車両故障は不可抗力

ぽやしみ仙人

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 珍しくほとんどバスが壊れることなく、されど忙しい日々が過ぎ去り、一週間後の午前十時である。
 中央営業所の最上階、五階に位置する会議室には所長代理や副所長に加え、本社の役員や他営の事務員の姿が見受けられた。
 ホワイトボードには『実籾身延 車両故障に関する弾劾裁判』と無駄に達筆で書かれていて、それを見るだけで気が滅入ってくる。
 ちなみに今日の俺のダイヤはロングダイヤということで、休憩時間が異常に長く、午前九時から怒濤の六時間休憩である。
 故に次の出庫時間を特段気にしなくて良いのだが、こんなことに貴重な睡眠時間が削られるのは誠に遺憾である。

「調子はどうって目が死んでるけど、実籾、大丈夫なの?」

 ホワイトボードをすぐ脇に座る俺のところへ、四街道がやってきて、心配そうに顔を覗き込んでくる。
 俺はなるべく目を合わせないように。

「ロングダイヤの時はみんなこんな感じの目をしてるから問題ない。むしろ基本仕様だ」

 言い訳のようにそう口にして誤魔化す。けれど、その言葉を鵜呑みにでもしたのか。

「あっそ、ならいいけどさ……」

 どこかつまらないそうに四街道は呟いた。
 その視線は自らの足元へ注がれていて。
 時おり不安そうな表情が見え隠れしていた。

「……悪いな、準備、何も手伝えなくて」

「別にいいって。実籾は実籾で仕事があったわけだし……。それに、さ」

 四街道は視線を会議室に集う人々へと向け。

「――期待されていないっていうのはそれはそれで気楽だけど、なんかムカつくし、誰も予想していなかったことをして驚かせたいじゃん?」

「まあ、出来るのであればそうだな」

 正直、この場で談笑しているほとんどの人々は、俺が大人しく弾劾されるだけだと思っている。
 いくら反論する時間を与えようとも、俺や四街道にはそんなことが出来ないと高を括っているのだ。
 完全に油断しきっているとも言える。
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