銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第11話:我、其を求めたり

#16

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「敵の宙雷艇部隊が全部、この艦を追って来ます」

 男性オペレーターの報告に、モルタナは「へぇ…」と興味深そうな眼を、隣に立つジークザルトへ向けた。

 モルタナの考え方は基本的に宇宙海賊であり、襲い易い獲物を狙う―――つまりこの場合、敵はASGUL直掩隊が付いていない『プリティドーター』と、非武装の四隻の貨物船を優先的に狙うはずだと思ったのだ。これはモルタナに艦隊戦の経験が少ないためであって、ノヴァルナの正式な家臣となって、まだ日が浅いというのもある。そこでノヴァルナは出撃前にモルタナに対し、もし策に困ったらジークザルトの意見を容れるよう、アドバイスしておいたのだ。

「それで、次の手はどうするんだい?」

 モルタナは、艦橋中央の戦術情報ホログラムを眺めながら、ジークザルトに問い掛けた。ホログラムには前方の第十五惑星と、後方を追撃して来る十九隻の宙雷艇の反応が、それぞれの解析情報を添えて映し出されている。

「速度は僅かながら、敵の方がまさっています。まずは見え見えでいいので、牽制射撃を。そしてその間にASGUL隊の一部を、第十五惑星へ先行させましょう」

 ASGUL隊の使い方は今ひとつ分からないモルタナだったが、敵の宙雷艇部隊の行き脚を鈍らせる、牽制射撃の必要性は理解できる。頷いたモルタナは、ジークザルトへ告げた。

「わかった。ASGUL隊の方は、あんたに指揮を任せるよ」

 そしてモルタナは砲術長に向き直って命じる。

「主砲射撃準備だよ! 目標は二列で追って来る敵の、先頭を行く二隻だ! 照準は甘くてもいいから、ジャンジャンすぐ撃ちな!」

 その言葉にジークザルトは僅かに頷いた。いま必要なのは、正確な照準による狙撃ではなく、大量の主砲弾を即座に送り込む牽制射撃であるから、言い方はともかく、モルタナの命令は正しい。

 またモルタナの命令を受けた、『クーギス党』の部下達の動きも速い。改造輸送艦『ラブリードーター』の上下後甲板に二基ずつ並べられた、口径20センチブラストキャノンが旋回し、オレンジ色の曳光粒子を纏ったビームを乱射し始めた。それと同時に、五機のASGULが最大速度まで加速し、『ラブリードーター』を残して第十惑星へ向かって行く。

 一方、傭兵団の宙雷艇部隊は、先頭の二隻に対する激しい牽制射撃に、隊列が乱れて、回避行動を取らざるを得なくなった。多少なりとも『ラブリードーター』との距離が開く。
 
 『ラブリードーター』の砲戦能力は駆逐艦並みだが、それでも主砲弾の直撃を喰らえば、宙雷艇はひとたまりも無い。だが逆に防御力が脆弱な輸送艦は、余程の悪運でも無い限り、一本の宇宙魚雷でも喰らえば行動不能に陥る。この戦いはいわば宇宙魚雷を撃たせまいとする『ラブリードーター』と、宇宙魚雷の射点を得ようとする宙雷艇隊の、せめぎ合いといったところだ。

「くそっ。輸送艦のくせに、いい射撃をする!」

 無数の主砲ビームが飛来し、回避行動で大きく揺らぐ宙雷艇の中、指揮官の一人が忌々しそうに言う。無論、自分が相手をしているのが、宇宙海賊だとは思いもしない。数が主体の牽制射撃だと分かってはいるが、照準も悪くない。油断して直撃でも喰らえば一巻の終わりだ。そこへもう一隊を率いる指揮官から連絡が入った。

「どうする? 隊列を解いて攻撃を仕掛けるか?」

 もう一人の指揮官からの意見は、現在十九隻の宙雷艇が、二列縦隊で行動している状態であるのを解き、各宙雷艇に個々に攻撃を仕掛けさせるというものだ。だが同僚の指揮官はそれを否定した。

「いや。それはまだ早い。今バラバラに仕掛けても、敵の直掩隊で被害が増える」

 傭兵団の宙雷艇が、なるべく隊列を組んだまま接近しようとしているのは、『ラブリードーター』の直掩についている、ASGULを警戒しての事である。早いうちに隊列を解いてしまうと、ASGULが襲い掛かって来た時に、相互支援が難しくなるからだ。

「では、この距離で魚雷を何本か、撃つのはどうだ? 少々値は張るが、こちらも牽制攻撃というわけだ」

 コストパフォーマンスを考えると、輸送艦相手に高価な宇宙魚雷を何本も使うのは、通常なら勿体ない話なのだが、敵将ノヴァルナの命が掛かっているとなると、宙雷艇隊指揮官に宇宙魚雷の使用を躊躇う理由はない。距離は離れているが、自律思考機能を有し迎撃が困難な宇宙魚雷を撃てば、『ラブリードーター』も牽制射撃どころではなくなるはずだ。

「なるほど、それはいい。それでいこう」

 即座に十九隻の宙雷艇から、一本ずつ宇宙魚雷が放たれて『ラブリードーター』に向かい始める。緊張した声で報告する『ラブリードーター』のオペレーター。

「敵が魚雷を発射しましたぜ!! 数は十九!」

「全火器で迎撃しな!! 出し惜しみは無しだよ!」

 強い口調で命じるモルタナと対照的に、ジークザルトは静かな口調だ。

「最初の魚雷は牽制目的でしょう。落ち着いて対処しましょう」




▶#17につづく
 
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