乙女ゲームにこんな設定いらなくない？〜BL（受）の声優は乙女ゲームに転生する（泣）〜改

第一章 あれ？腐った呪いなの？

さん

くる、しい……やばい。
目の前が暗く……嫌だ！
死にたくない！　
もう！

あれ？
デジャヴ？

「ぐぅ……。」

イ   ヤ   ダ   ！！！！！

そう思った瞬間目の裏がスパークして、身体中からなんだかわからないけど熱いものが駆け巡った。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ！」

と言う叫び声とともに、首が楽になり呼吸がしやすくなる。
窒息寸前で目の前がチカチカしている。
心臓が頭にもあるみたいに、頭からもドックンドックンと音がする。

「拘束しろっ！」

周りがバタバタと騒がしい。

「よかった……ハノエル……。」
「痛いところは？」

誰？かわからないが、優しい声と手のひらが背中に置かれる。

「ハノエル？大丈夫かい？」
「母さま！ハノエルの様子がっ！」
「ハノエル、ハノエル！」

しかし、俺はそのまま意識を失ったらしい。
そこからの記憶はない。



目がさめると知らない天井が見えた。

「ちらないてんじょおだ。」

お約束はやってみた。
うん？
しかし、マジでしらないっすよ？
いったいここどこ？

って、がぁ、頭痛い！
と思った瞬間、ガーーーーーー！と走馬灯のように、二つ分の記憶が頭の中を駆け巡った。

どうやら、福良春樹二十歳は、ハノエル・アドレイドとして生まれ変わったらしい。

そして、思う……。
最低最悪だということを。

なんでか？

そんなん決まっている！

さて、みなさんは俺がやった最後のお仕事を覚えてますか？

誰に俺は話しかけているんだ。
まあ、俺のくせみたいなもので脳内会話をよくするんだよねー。延々と頭で話しちゃうんだ。

で。

そう……乙女ゲームのお仕事！ですよ。
その唯一、腐った設定……の受け……名をハノエル・アドレイドという……。
オワカリイタダケタダロウカ？

つ    ま    り

俺は、あのゲームの役に生まれ変わってしまったわけだ。

いやー！
嘘だといってー！

と何度思い叫んだことか！
そのたびに、溺愛してくれている家族が泣きながら宥めるのさ。
罪悪感半端ないよ。
だから、とりあえずは叫ぶのはやめた。
だって、事実は変わらないんだから。
兄も姉も……あのビジュアルを幼くした姿で名前もドンピシャだし？
叫び声は、俺の心の中に取り止めることにした。

現在、ハノエルは5歳。
5歳で殺されそうになるなんて、酷い。
裏設定を考えたらあり得るんだけど……。
この家は公爵家。
そう、一応王族の分家的な家だ。
でもねー。
お金大好きな家なんだよねー。だから、稼ぎ方が半端ないわけ。
別に悪いことはあまりしていないよ？
……ギリ、グレイゾーンってやつ。
ただ、暗殺部隊も率いてるから……印象は悪い。そもそも、王家に仇なすものを秘密裏に処分するわけだからさ……貴族からしたら嫌な存在。
まあ、俗に言う悪役一家的な存在の理由がこれ。
ここまでが、一応のゲーム裏設定ってやつ。
で、ハノエル俺の記憶からの設定ね？
親はすごく優しい。
家業的なことから、一家はかなり周りから悪く見られるのを気にして……子供達を溺愛。
兄は、公爵家跡取り。
仕事がら非道でいなくてはならないから、やはり外では冷たい存在になるべく自分を律している。
実際には極甘兄。
姉は……家族から甘やかされ放題ってのと、周りからの評価にムカついているのもあって……周りに高慢ちきな態度を取る令嬢になっている。
でも、家族愛はすっごい。
で、もちろん御二方共に魔力も強いわけですよ。
さらに、一番下の俺を家族総出で溺愛するんだよね……。

話戻すね？
だから、一番下の家族の『宝俺』を殺したりして、恨みを晴らすなんて考えるやつも多いんだけど。
それだけじゃ、終わらないんだよね。
ゲームにはこんな設定なかったはずなんだけどっ、でも、あんな目に遭うってことはあり得るのかもしれない。
納得したくない事実。
つまりね、このハノエルなんだけど……ものすごい愛され体質らしくて……道端歩くだけで、人攫いに合っちゃうみたい。
子供の頃から難儀な子や～。
って、俺やん。
まだ、5歳だというのに……誘拐未遂50回って……。いたずら未遂なんて、あなた！100件以上だよ？実際にされてもいるみたい。
流石に幼いから『本番』まではされていないけど……。
ありえなくない？
この世界、はっきり言って腐ってるよね！
ハノエル自身はこれっぽっちもいたずらされてるなんておもってないわけ。
もうね、赤面するくらい純真無垢なの！
俺みたいな俗物が彼になってしまって良かったんだろうか？
もう、絶対に守ってみせるよ！ハノエルの貞操は！って俺だもの。
そもそも、首を絞められていた原因なんですけどね？
まあ、この家に恨みがあって恨みを返すため下人として雇用されました。
ちなみに下人は、メイドや執事、従者とはちがう。あくまで外での下働き。
主人達の前に出ることもない。
しかーし！
可愛く優しく純真無垢なハノエルは、下人にも優しくて……目が合えば極上の天使スマイルで挨拶しちゃうわけ。
で、それを勘違いした馬鹿野郎がハノエルを誘拐しようとした。
まあ、見事に見つかって、俺を道連れに死ぬつもりだったってやつ。
そこで、なぜか『福良春樹俺』の記憶が呼び覚まされた。というわけですよ。
死の恐怖から魔力が爆発したらしい。

ま  じ  か？

もうね？
俺は決めたよ。
この変態ホイホイなハノエルをスーパーイケメンに育て、『腐』のフラグことごとく潰してやんよ！

明るい未来のために！

明るい男女幸せ交際に俺は絶対に辿りついてやるぜ！