて強制労働刑。そして全員が市民権剥奪、『ム・シャー』はニ度とその地位へ戻れない事は言うまでもない。

 この草案を聞いたカッツ・ゴーンロッグ=シルバータは、少々厳し過ぎるのではないかとノヴァルナに進言し、「馬鹿野郎! これでも譲歩した方だ!!」と主君の逆鱗に触れた。実直で堅物のシルバータでさえ、下級兵士の暴行・略奪はやむなしと思うとこがあるほど、慣習化してしまっているという事である。そしてだからこそ、ノヴァルナはそういった慣習が許せなかったのだ。
 ノヴァルナがそのような考えに至ったのは、四年前に自分の眼で見た皇都惑星キヨウの荒廃ぶりや、ノア姫の学生時代の親友だったソニアの、没落ぶりが影響している。この先、キヨウを目指すノヴァルナにとっては、必ず打破しておかなければならない慣習なのである。

 シルバータを怒鳴りつけたノヴァルナは、最後に決然と言い放った。

「ノヴァルナ・ダン=ウォーダの軍は、末端に至るまで暴行も略奪も行わない!…もし俺のこの命令が、気に入らねぇってんなら、軍を抜けてもらって結構。それで兵の数が半分に減ろうと、ぜってー考えは変えねぇからな!!」
 
 ノヴァルナの潔癖さと対照的であったのが、オルグターツ=イースキーの往生際の悪さである。

 本拠地のイナヴァーザン城を取り囲むように、陸戦型『シデン・カイ』と機械化歩兵を乗せたカプセルが、大量に降下して来る光景を映し出す、地下総司令部の大型スクリーンの前で、オルグターツは顔を引き攣らせて叫んでいた。

「領民どもを! 領民どもをォ、城の敷地に入れてェ、盾にしろォ!!」

 領民を自分の盾にするなど、下策中の下策である。これで万が一敗北を免れたとしても、離れた人心はニ度と戻りはしないであろう。もっとも、すでに人心が離れているからこそ、ここまでウォーダ軍の進攻を許したのであるが…

 暴言同然の命令に、オルグターツの周囲にいる家老達が慌てて諫める。

「おやめください。殿下!」

「そのようなご命令は、民心の離反を招くだけです!」

「どうか、お考え直しを!」

 だがそのような言葉は、オルグターツの焦燥を怒りへと変えるだけである。一番身近にいた家老の胸倉を掴み、喚くように言う。

「うるせぇ!! 俺がやれって言やぁ、やるんだぁッッ!!!!」

 その時、イナヴァーザン城全体が揺さぶられるような震動が発生した。城のあるキンカー山上空の衛星軌道に進出して来た、ノヴァルナの総旗艦『ヒテン』の艦砲射撃である。地下深くに設けられた総司令部であっても、『ヒテン』の砲撃は一撃一撃がズシン、ズシン!…と腹に響く。オルグターツの卑劣さを知るノヴァルナであるから、一般市民を盾にしようとする可能性を読み取り、先制攻撃を仕掛けて来たのだ。

「ぬあああッ!!」

 反射的に両手で頭を覆うオルグターツ。ただ城には強力なエネルギーシールドが張られており、『ヒテン』の大口径ビーム砲であっても簡単に破る事は出来ない。

「はっ!…早く、領民どもを連れて来ォい!!」

「無理にございます!」

「なにィ!!??」

 家老に強く否定され、オルグターツは両眉を大きく吊り上げる。

「そのような命令に、誰が従いましょう! それに、このように艦砲射撃を受け始めては、物理的にも無理にございます!!」

「なんだとォ! 貴様ァ―――」

 反抗する家老を、拳で殴りつけようとするオルグターツだったが、そこに再び衛星軌道上からの『ヒテン』の艦砲射撃が、立て続けに襲って激しく揺らせた。頭を抱えたオルグターツは、焦りきった声で言う。

「はっ!…反撃はどうしたァ!!??」




▶#25につづく
 
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