銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第13話:新たなる脅威

#13

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 シャトルに乗ったナギ・マーサス=アーザイルが、オルダニカ城上空の衛星軌道に浮かぶ第8宇宙艦隊旗艦に到着し、全艦が動き出したその頃、ヤヴァルト星系では“ミョルジ三人衆”の九個艦隊が、彼等の想定以上に、ミディルツとフジッガの二個艦隊に手こずっていた。

 双方の会敵場所は、ヤヴァルト星系第九惑星クジョン付近。戦場の背景の中にはそのクジョンが、メタンガスで覆われた青白い球体を浮かべている。

 そして宇宙の暗闇を切り裂く、黄緑色の曳光粒子を纏ったビームの束。ミディルツの座乗する旗艦『アルバルドル』の主砲射撃だ。それが伸びた着弾先は“ミョルジ三人衆”艦隊群の戦艦。左舷側に四枚並べたアクティブシールドに命中したそれらは、無数の稲妻に分かれて光の盾に絡みつく。シールドが過負荷状態になっているためで、いつ崩壊してもおかしくはない。それだけ『アルバルドル』の主砲射撃が正確で、激しいという事だ。

 たまらず針路を変更し、距離を取ろうとする敵戦艦。すると『アルバルドル』は後続する二隻の僚艦と共に、別の戦艦に射撃目標を変更した。
 ミディルツ艦隊にはあと二隻の戦艦がいるが、この二隻は重巡一隻を加え、別行動で主砲射撃中。さらに重巡の残り三隻も別動隊で射撃を行っている。ミディルツがとった戦術は、戦艦と重巡航艦を三隻ずつの分隊にして、“ミョルジ三人衆”と皇都惑星キヨウの間に入り、高速航行で進路妨害をしながら、主砲射撃によって牽制するというものだった。

 これは一見するとミディルツ側が、戦術の禁じ手である“戦力の分散”を、行っているように思える。特に相手が自軍の、四倍以上の戦力であるなら尚更だ。
 だがここで考えておかなければならないのが、“ミョルジ三人衆”の目的であった。彼等の侵攻目的は、ミディルツやフジッガの艦隊を撃滅する事ではなく、皇都惑星キヨウを武力制圧する事なのである。そのためには、ミディルツとフジッガの艦隊の排除に、九個すべての艦隊を使用するわけにはいかない。キヨウにはまだ、ウォーダ家のマスクート・コロック=ハートスティンガーの艦隊がおり、さらに撤退した星系防衛艦隊も再度、防衛線を挑んで来るはずだからだ。

 それに三人衆も、周辺の独立管領が皇国側について、迎撃に出て来るであろう事は知っているはずで、ここで九個艦隊がすべて戦闘を行って勝利しても、部隊の立て直しで時間を喰っていては、増援部隊が到着して皇都の守りが固くなってしまうため、結果的に目的達成の難度が増すと判断するに違いない…というのがミディルツの読みであった。
 
 そしてミディルツのこの読みは当たり、三人衆側はソーン=ミョルジの第2艦隊と、ビルティー=ガヴァラの第7艦隊が対応。残り七個艦隊はそのまま、キヨウを目指そうと動いている。
 だが“読み通り”という事は、“思う壷”という事だ。ミディルツの敵を巻き込んだ進路妨害で、キヨウ攻略用の七個艦隊は行動に掣肘せいちゅうがかけられ、最短距離での進軍が困難となって来ていた。回り込んで最短針路へ戻そうとする度に、ミディルツの三つの分隊が先回りして、戦場を持ち込んで来るのだ。

「ええい! 何をやっているのか!!」

 ミディルツ艦隊を相手取っているソーン=ミョルジは、状況の歯痒さに苛立ちが頂点へ達し、司令官席の肘掛けを拳で殴りつけて立ち上がった。自身が率いる第2艦隊は、ミョルジ軍の主力部隊の一つのはずである。それが三個分隊九隻の戦艦と重巡に翻弄され、個々の艦の動きに乱れが生じて、統制が取れなくなっている。戦術状況ホログラムで見ると、表示されるのはまるで素人集団の動きだ。

 ただ、ミディルツ艦隊の動きが巧妙である事が、今の状況を作り出しているのも確かであった。戦艦と重巡の三個分隊は、個々が独立して動いているように見せかけてはいるが、ソーンの艦隊がどれか一つの分隊に攻撃を集中しようとすると、残る二つの分隊が側面から砲火を浴びせて来るという、実際には相互支援戦術をとっていたのである。

 さらにミディルツが艦隊の後方へ下げている、軽巡航艦以下の宙雷戦隊の存在も不気味であった。ソーン艦隊の隊列が大きく崩れでもすれば、旗艦めがけて突撃を仕掛けて来る気配を感じさせているのだ。

「ガヴァラの第7艦隊の方は?」

 自分の艦隊が思うように動けていない事に業を煮やしたソーンは、もう一人の武将ビルティー=ガヴァラが率いている、第7艦隊の状況を参謀に問い質した。しかしガヴァラの艦隊も、フジッガの第2防衛艦隊との撃ち合いに忙殺されており、現状を打開出来るような余裕はない。これを報告として聞いたソーンは、チィ!…と舌打ちして強い口調で下令する。

「こうなったら、多少の損害の増加も構わん。一点突破で敵陣をこじ開け、キヨウ攻略部隊を通させる!」

 このソーンの命令に従い艦隊参謀は、所属する十隻の戦艦を五隻ずつ左右に雁行陣形で並べ、重巡以下の艦を二列縦隊で後続させる、“巨大な矢”を作り出した。これでミディルツ艦隊を突き破ろうというわけだ。

 ところがソーン艦隊のこの動きも、ミディルツの予想するところだったのである。



▶#14につづく
 
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