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第一章 マジ異世界ですね
No.4
しおりを挟む「……すまなかった。大きな声を上げて。」
ハリーという男が、私たちの様子に頭を下げてきた。
心配しての怒鳴り声だというのは、わかったんだ。でも、体にこびりついた恐怖は、拭えないんだよね……理屈じゃないから。
「ごめんな。でも、ハリーは悪いやつじゃないからさ。な?ここは夜になるとさらに危ないから、もう、行こう?な?」
「……はい。ごめんね。ショウ。」
「あたちも。ちょか、ごめんね?ちょれと、ちんぱいちてくれたのに、びっくりちて、ごめんなちゃい。」
また、傷つけてしまって奏歌ごめんね。
ハリーという男は、全く気にせず。
こっちもデカイ声で悪かったなとまた謝ってくれた。
やはり、この人たちは、人がいいらしい。
そしてまたハリーという男に抱き上げられてしまった。やはり、靴も履かずに歩くのは危険だということだ。
たまたま、今までは運がよかったんだって言われた。それくらい、危険度が高い場所らしいのだ。
奏歌は、ハロルドという男に肩を抱かれて歩き出す。
肩を抱くのはどうかと……でも、木の根元に躓いた奏歌をみて、目をつぶってやった。
ハロルド、普段なら私は許さんぞ?今だけだぞ。
結構、歩いた(抱っこだけど)ところで、いきなりひらけた場所に出た。
これが所謂『街道』というやつかな?
ハロルドとハリー、それぞれが口笛を吹くと馬が走ってくるではないか!
すごい!犬みたいだ。
でも、デカイし……目が三つ。真ん中にも目があるよーーー。
さすがに異世界だあ。三つ目馬だ。
『お前、誰?』
「え?」
すげー、馬が喋るのか!さっすが、ファンタジーだな!
『お前、なんでご主人に抱かれてる?』
「いや、まって。だっこって、いってよ。ちょのいいかたは、ごかいをまねきかねにゃいよ。」
『お前、俺の声がわかるのか?』
「え?ちゃべってんじゃん。」
「ま、ショウ。だれと喋ってるの?」
「え?ちょか、わかんにゃいの?おんまちゃんがちゃべってるよ?」
「いやいや。なんで、話してるの?ひひんとか、ブルルしかわかんないよ!それとも、聞こえてないの私だけ?」
「いや、俺たちにもわからん。というか、妹ちゃんはロブの言葉わかるのか?」
「ん?みんなは、わかんにゃい?」
みんながウンウンと頷く。ふと見ると私を抱っこしているハリーも頷いている。
ふむ。……あれ?なんで?
『お前、変だな!』
「えーーー!」
馬にまで変呼ばわりかよ……。確かに変わってるとよく言われたけどさ……。
「お前の妹は、その……。」
「うん、少し変わってるの。」
娘ー!おまえもか!
もう、いいよー。ふーんだ。
いじけてるあいだに、ハリーは私を抱いたままで、馬にヒラリと跨る。
すげーな。……いや、すごいな。うん。
やばいやばい。娘の言葉遣いを云々言えません。
ハロルドは、娘を抱き上げて馬に乗せると荷物を自分のバッグに入れた。
……なぜ、あの小さなバッグにあのデカイリュックが……あ、空間収納とか?マジックバッグ?イベントリだっけ?あ、確認すればよかった。空間収あったかもなのに。
ま、仕方ないか。後で確認しよう。
私を前に跨がせて、後ろから片手で支えられる……少し、トラウマが蘇りかけたが頭を振ってどこかに飛ばした。
ハリーは、器用に片手で馬を操る。見るとハロルドも同じように娘にしていた。ふむ。あちらはなんだかカッコいい。
すまんな、ハリー。幼女で。あれ?ハリーのがガタイがいいんだから、逆のが安定じゃない?だって、娘は、158センチ。あそうです。私は160センチありましたよ、身長。
今は……100センチはあるよね?あれ?ない可能性あるかな。
娘は小さかったから、3歳の時83センチ……。やばい?100センチはありますように!
で、馬で揺られると……ねむい。
後ろに大木のような……おっちゃん(私より若いか?)の背もたれと……存外に体が、冷えていたのか、今は暖かくて……。
zzz………はっ!
やばかった。寝るところ………。
あれ?一瞬でついた。
「……よく寝れたな?」
あ、ははやっぱり……寝てしまったらしい。
まあ、ほんの少しの時間らしいけど。とはいえ、寝ていたなら一瞬で着くはずだな。だって、夜寝ると一瞬で朝になるもんね。
街道からうっすら街っぽいの見えていたもんね。だからそんなに長くないのはわかるけどさ。
「ちゅいません。」
「いや……。かわい……ごほっ、ごほっ、大丈夫だ。降りるぞ。」
風邪かね?でも、着いてよかった。
「あーい!」
「はい、ソカ。荷物。」
「ありがとうございます。」
あれ?なんか、仲良いねえ。でも、ハロルドや娘はやらんよ?
少しだけ、気を許せたのかもね。
「これからどーするの?」
「んー、とりあえずはギルドで登録ってできますかね?」
うんうん。何せ、お金は前の世界のしかないしね。部屋借りるのも難しい。なんか、金目のもの……ふと首にかけたままのものが。
「あ、ねーこれ、売れる?」
わたし、真珠のネックレスしてたんだったよ。これならどう?一応、天然だよ。小さいけど。
「ん?マールか?これならかなりの金額だぞ。」
「じゃ、売れる?」
「ギルドなら正規の金額で引き取る筈だ。ただ、バラして一粒か二粒にしろ。」
「わかった。」
ハリーが見てからアドバイスをくれた。娘に自分の荷物からソーイングセットをだしてもらい、ハサミで切る。で、巾着にパラパラといれて。
四粒だして、一粒ずつ二人に渡した。
「お礼でしゅ。ありがと。」
「いやいや、こんなのもらえないって。」
「でもう、これちかないち。」
「しかし……。じゃ、とりあえず、護衛してやる。な?宿も必要だしさ。じゃ、一緒にギルドに行くぞ。」
「ありがとうございます。ショウ、一緒に行ってくれるって。」
「うん、ありあと。」
ぺこりと頭を下げると、またハリーが、私を抱き上げる。
「先に依頼品を届けたいから、ギルドに行く。靴は後になるからな。馬はここで預けるし。」
どうやら、馬で直にはギルドに、行かないらしい。
なんだか、牧場みたいなとこに馬を離した。
『じゃあな?チビ!』
「ちびじゃにゃい!ちょう!」
『ん。わかったよ、ちびっ子!』
「きー!」
笑いながら走っていった。馬も笑うんだなあ。
「ま、ショウ。また、馬と話したの?」
「だって、ちびっていった!」
「ククク……。気に入られたんだな。」
「うーーー。」
「さて、行こう。」
そう言えば、二人とも私たちのヘンテコな姿に何も言わないなあ。
わたしなんて体操着だし。娘はブラウスにベスト。スカート下にはジャージだよ?わたしなんて靴も履いてないし。真っ黒……緑に染まった靴下だよ?
ただ、娘はチロチロ見られているけど、二人がついてるからかな?見られるだけだ。
でも、嫌な感じだ。気をつけてやらねば。
街並みは、うーん。やっぱり、ゲームとかの中世くらいかなあ、もうすこしだけ近代化?
あの、昔、小公女セ◯ラってアニメあったじゃない?それの市場ってわかる?そんな感じの市場とか、お店。
街灯もあるけどランプみたいな感じで。電気はなさそう。
でも、魔法がある世界でしょう?二人の剣もデカイし。
ハリーのなんか、わたしよりデカイんだよ!まあ、私を軽々だっこっつーのもわかるわ。片手で楽々だもん。いわゆる子供だっこね。
で、街並みを堪能しつつ着きました。ちなみに、娘に色々とハロルドは話しかけていましたが、娘は微妙頷いてはいるが。なんだか静かだ。なんでかな?割と明るい子なんだけどな。それにさっきは仲よさげだったじゃんか!
なんか、気もそぞろ的?
周りのせいかな?
私は元々はふつうに喋るんだけども、喋るの疲れるんだよね。この体。
で、ハリーはあまり喋んないしね。
ハロルド一人が喋ってる感じ。
独り言みたいにみえて、すまなんだ(合掌)。
「ここだ。」
ホーーーー!剣に馬?のマークがギルドのマークか!カッコいい!
ギィーっとすこし重い感じの扉を開けると……デカイしムサイし、クサイ!クーサーイ!
思わず、私も娘も鼻と口を手で覆ってしまった。
あ、女剣士もいる!
カッコいいけど……大きすぎない?
海外のバレーボール選手いるじゃない?男の人みたいな大きくて、かっこいい感じの。そんな感じなんだけど、違うのはオッパイバイーンなんだけど……ガタイもいいんだよ、ジャンプしたら床が抜けてしまうわ!ってくらいに。
地球ならば、男性よりたくましい!
しかーし、ここにいる男(男だよね?)は、その上を行く。体つきはゴリラさん並み。でも、上にもデカイ。
ハロルドは小さめになるなあ。
ハリーですら普通だ。皆ゴリゴリムキムキマッチョ!
ゴリマッチョの上!だよ。
「なんだ?ハリー、どこで攫った?」
「へー、黒髪の幼女なんて……高いだろ?」
「いやいや。おりゃあ、どっかの女孕ませたに100クルーだ。」
「バカ言ってんじゃないわよ!女を簡単に買う?なんて言ったやつ、剣のサビにしてやるよ?」
「……じょ、冗談じゃねーかよ。」
「ちゅげっ。」
「ま、ショウも言葉悪いよね……。」
「あ、ごめっ。」
「まあ、わかるけどさ。」
だよね?思わず出ちゃったもんよ。カッコいいよね!憧れちゃうくらい。
「ふふ、ようこそ。マレッツの街へ。初めましてよね?」
ウンウンと頷く。
「原始の森にいたんだ。どうも、置き去りにされたらしい。」
「はあ?子供二人を?」
「あー、片方は成人寸前……子供であってるか。」
「ひどい!あんなとこに!」
「ウギュっ。」
「あ、あ、あ、ちょか、つぶえちゃうよー!」
「ラナン、離してやれ。お前の力じゃ潰れちまう。」
「あ、ごめん、ごめん。」
ラナンという女剣士が、奏歌を抱きしめたのだ。ハリーが止めなきゃ、奏歌は潰れてしまうとこだったよ。
「で、依頼は?」
カウンターからロマンスグレーだが、ゴリマッチョのおっちゃんが声をかけてきた。
……この世界は『ゴリゴリマッチョ』ばかりなんだろうか。
私はできたらイケメンがみたい。
細マッチョくらいでいいんですがね?
娘もガリマッチョの方が好きだと思うんだよね。
「ああ、すまん。ギルマス。これでオッケーだろ?」
「おう、さすがだな。仕事が早い。」
「でな、この二人がギルド登録したいと。」
「ほーー?二人って……そのちびっこいのもか?」
「ちびっこはよけいだ!あたちとちょかをとうろく、ちて!」
「……本気か?」
「ちょうだよ。だ、って、おかねにゃいし。あ、あ、これって、うれる?」
コロリと真珠を渡す。
「ほう、マールか。今なら10000というところだな。」
「ふたちゅ。」
「なら20000だ。ギルドカードを作れば中に入れておけるぞ?」
「どーゆこと?」
「つまりな……。」
つまり、ギルドカードに入れておくと。どこでも使えるマネーカードにもできるらしい。クレジットカードみたいなものかと思ったら、どちらかというとn⚫︎n⚫︎coやW◯ONのようなものらしい。つまり、入ってるお金しか使えないわけ。
でも、勝手に他人のは使えないから防犯にはもってこいみたいだ。
じゃあ、お願いしますと、早速カードを作ることに。
まずは娘の奏歌から。
「んじゃ、こいつに手をかざせ。」
ピコンピコンとなったらカードが出てきた。おー、素晴らしい。
さっすが異世界だね!
「ほんとに、お嬢ちゃんもやるのか?」
「もちろんよ!」
ピコンピコンとなり同じカードが出てきた。
「そいつは、ステイタスを見ることもできる。ランクが上がればカードの色が変わるからな。
今は緑だ。はじめの色だ。
ステイタスオープンで自分のステイタスが見れる。
相手に見せるには、カードを重ねてオープンといや相手にも自分にも見ることができる。
ギルドではこれにかざす。すると、依頼をこなしゃ、金が入るし。ランクが上がればカードの色が変わるからな。
支払いや報酬もこれにかざしゃいい。
ギルド以外は、青い石がある。
買い物なんかで支払った時もかざせ。
宿屋は基本、先払いだからな。
ほら、かざせ。
10000ずつ入れりゃいいのか?」
「うん、おねがいちまちゅ。」
それぞれかざす。ピピとなって入ったらしい。凄いな。
何度も自分のカードをあげては眺めを繰り返してしまった。
「……出す時はカード、カム。しまう時はカード、インだ。
あとは、二人に聞きな。」
割と詳しく教えていただいたような気がしますが。
まだ、機能があるんでしょうか。
まあ、実際にはスマホがあるから、それで色々わかるんだろうが。あまり、へんなことはしない方がいいよね?
ただ、お金をジャラジャラ持たなくていいのはよい!とってもよい!
「ただよ、あんまりちいせー露店商だとよ、青い石ねーから現金だぞ?」
「わかりました。ま、ショウ凄いね。」
「さて、俺らもマール売ったし、ショウの靴買いに行こう。……服もな。」
あ、やっぱり変でしたか?ははは。
でも、ハロルドは面倒見いいな。
善人だからかな?
「いこう!」
「あたいも行っていいかい?」
ラナンが声をかけてきた。
娘とコソコソする。
「チュマホは?」
ーーラナン
ーー冒険者
ーーギルドランク(A)
ーー善人(姉御肌)
ーーバディ(有)
「善人だよ。姉御肌ってある。」
「べんりじゃね。チュマホ。」
「うん。」
というわけで、女の人がいた方が安心!
「「お願いしまちゅ(す)!」」
「「……。」」
「よろこんで!」
若干、二人が嫌そうな顔をしたが、見ないことにしました。
さあ、おっかいもの、おっかいものー。
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