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第11話:銀河道中風雲児
#00
しおりを挟むトーミ/スルガルム宙域星大名イマーガラ家
本拠地、スーン・プーラス城―――
謁見の間となっている大広間に、イマーガラ家の重臣達が居並ぶ。左右に分かれた彼等の中央を、丸顔をした一人の少年が二人の側近を従えて進み出て来る。ミ・ガーワ宙域星大名トクルガル家の若き当主、イェルサス=トクルガルだ。
齢十七歳となっていた紫色の軍装を身に纏ったイェルサスは、トクルガル家重臣のコーセス=キルバラッサとテューヨ=オークボランと共に、玉座に腰を下ろしたギィゲルトの前で片膝をつき、深く頭を下げる。
「頭を上げられよ、トクルガル殿」
ギィゲルトの傍らに立つ女性宰相のシェイヤ=サヒナンが、事務的な口調で告げると、イェルサスはゆっくりと頭を上げ、顔をギィゲルトに向けた。人質としてノヴァルナのもとにいた頃のようにその丸顔は温厚そうだが、瞳の輝きには武人としての力強さが見られるようになっている。
「長きにわたるミ・ガーワ宙域の平定戦、ご苦労であった」
ギィゲルトはよく太った体を肘置きに置いた片腕で支え。鷹揚に言った。
「ありがとうございます。これもみな御家のご厚情の賜物にて」
そう応えるイェルサスはおよそ二年前、人質となっていたナグヤ=ウォーダ家から解放され、イマーガラ家の保護下に入っていた。
そして星大名家当主としての教育を受ける一方、イマーガラ家当主ギィゲルト・ジヴ=イマーガラの命令と支援を受け、本来のトクルガル家領域ミ・ガーワ宙域内で、敵対的な態度をとっていた勢力の討伐戦を行っていたのである。
その結果イェルサスは、母方の実家である独立管領ミズンノッド家を除いて、主立った敵対勢力の平定に成功していた。これには豊富な戦闘経験と、精強を持って鳴るトクルガル家臣団の、イェルサスに対する忠誠心に依るところも大きい。
ギィゲルトは鈍重そうな見た目と違い、戦国屈指の星大名であった。その器量は正しくイェルサスの能力を評価している。
「この二年で…良い眼になったのぅ、イェルサス」
右手に握る扇を、僅かにパチリ…パチリと開閉してもて遊ぶギィゲルトに、イェルサスは硬い口調で「ありがたきお言葉…」と礼を返す。
「このまま精進を続けるがよい。我が眼鏡に適うまでになった暁には、其方を我がイマーガラの一門に加え、ミ・ガーワ宙域の統治を任せてやるがゆえ…」
上機嫌でさらに言葉を進めたギィゲルトに、イェルサスは何を思うか…その本心を窺わさせない硬い表情のまま、再び頭を深く下げて告げた。
「ご期待に沿えるよう、今後も努力して参ります…」
▶#01につづく
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