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第11話:我、其を求めたり
#11
しおりを挟む両軍の機動部隊の距離はぐんぐんと縮まる。『アクレイド傭兵団』の兵は基本的に賞金目当ての兵であるため、エルヴィスの扇動に乗せられ、ノヴァルナの『センクウ・カイFX』へ殺到して来た。量産型BSIの機種は皇国軍の『ミツルギ』とミョルジ軍の旧型『サギリ』。ASGULはミョルジ軍の『ラシェラム』である。
敵編隊の動きを見て、指示を出したのはノアだった。カレンガミノ姉妹の二人を散開させて、直進するノヴァルナと、これを前方から半包囲しようとする傭兵達の間に割り込ませる。
「マーメイド02は左翼、03は右翼へ展開。敵機の漸減をしてください」
メイアとマイアは声を揃えて「イエス、マム」と応答すると、無駄のない動きで左右に分かれた。そしてノアは『サイウンCN』をやや後方に下げ、超電磁ライフルを起動させる。ノヴァルナの『センクウ・カイFX』に対して、援護射撃を行うのが目的だ。ライフルの制御モジュールホログラムを立ち上げたノアは、素早く指を動かして、セレクターを“狙撃モード”に切り替える。前述した通りNNLネットワークがローカルモードのため、機能が制限される旨の警告文が浮かび上がる。しかしそれは承知の上だった。そんな中で、エルヴィスが声を上げる。
「いざ参る! 余と、このBSHO『メイオウSXー1』が相手じゃ!!」
エルヴィスの専用BSHOは『GG1ー536メイオウSXー1』。テルーザの専用機『ライオウXX』の設計図をベースに造られた、いわば“姉妹機”である。
「おう! 来いやッ!!!!」
距離を詰めながら無頼っぽく応じるノヴァルナ。するとその視界の左端で、爆発の閃光があった。一番槍を狙った傭兵団のASGULを、メイア=カレンガミノの『ライカSS』が仕留めたのだ。
この戦いはノヴァルナとエルヴィスの“果し合い”であるが、“一騎打ち”ではなく“合戦”だった。つまり双方共、支援機を交えながらの戦いという事だ。そのため、エルヴィスの『メイオウSXー1』の前面には、基地司令官のヴェルター以下二機の親衛隊仕様『ミツルギCC』と、同じく二機の親衛隊仕様『サギリMX』が護衛に付いている。
「ノア!」
「分かってる!」
ノヴァルナの言葉にすぐさま反応して、ノアが後方から超電磁ライフルを二度放つ。正確な照準にヴェルターの『ミツルギCC』と、一機の『サギリMX』が慌てて緊急回避を行った。代わりにその位置に入ろうとした二機に、ノヴァルナの『センクウ・カイFX』自身がライフル弾を浴びせる。不意を突かれた二機は、大きくコースを乱した。
「行くぜ!!」
護衛の乱れを機に、ノヴァルナはエルヴィスと一気に間合いを詰める。
テルーザ並みの技量を持っているなら、射撃はまず当たらない。そう判断したノヴァルナは、初手から接近戦を挑んだ。ポジトロンパイクを下段から一閃する。だがエルヴィスの『メイオウSXー1』は一瞬早く捻り込みをかけ、斬撃を難無く躱した。無論、ノヴァルナも躱して来るのは承知の上、二撃目、三撃目を重ねて繰り出す。しかしこれも紙一重で回避するエルヴィス。やはりテルーザの複製だけの事はある。
するとそこへ割り込みをかける、ヴェルターの『ミツルギCC』。右斜め後ろから『センクウ・カイFX』へ、ポジトロンパイクで斬りかかった。このタイミングを待っていたかのように、ノヴァルナと正対していたエルヴィスも、機体の左腰に装着しているクァンタムブレードを引き抜いて、横一直線に胴斬りを放つ。上級パイロットでも回避は困難な、二機による合わせ技だ。
だがノヴァルナの技量は、単なる上級者に留まらない。
自らも瞬時に腰のブレードを抜刀。パイクとの二刀流を選択すると、そこから振り向きざまに、背後から斬りかかるヴェルターとパイク同士を切を合し、同時にエルヴィスからの斬撃をブレード同士、ノールックで受け止めた。
「く! 馬鹿な!!」
驚愕したのはヴェルターだ。図らずも連携技となった今の一撃。不完全ではあったものの経験上、防げはしないはずだったからだ。
しかもノヴァルナはむしろ、エルヴィスが斬撃を放つために、前に出るのを狙っていたようだ。『センクウ・カイFX』をワルツでも踊るようにさらに一回転。ポジトロンパイクで袈裟懸けに斬りかかった。これを間一髪、機体を後退させブレードで打ち払う、エルヴィスの『メイオウSXー1』。こちらの瞬発力も驚異的だ。
チィ!…と舌打ちし、さらに斬撃を仕掛けようとするヴェルター。ところが次の瞬間、ヘルメット内にロックオン警報が鳴り響く。咄嗟に回避行動を取る、ヴェルターの『ミツルギCC』。その元いた位置の虚空を、超電磁ライフルの銃弾が貫いた。ノアの『サイウンCN』が撃った援護の銃弾である。
ノアの『サイウンCN』は、さらにライフルを放つ。緊急回避を続けながらヴェルターは、残る三機の親衛隊仕様BSIのパイロットへ、三人はノアを相手とし、ノヴァルナへの援護を断つように命じた。そこからノヴァルナとエルヴィスの戦闘に眼を移すが、桁違いの高速機動戦闘を行っている二機の姿は、もはや視界の彼方に消え、肉眼では捉えられなくなっている。
「ハハハハハ! いいぞウォーダ卿。もっと余を楽しませよ!!」
笑い声を上げ、操縦桿を引き、フットペダルを踏み込むエルヴィス。右手のポジトロンパイクを上段から振り下ろし、左手で超電磁ライフルを突き出す。その銃口の先にあるのは、パイクの斬撃を回避した『センクウ・カイFX』の胸部だ。
だがエルヴィスがトリガーを引く一瞬前、『センクウ・カイFX』の左脚が突き上げられ、爪先が銃身を蹴る。弾かれた銃口から飛び出した銃弾が、虚しく彼方へ去って行く。
すると次の瞬間、『メイオウSXー1』のバックパックから放射線状に伸びた、蜘蛛の脚を思わせるバインドアームが、至近距離から一斉にビームを放った。機体と一体化した戦闘拡張システムAESの攻撃だ。
「!!!!」
テルーザとエルヴィスの戦闘映像を見ていたノヴァルナは、このAESの存在を知っており、反射的に捻り込みをかけながら機体を降下させる。だがギリギリの回避だ。放たれた八本のビームのうち、三本が『センクウ・カイFX』の機体表面を掠め、表面装甲を線状に抉った。しかも脚型AESには自動追尾機能があって、追い縋るようにビームを放ち続ける。ノヴァルナは目まぐるしく操縦桿を動かして、スクロール、ウェーヴ、ダイブなどを連続。執拗なビームの追撃を悉く躱した。
「むぅ。見事じゃ!!」
目を見張るノヴァルナの操縦テクニックに、感嘆の声を漏らすエルヴィス。そしてその口許が、大きく歪む。
「それでこそ屠る甲斐が、あるというもの!!」
『メイオウSXー1』のバインドアームが、ビームを放ちながら『センクウ・カイFX』を追っていたのは、予め固定していた本体装備の超電磁ライフルの、狙撃ポイントへ誘導するためだった。ライフルの照準センサーで『センクウ・カイ』を追うと、ロックオン警報でノヴァルナに悟られるからである。
「もらった!!」
『センクウ・カイFX』の照準点への到達にタイミングを合わせ、ライフルのトリガーを引くエルヴィス。ところが一瞬早く、『センクウ・カイFX』の方が超電磁ライフルを撃って来た。
「むあっ!!」
エルヴィスは驚いて機体を揺らし、ライフルを誤射する。そこへ全周波数帯で響くノヴァルナの高笑い。
「アッハハハハハ!!!!」
二発、三発と反撃の銃弾を放ちながら、言い放つノヴァルナ。
「狙いはいいが、考えが見え見えだぜ。エルヴィスさんよ!!」
▶#12につづく
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