銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第15話:カノン・ガルザック撤退戦

#11

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 程なくしてダイナンの“リベリオン中隊”二十四機は、空母『プレジンディア』から発艦した。宇宙に出たフェルデーサは、『シデン・カイXS-TF』の全周囲モニターが映し出す映像から、敵艦隊の混乱状況を初めて把握する。
 『カノン・ガルザック』宇宙城の突然の自爆で生じた、アザン・グラン軍主力部隊の陣形の乱れにつけ込んで突撃した、第24と第28宙雷戦隊の統制雷撃によって、敵艦隊は隊列を失って艦ごとにバラバラとなっていた。これは確かに、BSI部隊による対艦攻撃が有効な状況だ。指揮官のティヌート=ダイナン機から指示が出る。

「敵は状況からして、BSI部隊による迎撃を主体にして来るはずだ。直掩隊は二手に分かれ、敵迎撃部隊に対処する。“リベリオン02”は“14”から“24”を率いて、対艦部隊の上方へ。“03”から“13”は、私と共に下方へ回れ」

 “リベリオン03”のコールサインを与えられているフェルデーサは、「了解」と返答し、ダイナンの機体に後続した。第19航宙戦隊の空母六隻から発艦した総数三百二十五機が、一団となってアザン・グラン軍主力部隊に向かってゆく。



 そしてこちらはアザン・グラン軍総旗艦『サイオウ』。ウォーダ軍の宙雷戦隊の統制雷撃を受け、主力部隊は戦艦4、重巡5、軽巡2、駆逐艦2を喪失。その他多くの艦が損傷している。

「左翼分離部隊の合流はまだか!? 早く隊列を立て直せ!」

 態勢を回復できないまま立て続けに攻撃を喰らい、さしものエヴァーキンも声を上擦らせる。だが作戦参謀の答えは芳しくないものだ。

「さ、左翼分離部隊は、敵第二陣の艦砲射撃を受け応戦中。合流は遅れる模様」

「く…小癪な」

 ウォーダ軍の第二陣とは、キノッサ艦隊の後方に移動した、ミディルツの艦隊である。初手で突撃を仕掛けたミディルツ艦隊が、今度は後方からの艦砲射撃で、アザン・グラン軍主力左翼を拘束していたのだ。そこにウォーダ艦隊がBSI部隊を出撃させたとの報告が、続いて入って来た。

「おのれ…これがハーヴェンの手腕だというのか」

 基幹艦隊十二個もあるアザン・グランの主力部隊が、たった四個のウォーダ艦隊に翻弄されている。しかも四個のうち二個は後詰めらしく、まだ動いてもいない。

 するとその時、エヴァーキンの眼の前に通信ホログラムスクリーンが展開し、野太い声と共に、爬虫類系の焦げ茶色の鱗に覆われた、異星人の顔が現れた。

「BSI部隊が出て来たならむしろ好都合。俺がこの状況を覆して見せようぞ!」
 
 この爬虫類系異星人こそ、ネオターク・ジュロス=マガラン。トクルガル軍のあの変人天才パイロット、ティガカーツ=ホーンダートが対戦を望み、主君イェルサスにこの遠征への帯同を願い出た目的だった、モルンゴール星人武将である。

「俺と俺のBSI部隊が、敵のBSI部隊を迎え撃って押し返す。エヴァーキン殿は今のうちに態勢を立て直すがいい。これより出撃する!」

 それだけ告げてマガランは通信を切った。「エヴァーキン様」と呼び掛ける参謀に振り向いたエヴァーキンは、「うむ」と頷き、「ここはマガランに任せよう」と言葉を続ける。アザン・グラン軍の中でもマガランへの信頼度は、ずば抜けている事を示していた。



「マガランだ、緊急発進急げ。敵のBSI部隊が、ここへ辿り着く前に出る!」

 アザン・グラン軍の宇宙空母『バンダ・ハンダー』の、射出機に入るマガランが強い口調で配下の全BSI部隊へ命じる。マガランの乗る機体はモルンゴール帝国製のBSHO『キョウマ』。銀河皇国のBSIユニットに比べると、ふた回りほども大型の機体だ。ごつごつとした印象の外観は、パワー重視の機体である事を窺わせる。

 やや前屈みの姿勢で射出機の中へ入った、『キョウマ』の背後でハッチが閉じられ、瞬時に機内の空気が抜かれる。それとほぼ同時に前方のハッチが開き、一直線に並んだ誘導灯が白い光で点灯。機体をその先に見えている宇宙空間へ射出した。

「こちらマガラン。いま宇宙へ出た。“インヴィンシブル中隊”は、我のもとへ集まれ!」

 そのマガランの通信に、直卒する“インヴィンシブル中隊”二十三機が集合し、整然とした陣形を組む。二十三機すべてがアザン・グラン軍の主力BSIユニットである、『ハヤテ』の親衛隊仕様機だ。これだけでも通常編制のBSIユニット中隊とは、桁違いの戦闘力だと知れる。

 戦術状況ホログラムを起動したマガランは、対するウォーダ軍BSI部隊の状況を確認した。相手は対艦攻撃部隊と、それを護衛する直掩隊に分かれている。そしてその直掩隊の一部は、すでにこちら側の先行迎撃部隊と、交戦中のようである。

「ふぅむ…なるほど、敵にもいい動きをしている連中がいるな」

 舌なめずりでもせんばかりの表情で、ホログラムを眺めたマガランは、部下達に命じた。逆襲の開始である。

「よし。敵の主力と思われる、BSIの中央集団を撃破する。俺に続け!」

 そしてマガランが『キョウマ』の操縦桿を向けたその先、ウォーダ軍BSI中央集団では、先行迎撃部隊と接触したフェルデーサ=ゼノンゴークらの、“リベリオン中隊”が奮戦中であった………





▶#12につづく
 
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