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第四章 ありえないよね?不憫なのはハノエルだけじゃないのかも・・・ 

ヒャクジュウヨン

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Side カレイド

アズリアに遠回しに話があると言われた。
たぶん、ハルのことだろう。
まだ、セバスのことも伝えていないのに。

もし、本当にセバスに守華ちゃんがいたのだったら?
いや、魂が守華ちゃんだったならセバスは目覚めないのかもしれない。

それに本当にハノエルは春樹なのか?
もし、そうなら絶対に失えない。
失いたくない。
それはハノエルだったとしても、春樹だったとしても!
そう、俺が『カレイド』でも『神石玲かみいしれい』としてもと同じように。

「カレイドちゃん……、ちょっと真面目にお話しよ?
ハルちゃん……たぶんなんだけど………心因性の失語症だと思うの。
声帯にも喉にも……もちろん肺や腹部にも異常はないのだもの。
性行為の後遺症みたいなものも……もちろんないのよ?
ただ、精神的なものは……ね。
だから、声が出ないのかもしれない。
それに……。
……癒し魔法なんてものじゃないのよ?あの治り方は。
これもたぶんなのだけど、『再生魔法』や『再構築魔法生まれ変わり魔法』『転生魔法』みたいに。
そんな夢物語の魔法なんてあるわけないって、思うけど……それ以外まったく考えられないのよ……だって……薬のせいで虚弱体質に磨きがかかっていたハルちゃんの体……生まれた頃のの虚弱体質になっているんだもの。
つまり、生まれつきの体質までは改善されてはいないのだけど……薬による影響は何もなくなったの。
……だから、わたしの魔力も受け入れられたんじゃないかしら?
だから声は……体の機能からじゃないってことだとになるわ。
一時的なものならいいのだけども。」
「……ずっとの可能性も?」
「ええ、あるわね。心因性なら……難しいわ。」

……ハルの身体が戻ったことは喜ばしいが、『声』を失うなんて。
ハルの甘い声は好きだったんだが。
ハルがいるならいい。
『春樹』の声が聞けないのは残念ではあるけどね。
ただ、ハルが春樹ならきっとショックは大きいだろう。
声優として頑張っていたんだ。
『声』に対する思い入れは、人一倍大きいはずだから。
でもきっと支えてみせる。
俺の全てをもって。

「それでも、ハルが生きているのが一番だから。」
「そうねえ。でも、体は癒されても心の傷は簡単にはいかないわ。
わかるでしょう?
先に貴方と結ばれたとはいえ、他の男に無理矢理暴行されたの。
どれだけ辛いか……貴方を愛していればいるほど、心情はかなり傷ついているの。
でも、それをケアできるのも貴方だけよ?カレイド。」
「ああ、もちろん。」
「あと、貴方の姿よね……。ハルちゃんはアザになってるからいいけど、それどうするの?」
「……休みが終わる前になんとかなればいいのですが。」
「でも、お休みは。」
「あと、3日程になります。」
「……3日……戻るかしら?」
「さあ?」
「そうよね。どうするの?」
「そうですね。休学でしょうか?」
「……最終手段ね。」
「はい。ですが、ハルの側に居れますからね。」

とにっこり笑った。

「……あんたは、そーゆー子よねえ。」

呆れたように言われたが、当たり前だ。
俺にとって一番はハルなのだから。
ハルが笑ってくれるなら、学校の一つや二つ。学年の一年や二年。
そもそも座学では何も学ぶことはないし、剣さえもレイズ伯父以外には負けたりしない。
魔法も……実際チートもいいところだ。まして、『魔王化』。
学校自体、俺には必要がない。
詰まるところ、学園を出たという肩書が必要なだけだ。

しかし……これは本当に『魔王化』なのだろうか?
確かに、思い出すのも胸糞悪いが……クリストファー苅野新一の『魔王化』は、正しく『魔王化』したと言えるかもしれない。
だが……なんだろうか?
この違和感というか、既視感デジャブ的な感じというか。
金色の天使になった自分に違和感があるのに既視感デジャブもある。
クリス…苅野の『魔王化』らしい天使にも既視感デジャブがあるのだ。
いったい、このゲームに何が起きてる?
いや、俺たちに何が起きてる?って感じか?

「まあ、いいわ。とにかく、ハルちゃんには気をつけて?なんだか、嫌な予感がするのよ。
なんていうか……『生』を諦めてる感じがして……。」
「死にたいと?」

ハルが思っているって言うのか!

「うーん、違うわ。……生きてはいるけど、心が全てを諦めてる感じ?がする。だから、気をつけて。
あの子、突拍子もないことをしてしまいそうだから。」
「わかった。絶対に一人にはしない。」
「そうね、でも、ほどほどにね?疲れすぎたら体力が回復しないのだから。」
「大丈夫。私だって馬鹿ではない。」
「本当に?」
「当たり前だ。」

ハルが体力を使うことなく、世話を焼こう。
しかし、色はともかく……翼というのは存外に邪魔なものだ。




アズリアと別れ、ハルのもとに。
沢山の話したいことも聞きたいこともある。
だが、今は無事なハルの安らかな寝顔を堪能しよう。
でも、キスくらいは許されるよな?

ハルの額と左右の頬に軽くキスをして、そして柔らかな唇に。
唇は、少し長く堪能させてもらったが……それぐらいは良しとしよう!

本当なら濃厚に……我慢!だ。



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