銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第13話:新たなる脅威

#03

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 正直、ノヴァルナはフェルデーサと模擬戦をしてみたいとも思った。しかし口にした通り、上洛戦以来放置していた内政の処理案件が、一向に減っていないため、そのような事にかまけている余裕は無いのだ。
 そもそも本来ならば三年前、侵攻して来たイマーガラ家に大打撃を与えて撃退したあと、充分な準備期間を置いてイースキー家に対処するはずであったのが、次々に起こる事態の急変で、気が付けば新星帥皇ジョシュアを上洛させ、ウォーダ家の勢力は今や、ヤヴァルト銀河皇国有数の規模となってしまった・・・・・・・。その反動が来ないはずがない。

 特にノヴァルナを悩ませているのが、やはり領域の経済面だ。イマーガラ家に大勝利したとはいえ、あの戦いはオ・ワーリの領内で行われた迎撃戦であり、経済的には損失でしかない。それにイマーガラ家自体は当主ギィゲルトを失ったものの、ウォーダ家に降伏したわけではなく、賠償金など一銭も受け取っていなかった。
 またミノネリラ宙域についても、前領主オルグターツ=イースキーの暴政によって、経済状態は悪くなっており、オ・ワーリからの支援が必要なほどである。
 しかもそこに来てのジョシュアの上洛戦だ。こちらの戦費はほぼ全てが、ウォーダ家からの“持ち出し”で賄われており、大赤字もいいところであった。

“…なるほど、どいつもこいつも、上洛戦なんてしたがらないワケだぜ”

 キノッサを下がらせた執務室でノヴァルナは、机の上に浮かばせた何枚ものホログラムスクリーンに映る、財務関係の電子書類を眺めて溜息をついた。
 百年戦国の世が続いているのも、結局のところは“カネ目当て”である。隣国の植民星系を奪ってその分の税収を増やし、その収入分で新興植民星系の経済が、独り立ち出来るようになるまで支え、さらに税収を増やす。そんな宙域の経済を牽引するのが、植民星系開拓と軍備拡張であり、領域拡大→植民星系発展→軍備拡張→領域拡大…の悪しき回転が、止まらなくなってしまったのが今の戦国の世だ。


だからこその、“銀河布武”であった。


 残念ながら今の銀河皇国では、武力の優劣が交渉力の優劣となっている。そして皇国の統制を行う星帥皇室は、これまで武力はあまりにも脆弱だった。確かにNNLシステムや超空間ゲートの支配は、強力なものではあるが、言ってしまえば“それだけ”なのだ。
 そして七年前のミョルジ家によるヤヴァルト宙域侵攻と、事実上の星帥皇室の傀儡化により、皇国の政治体制は崩壊した。その再建策がウォーダ家の軍事力を背景にした、星帥皇室の権威復活というわけである。
 
 しかしまぁ、皮肉なもんだ…とノヴァルナは思う。

 かつて、ドゥ・ザン=サイドゥとの初めての会見で、“マムシのドゥ・ザン”の度肝を抜いて見せ、ドゥ・ザンに“あんたが求めている権威とは、この程度のもんさ”と言い放った自分が、星帥皇室の権威を取り戻すために、せっせと働いているのだから。

 そこへインターホンが鳴り、ラン・マリュウ=フォレスタの声がする。

「ノヴァルナ様。ミノネリラ通商連合の代表の方々を、お連れしました」

 ノヴァルナは「分かった。入ってもらえ」と応じて回線を切ると、少々うんざりした様子で、「へいへい、わかりましたよ…」と小声で愚痴りながら、出迎えるために席を立った………



皇国暦1563年11月20日―――

 キノッサの新しい家臣フェルデーサ=ゼノンゴークと、元『ホロウシュ』筆頭のトゥ・シェイ=マーディンの対戦は、ミノネリラ星系第六惑星ハラーシェを回る、第二衛星の付近で行われていた。
 ハラーシェの第二衛星は、南半球の三分の一程が大きく抉れた、特異な形をしており、太古の昔に大型の小惑星と激突したためだと推測されている。さらに砕けた破片と思われる大小の岩塊が、第二衛星の周囲に漂う。

 今や第8基幹艦隊司令官となったマーディンは、自身の旗艦『アロンゲート』を背後に置き、一方のフェルデーサは、主君キノッサが座乗する第36基幹艦隊旗艦『ヴェルセイド』を背後に、全周囲モニターに映る相手の機体を見据えていた。

 搭乗する機体は、双方とも親衛隊仕様の『シデン・カイXS』。マーディンはすでに専用BSHOの『テンライGT』を所有しているが、今回は機体性能に差が出ないようにするために、以前使用していたものとも違う真新しい機体をフェルデーサと合わせて、カスタマイズ調整して使っている。

 座乗艦『ヴェルセイド』の艦橋で、ホログラムスクリーンの拡大映像を見詰めるキノッサは、フェルデーサの乗る『シデン・カイXS』の背中に、「頑張るッス、フェルデーサ」と声を掛けた。
 ここまではフェルデーサの〇勝二敗。元『ホロウシュ』筆頭が相手とはいえ、全くと言っていいほど歯が立っていない。特に最初の一戦などは、秒殺に近かった。

「それでもまぁ、諦めない姿勢はいい」

 身構えるフェルデーサの機体を正面から見据え、マーディンは操縦桿を握り締めて呟く。自分の未来への渇望は今からもう十年も前、ノヴァルナ自身がナグヤ市のスラム街から“ぶん殴って”集めて来た、新生『ホロウシュ』の若者達に通ずるものを感じさせる。それに確かに筋もいい。一回目の対戦は秒殺だったが、二回目は三分粘ったのだ。




▶#04につづく
 
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