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第6話:駆け巡る波乱
#00
しおりを挟む「我等に、謀叛を起こせと?」
オ・ワーリ宙域モルザン星系、モルザン=ウォーダ家の本拠地モルゼナ城では、再度城を訪れたカルツェ・ジュ=ウォーダの側近、クラード=トゥズークの示した案に、筆頭家老のジェヴェット星人シゴア=ツォルドは眉をひそめた。
「その通りにございます」
ニタリと笑みを零すクラード。両者は先日、ノヴァルナを廃してカルツェを新たなキオ・スー家の当主に据える事に対し、共闘を了解した間柄である。
モルザン=ウォーダ家は前当主のヴァルツが急死して、その座を継いだ嫡男のツヴァールはまだ十二歳。実質的に政務は筆頭家老のツォルドが取り仕切っていた。つまり事実上、モルザン=ウォーダ家を支配しているのはツォルドという事だ。
「それがノヴァルナ殿を討つ、方策なのか?」
いま一つ飲み込めない様子のツォルド。頷いたクラードは計画書のホログラムを自参したタブレットの上に浮かべて、自分達の企みを告げた。
「モルザン星系の叛乱に対し、ノヴァルナ様は鎮圧の軍勢を差し向けるでしょう。ただ直率の第1艦隊はともかく、今回のミノネリラ遠征に参加した艦隊は整備が必要。したがって、鎮圧にはカルツェ様の第2艦隊が同行するは必至。そこでノヴァルナ様の艦隊を、我等の第2艦隊が背後から攻撃。貴方様方のモルザン艦隊と挟み撃ちにして、仕留める算段にございます」
「ほう…」
ようやく飲み込めた様子のツォルドは、双眸をギラリと輝かせた。
「無論、今回の遠征で、ノヴァルナ様がギルターツ殿の手に掛かるようであれば、それに越したことはないのですが」
半分以上本気でそう言うクラードに、ツォルドは「ふん…」と鼻を鳴らす。生前の前当主ヴァルツと行動を共にしていたこのジェヴェット星人は、ノヴァルナに対して不本意で批判的であっても、その実力は認めていた。そうであれば、余程の事がない限り、あの傍若無人な若造が死ぬはずがない。
「いや…面白そうな話ですな。ギルターツ殿にノヴァルナ様が、斃されるかどうかは別として、仔細、打ち合わせを致すとしましょう」
ニタリと笑みを浮かべるツォルド。ドゥ・ザン=サイドゥの救援のため、ミノネリラ宙域へ遠征したノヴァルナが、激闘を繰り広げていたこの時点でも、策動する者達の暗躍は、留まるところを知らなかった………
▶#01につづく
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