乙女ゲームにこんな設定いらなくない?〜BL(受)の声優は乙女ゲームに転生する(泣)〜改

十夜海

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第四章 ありえないよね?不憫なのはハノエルだけじゃないのかも・・・ 

ヒャクジュウニ

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目覚めて、兄がいろいろと……本当にいろんなことを怒濤のように話された……。
はっきり言って脳味噌に納まりきらないです。

まずだ。
何かの力で癒されたこと。何の力かはわからないそう。
けれど、傷つけられすぎて……回復に体力が根こそぎ奪われたこと。

それらを兄らしき金髪の天使が言った。
うん、そうなんだよ。
神石先輩の声を俺が間違えるはずはないんだけど……自信がなくなるほど、見た目が変化しているんだよ……。

声が出ないから……ダンマリなんだけど……さっきまでの悲壮感が飛んでいってしまうくらいの衝撃があるんだよ?
……兄は常々『マジ天使』って思っていたけど、本当マジに天使だったよ。
そう、まるで宗教画の天使長様のようだ!
大天使ミカエルだよ?
尊いね。
うん。
ちなみにだけど?
たぶん?俺の背中の羽は今は出ていない……と思う。
背に違和感がないから。
仰向けだしい?ってくらいに。
兄のは『翼』という形容が似合うくらいでかい翼。
そして、金髪に変わってるし。

顔はちゃんと兄様カレイドで、声も兄様神石先輩で……何度も言ってしまうのは、かなり俺も混乱中。
脳も心もついてきていない。

「ハル、大丈夫?喋るのも辛い?」

声が出なくなったことに兄は気づいてないみたい。
ふわりと優しく手が近づいてきたことに、ビクリと身が竦む。

「ハル、やっぱり私の姿が……怖い?」

パクパクと口を開けるが、声はやっぱり出てこない。
でも、兄が怖いんじゃない。
だから首を振った。
気持ち的にはブンブンと否定の首振りをした……つもりだ。
実際には、ふるふると本当にかすかにしか動かなくて。

「…よかった。ハルに嫌われるのが一番怖い。」

ぎくりと思う。

兄も?

でも、見た目なんてただの器だもの。
だから、中身はハノエルのカッコいい、優しい兄様に違いない。
それを嫌うなんてあり得ない。
でも、ハノエルは見た目だけじゃないんだよ。
春樹から……きっと内面さえ汚くて、醜くて……。
妹にも父にも守られて。
義父が必要以上に俺に触れなかったのは、たぶん春樹の過去を知ってたからかもしれない。
仲良くしてくれていたけど、内心は気持ち悪く思っていたのかもしれない。

だって、生理的嫌悪はどうしょうもないでしょう?


「ハル?喉が痛いの?」

喉に痛みはないのだけど。
うん、本当に『痛い』って思う場所はどこもない。
体力がなくなったってことは、『魔法』で癒されたんだろうか?

ハノエル場合、緊急時(ほぼ命の危険的な)以外で癒し魔法は使わないのに……。

ああ、そうか。
内臓だって………ヒッ。
考えると息が止まりそうになる。
嗚咽をあげられず、ボロボロと涙が溢れてくる。

ハノエルの胎が……汚い!
汚い!汚い!
嫌、嫌……なぜ……俺は生きてるの?

「は、ハル!大丈夫だから。だから、抱きしめていい?」

抱きしめられたい!

でも、無理なの。嫌なの。
ダメなの……。
綺麗な兄様てんしを汚してしまうの!
そしたら……ハノエルはさらに許すことができなくなる。
なにを?
自分を……。
いや、もうすでに許せないから。

首を振ったのに無視された。

気づかなかっただけがもしれない?

腕に抱かれて、手で突っ張って逃げたいのに、手も体も動かなくて。
さらに涙が溢れる。

だから、心が先に折れた。

――いーじゃん。今くらい。逃げらんないんだもん。

いーじゃん、今だけ、今だけなんだから。
最後くらいいーじゃん。
って。


うん、体が動かないからしょうがないって……今だけ甘受しよう。

自分に甘すぎるけど。
『魔法で逃げれば?』
意地悪な春樹が顔を見せたけど、その言葉には蓋をした。
だって、もう兄に触れられるのは最後かもしれないじゃん。

「こら、何をしている。ハルは、絶対安静だと……泣かせるな。まったく、体力が今絶望的なのわかってるだろう?」

アズリアの怒った声。

「ハルちゃん、気がついたわね?」

ころっと口調も変えて、ハノエルに話しかけてきた。
でも、兄様の翼が邪魔をして姿は見えない。
だって、動けないから。

「ハルちゃん?」

普段の優しく諭すときのアズリアのオネエな言葉遣い。
だから……、前と同じって思いたい。
でも、記憶は消えてくれない。
あいつに穿たれて悦んだ自分が許せない。
そして、もしも……考えたくないけど、もしも胎に赤ちゃんができていたら?
そう考えたら怖くて恐くてたまらない。
声が出たら、アズリアに兄を離してもらうように言えるのに。
言えないから、声が出ないからと言い訳する。

……………兄様大好き……………さよならだけど。」

でも、ゲームが領地に返してくれないかもしれない。
兄様を見続けるのがつらい。
兄様に恋人ができるのがつらい。

帰りたい。

どこに?

わからない。

「ハルちゃん?ねえ、カレイドちゃん。ちょっと離してくれない?ハルちゃんの様子が変だわ。」
「えっ?」

兄が抱き上げたままで、アズリアに俺を向ける。
離す気はないとばかりに。
それを姑息にも嬉しく思ってしまうんだ……なんてなんて……汚い考えなんだろう。
自分のことしか考えられないなんて。

「ハルちゃん?ハノエルちゃん?痛い場所ある?」
……ない

口がそう言葉にしても、音は出ない。

「聞こえない?……ハルちゃん声だせる?」
……でない。」

パクパクとだけ動く口。

「ハルちゃん。喉痛い?」

小さく首をふる。

「痛くないけど、声がでない?」

コクリと頷く。

「ハル、声がでないのか?」

曖昧に微笑んで肯定した。

「そんな悲しい顔しないで。あーってしてみて?」

悲しい顔?
そんなつもりはないのに。
でも、言う通りあーっと口を開いた。
でも、あまり大きくは開けなかった。
どうやら表情筋も疲れているのかもしれないね。

「うーん?赤くはないわね。そのまま声でる?」

はあっと、息が出ただけだ。
声帯は仕事をするのを放棄したようだ。
自分がどうやって声を出していたのかさえ、わからなくなった。

「ちょっと診るわね?サーチ。」

診察の魔法をかけられる。

「んー?私の魔力をすんなり受け入れられたわね?
でも、悪いところはないわ。」

そうだった。
俺は兄の魔力が混ざらないと恐怖を感じるんだった。

でも、そんなこと烏滸がましいよね?

「……体力的なこともあるのかもしれないわね。
まあ、ゆっくり治しましょう?
まずはよく眠って、食べて、体力を回復しましょうね?
あ、そうそう、カレイドちゃん。
お願いがあるのよ。」
「…わかりました。」
「ハルちゃん、ちょっと、お兄様を借りるわね?」

コクリと頷くと、兄が頭を撫でてから俺をベッドに下ろした。
撫でられた時に、ぴくりと体が竦んでしまったのは気がつかれただろうか?

でも、俺はたぶん兄が一番怖いかもしれない。
嫌われたくない、でも『嫌い』って言われるかもしれない。

それが、なによりも一番怖い。

目を閉じると確かに体力は無くなっているんだろうと思えた。
ふうと力が抜けた。
そして。

すぐに深い眠りに落ちたのだった。













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