339 / 526
第13話:新たなる脅威
#16
しおりを挟む約四時間後、オルグターツの奮戦も空しく、戦線が膠着した“ミョルジ三人衆”は第八惑星裏側まで後退して、部隊の立て直しを図っていた。
その要因は、タクンダール家の派遣部隊が思いの外、強力であった事だ。特にBSI部隊指揮官の二人が、自らの命と引き換えに死闘を演じ、ミョルジ側のオルグターツとエクスジア両艦隊のBSI部隊に、大打撃を与えたのが大きく影響している。二人の指揮官が、彼等の親衛隊や直卒BSI中隊と共に、オルグターツとエクスジアのBSI部隊の半数を相手取る間に、対艦攻撃を主体にした部隊が、BSI防御網を突破。大量の対艦誘導弾を撃ち放ったのである。
このタクンダール家BSI部隊の目論見を見抜けなかった辺りが、オルグターツの将としての限界点であっただろうか。旗艦の司令官席から飛び上がるように立って、「しまったァ!」と叫んだ時には、味方の複数の艦から火柱が噴出していた。
そこから必死に戦況の挽回を図ったものの、ここでオルグターツの身にも不運が降り掛かる。タクンダール側の旗艦を撃破もしくは行動不能に陥れて、打開策を探ろうと、麾下の艦隊を強引に前進させた矢先、自分の方が座乗する旗艦『ダーガット・ロア』が、タクンダールのBSIユニットから、三発の対艦誘導弾を喰らい、機関部に小さくない損害を被ってしまったのである。
しかもその結果、連携を取ろうとしていたもう一人のミョルジ軍の武将、エクスジアの艦隊にまで損害の拡大が飛び火した。
それに加え、タクンダール家の対艦攻撃部隊は、一部がナーガス=ミョルジの第1艦隊にまで到達。手当り次第に誘導弾を発射し、対艦徹甲弾を連射した。
これで“ミョルジ三人衆”の軍は完全に浮き足立ち、ミディルツとフジッガの艦隊に対応していた、ソーンとガヴァラの艦隊も押され始めると、総司令官のナーガス=ミョルジは皇都攻略の強硬策を諦め、第八惑星裏側で部隊の再編を行うものして、全軍の一時撤収を命じたのである。
ただ、対する皇都防衛側も、当然ながら相当規模の損害を受けており、第八惑星裏側へ撤退するミョルジ軍に、決定的な打撃を与えられずにいた。しかもこの状態はすぐに解決できそうになく、ナーガス=ミョルジも“どうしたものか…?”と、頭を抱えていたのであった。
翻ってミディルツとフジッガのウォーダ軍艦隊であるが、こちらの方も第五惑星公転軌道へ後退して、部隊の立て直しを行っていた。ただしこちらは、時間を無駄にするつもりはない。
「フジッガ殿。そちらの状況は?」
ミディルツの呼び掛けに、通信ホログラムスクリーンに映るフジッガは、一旦視線を外した。別のスクリーンが映し出している自分の艦隊の状況を、再確認したのだろう。視線を戻したフジッガは淡々と返答する。
「戦艦二隻が中破、重巡二隻を失った。小破状態の艦は何隻かあるが、まだまだ戦える」
フジッガの艦隊は、三人衆側のビルティー=ガヴァラが指揮する第7艦隊と、砲撃戦に終始し、撤退を考えるほどの損害を受けてはいない。一方のミディルツ艦隊はソーン=ミョルジの艦隊に対し、分散機動戦を挑んだ事もあって、戦艦と重巡にかなりの損害を出していた。喪失した艦こそ無いが、全ての艦が中破以上の状況である。
ただそれでもミディルツの闘志は衰えておらず、またそれを実践するための方策も用意していた。大口径砲を装備した戦艦や重巡、そして戦場の拡散に使用したBSI部隊は消耗したが、六隻の軽巡と十八隻の駆逐艦はほぼ無傷だ。今度はこれを使おうというのだ。
「わかったフジッガ殿。ではこれから敵部隊が集結地にしている、第八惑星の裏側に軽巡と駆逐艦で、波状攻撃を仕掛けようと思うがどうだろう?」
これを聞いてフジッガも、武将の眼をギラリと光らせた。
「なるほど。先手を取っての嫌がらせか。タクンダール軍の、立て直しの時間も稼げるし、それはいい」
フジッガの賛同を得て、ミディルツは強く頷いた。彼等皇都側の戦略は、周辺宙域の独立管領からの援軍が、到着するまでの時間稼ぎだ。そうであるなら、小部隊による波状攻撃は、効果的なはずである。さらにフジッガは自らの思い付きを、ミディルツに具申した。
「ミディルツ殿。ここは私の戦艦と重巡の部隊が前進して、波状攻撃の援護射撃を行う。貴殿は我が艦隊の空母も合わせて指揮し、残存BSI部隊で機動兵器戦を、仕掛けてはどうか?」
文人武将と侮るなかれ。文芸に秀でる一方、戦場では武辺豊富なフジッガは、戦意も高くそう言い放つ。それに触発されたのか、ミディルツも冷静な口調の中に、焔の煌きを見せて応じる。
「いいだろう。それでは私も、自分のBSIで出るとしよう…」
そんなミディルツの言葉に、“やはりおまえもそっち側の人間か…”と言いたげな眼をして、フジッガは頷いた………
▶#17につづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
獅子の末裔
卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。
和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。
前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる