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レポ2〜明成と魔法〜

ふふふ、プチ家出決行!

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食事の後、部屋にこもる。
セディとフーリが一緒ではダメか?と聞いてきたが、それでは計画がだいなし。
今日は午後から仕事だと言ったので、午前中は寝るようにいった。
各自の部屋でね。
だって、三人の寝室じゃあ意味がないでしょう?
バレないようにプチ家出。

「じゃあ、アキは夜ご飯まではこもるね?」
「……一緒ではだめなのか?」
「アキが気になるもの。」
「邪魔をしないと言っても?」
「ごめんなさい。アキは一人になりたいの。」

家出のために。

「なら、その昼頃の軽食時には?」
「ごめんなさい。」
「いや、ただ、腹が減るのではないか?」

あんまり減らないけど……。
できるなら買い食いしたいんだよね。でも、お金ないからね。

「大丈夫、この前、王様にもらったお菓子摘むから。」

そう、お腹が空いたらお菓子を食べればいいじゃない?
おや、どこかの王妃のような言葉だね。
王様からねー、毎回毎回大量にお菓子が届くのですよ。
減らす?
無理。だって昼に出る軽食とは別に届くんだ……。
それも甘いのや甘いのや極甘いやつ。
空腹すぎて血糖値が下がった時に、いただくよ……それ以外はいいかな。
アキには甘すぎて。

「少しは減らさないと。お菓子屋さん開けちゃうもん。」

いや、もうすでにひらけんじゃないかな?ってくらいある。

「……わかった。今日はアキの気持ちを尊重する。だから、夜は……。」
「うん。一緒に寝ようね?」
「「もちろんだ。」」
「じゃ、夜に。」
「「わかった。」」

というわけで部屋に入ってロック。





――ただね?アキはこの時、二つの間違いというか……二つの事に気づけなかったんだ。
そのせいで大騒ぎを起こすことにも……。




さあ!
元気にプチ家出にいきましょう!
まずは、白猫さんにヘーンシン!
と着替えが済んだら某ライダー1号の変身ポーズを取る。という、お約束をこなして、いざ参る。

「んー、知らないところでも開くかなあ。でも街中にいきなりは変だよね?
庶民の町外れのだれもいないところで……治安の割と良いとこに!」

カチャリとドアを開けると、砂埃がうっすら風で舞い上がる……初めに入ってきた門から数メートル先の人目につかないところに、ドアが開いた。
塀にドアがある。んー?
もともとあったドアとくっついたの?
だれかいきなりアキの部屋に行っちゃわない?
で、開けようとしたら開かない。
どうやらロックされているみたい。
じゃ、入れない?
試しにアキの部屋へって念じて開けたら開いて繋がった。
ほー。
なら大丈夫そう。
つまりは、アキが考えて開けるとつながるみたい。
よかったですわ。 
じゃ、なんの憂いもなくなったことで……レッツゴーです。

街中を馬車で通ったけど、外は見えない(実際には乗ってる人が見えない)ようにしてたから、どんな世界観なのかは門しかわからない。
でも、服や門、城の感じから中世のヨーロッパ的な感じには見える。

門から中央に向かって行けばいいよね?
家がたくさん見えてるし。
で、歩くこと15分くらいの感覚。
おや?ようやく一番近い建物についた。
お菓子もサンドイッチも人もでかいけど、建物も大きいんだね。
近いと思ったら遠近感が狂うくらい大きい建物でした。
何というか、日本で二階建ての家の高さがここだと平屋くらい。
二階の部分は低いのか……二階建てになると平屋が二段よりは低い気がする。
まあ、気がするだけですがね。
建物自体決まりがあるのかわからないけど、見たとこ最高で二階までみたい。殆どが平屋だ。
たぶん?二階建てっぽいのはベッドみたいな絵とかがついてるから宿屋的なのかな。
あ、小さく字があった。
うん、酒と泊まりの店って書いてあった。
絵だけのところもあるし、もしかしたら識字率はあまり高くないのかな?
まあ、よくある話ってやつ?
貴族や商人は読めるけど、庶民はあんまり必要ない感じ?
でも、数字に強くないと騙されやすくなるんじゃないのかな。
街中を進むにつれ、人も増えてきた。
これが時間的なものか、場所的なものか来たばかりのアキにはわからない。
物珍しい店が多い。
そんな中ついつい、ケモ耳星人の筋肉を分析してしまう。
そのため、キョロキョロと辺りを見てしまう。
ほっほう、マジで筋肉パラダイスだね。

「こんにちは。」

後ろから声をかけられる。
振り返ると……巨人の股ぐらしか見えなかった。
失礼……。
アキはどうやら、この人の腰くらいまでしか身長が無いようです。
見上げると……熊だ。
これはもう、グリズリーを超えている。
セディやフーリ、リアムくんで大きさに慣れたつもりだったけど……とてもそんなもんじゃない。
筋肉達磨のように硬そうな筋肉におおわれて、体つきは熊だ。
赤茶色の髪は短く刈られていて、赤茶色の丸い耳だ。
顔はイカツイけど、漢って感じ。でも垂れ気味ね目が人の良さそうな熊さんを演出している。

「こんにちは?」
「どうしたね?迷い子か?」
「あ……僕は迷い子じゃないよ?」

アキと言いそうになったが、名前は名乗らない方がいいかな?

「そうか。わしはキザラ。
ああ。警戒しないでもいい。今日は非番だが、この街の警備兵でもある。迷い子なら親を一緒に探すぞ。」
「ふーん。でも、大丈夫だよ。迷い子じゃないから。」
「しかし……小さな子供が一人じゃ危ないよ。」
「大丈夫。強いから。」
「ははは。」

笑って相手にしないかと思ったら、いきなりアキを捕まえようとしたので、その手を軽くかわす。

「ほう?」

ならという感じでさらに手を出してきたので、軽く手合わせのようになってしまった。
やはり、アキはスピードが超増し増しだ。
熊おじはやっているうちに、楽しくなったのか、笑いながらも続ける。
しかし、アキの時間は有限だ。しつこいので、逃げようかと思った。その時。

「いやー、まいった。すごいなお嬢ちゃんは。」

どうやら終了らしい。
しかし、なぜに『お嬢ちゃん』なのか?
納得のいかないアキなのでした。








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