銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第7話:目指すは皇都惑星

#06

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 翌日、皇国暦1563年4月14日。ウォーダ家上洛軍は惑星リシュージンを離れて、皇都惑星キヨウへの旅を開始する。

 ジョシュア・キーラレイ=アスルーガは三人の直臣と共に、上洛軍後詰め部隊のツェルオーキ=イクェルダ率いる第12艦隊に預けられた。前衛部隊や主力部隊はこの先、ロッガ家との戦闘になる可能性が高いからである。
 その一方で、本来は星帥皇室配下ではなく、浪人のミディルツ・ヒュウム=アルケティは、ノヴァルナの参謀扱いとして『ヒテン』艦橋に乗り込んでいた。

 このウォーダ家の動きに対して、早くもエルヴィスの星帥皇室から警告が発せられ、即時軍を撤収させ、ジョシュアとその一党を『皇国中央評議会』に引き渡すように、命令が発せられた。無論ノヴァルナには、端からそのような命令に従うつもりはない。

「んなもん、ほっとけほっとけ」

 司令官席で右手をひらひらさせてノヴァルナは、皇国からの命令文を届けに来た副官のランに告げ、他の上洛軍の進発準備を急ぐように続けた。今回はバサラナルムの時のように、全部の艦隊が惑星リシュージンの衛星軌道上に停泊しているのではなく、ノヴァルナの第1艦隊とジョシュアを乗せる第12艦隊しかいない。残りの艦隊は航行開始順に、カノン・グティ星系外縁に向かって待機しているため、ノヴァルナ達も今度は待たされずに済む。

「各艦隊の発進時間をリンクさせて、星系外縁部での統制DFドライヴ前に、全部隊が揃うように調整を頼む」

 ランにそう命じておいて、ノヴァルナは傍らに控えるミディルツに声を掛ける。

「コレット=ワッダー殿を通じて、ジョシュア様の名で今一度ロッガ家に、我々への協力を呼び掛けてくれ。協力が無理なら、オウ・ルミル宙域の通過を認めるだけでもいい」

 今回の上洛について、ロッガ家にも協力を要請したウォーダ家だったが、当主のジョーディー=ロッガは、ミョルジ家側に寝返っていた上に、ノヴァルナに対して積年の恨みもあって、全く相手にされていない。それどころか『クーギス党』からの情報によれば、ウォーダ家を迎撃する態勢に入り始めているらしい。

「やってもらってはみますが…成果は期待できないでしょう」

 冷静な判断で応じるミディルツ。しかしノヴァルナもその辺りは、承知しているようであった。不敵な笑みで言い放つ。

「いいさ。大事なのはジョシュア様を星帥皇の座につけたあと、“ジョーディー=ロッガは、ジョシュア様からの協力要請を断った”って事実が残る事だからな」
 
 ノヴァルナの言葉にミディルツは、“冷徹かつ良き判断をなさるお方だ…”と評価した。
 無論あくまでもジョシュアの上洛に成功し、星帥皇の座に就けられてのちの話になるが、実際にジョシュアの名で行った協力要請を断ったとなると、ロッガ家の名は地に落ち、立ち直る事は難しくなるだろう。ウォーダ家にとっては、宿敵を一つ減らせるわけだ。

「どっちにしても、ロッガは叩いておかなきゃなんねー、連中だからな」

 そう言ってノヴァルナは、艦橋中央の大型ホログラムを、現在位置からヤヴァルト宙域の皇都惑星キヨウまでの、航路図に切り替えた。中立宙域を大部隊が抜けるのは時間が掛かり過ぎる上、協力を仰ぐ必要がある上級貴族達が、いい顔をしないため、オウ・ルミル宙域を突き抜けて最短距離を取る事になる。

 ミディルツは、上洛軍の航路図を眺めながら、意見を口にした。

「ロッガ家は、本拠地のクァルノージ城があるオウ・ルミル星系を中心に、これを球状に取り囲む、十八の近接恒星系に建設された城と、相互支援を行うのが防衛方針となっています。このシステムを打ち破るのは至難の業かと存じます」

「そうらしいな」

 領域であるオウ・ルミル宙域中心部に超巨大暗黒星雲、ビティ・ワン・コーを有するロッガ家は、敵が侵攻して来た場合、その方向が限定される事から、首都星系オウ・ルミルの集中防衛を防御戦略の骨子としている。

 その防御戦略というが、首都星系オウ・ルミルを中心とした、直径130光年の球体を描いて、この表面に位置する十八の恒星系に支城と、恒星間防衛艦隊を一個ずつ配置するというものだった。こうする事で敵がオウ・ルミル星系もしくは、どこかの支城を攻撃して来た際、他の支城から出撃した防衛艦隊が、あらゆる方向から次々と押し寄せて包囲殲滅するのである。直径130光年という距離は、一回のDFドライヴで宇宙艦が超空間転移できる距離で、その辺りも考慮されている。

「これに対し今回のノヴァルナ様のご戦略は、速攻で『ハブ・ウルム・ク・トゥーキ』へ到達する事。ロッガ家を叩いておくにしても、あまり時間はかけられませんが、どうなされるおつもりなのですか?」

 ミディルツの懸念も尤もな話であった。下手に手間取ってしまうと、こちら側の敗北にもなりかねない。しかしノヴァルナは「ふふん…」と鼻を鳴らして、落ち着き払って言葉を返した。

「別にウチがわざわざ、連中の防衛戦略とやらに、付き合ってやる必要はねーからな。ウチはウチのやり方で、やらせてもらうさ」




▶#07につづく
 
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