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風が臭う? 不穏の気配…!
シーン4
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「あっ、あばら!? ひえええっ!」
「聞いたことありゃしねえよ! なにが大型1種のクマさんだっ、んなもんもはやただの虐待だろうが? だから話が進まねえからいい加減にやめやがれっ!! たくっ…んで、機体のチェックって、オレらのテスト機はもうこっちに届いたのか? 若いあんちゃんよ??」
怪訝な目つきでオオカミが見上げるに、今やグロッキー寸前の若者はヒイヒイ悲鳴を発しながらも懸命に返答をする。
「て、テスト機っ、でありますか? いえっ、それはまだこちらにはっ…あ、ああっ! う、くく、で、ですからっ、既存の機体を専用に修理、もといっ、カスタマイズしたものをご用意して…あ!」
「カスタマイズ? ちっ…! まだ届いてねえのかよ? あのふざけたうすのろどもめ、本国のお偉いさんがたはこれだからっ…ん、あ! ってなんだ??」
舌打ち混じりの悪態を地べたに唾棄しておいて、また怪訝な視線を上げるとすぐ間近からこちらはひどく驚いたような視線ともろにかち合う。苦痛にゆがんだ表情が今やひどい驚愕に目を見開いたものらしいクマ族の青年は、裏返った声で恐縮することしきりだった。
「あっ、あなたは、じゅ、准尉どの!? し、シーサー・ウルフハウンド准尉どのもこちらにおられたのですか!! これはっ、フツーに気がつきませんでした! 大変失礼しました!! それではウルフハウンド准尉どのにも以下同文で同様の命令が下されておりますので、よろしくお願いいたします! ぐっ、あ、あとついでにっ、准尉どのの機体もこのじぶんが整備を行わせていただきます!! あっ、ああああっ!?」
「今さら気づいたのかよ!? ああああっ、じゃねえ! やいてめえ、さっきから言葉を選んでいるようでその実、失礼きわまりねえだろうが? てめえが戦場で命を預けるって機体をついでで整備されたらたまったもんじゃありゃしねえ! その他にもツッコミどころが満載だったぞ!? だからやいこらっ、白目をむいてるんじゃねえよ!!」
「つうか、口から泡を吹いてるじゃねえか? こりゃ今からスパナやレンチやらを取りに行っても手遅れだな! おいオオカミ、おめえさん拳銃もってねえのか? いいからぶっ放しちまえ! このくそでかクマ公に!!」
わめくオオカミにより苦み走った表情のブルドックおやじまでが悪態つくが、クマとクマの危険なじゃれ合いになすすべもなく慄然となるばかりだ。
「あいにく持ってねえよ! あとこのふざけたクマ助も助けてやる気がしねえ!! よくもひとをみくびりやがってからに、扱いが露骨にぞんざいになってるじゃねえか? 敬意がみじんもありゃしねえっ、慇懃無礼てなこういうヤツのことを言うんだろうよ!!」
「わっはは! 無礼だなんてことはないよなぁ、チビぃ? 単純に人を見てるってだけのことだよな♡ そりゃこんな人相と口の悪いパワハラオオカミなんかより、この俺みたいな優しくてがっつり頼れる兄貴のほうがシッポを振っておいて損はないって、ほんとにただそれだけのことだもんな! 俺たち振れるようなシッポなんてありゃしないけど♪」
お気楽なトーンであっけらかんとぶっちゃけまくった発言するそれは野放図なクマ公である。
心底げんなりしたよなブルの親方が心ここにあらずの変わり果てた弟子にため息ついて言った。
「ふうっ…それはそれでよっぽどろくでもないだろう、おまえさんたちよ? おいどうした、リドル、成仏しちまったか?? まったく、今度からはちゃんとスパナのひとつも持ち歩いとけよ、機械をこよなく愛するガチのメカニックたる者…!」
「メカニックの必需品、ていうか、ただの護身用の鈍器だよな、それ? まったくもっていけ好かねえクマ公どもめ、だがこのオレさまの名前をきちんと把握していたってあたりは、それなり評価してやれるぜ? えっと、リドル、なんつったっけか?」
やがて渋々でコトの次第を了解したらしいオオカミの相づちに、昇天寸前の若手のメカニックは最後の力を振り絞ってかすれ加減の返事を返す。
ただしこれには殺人ハグベアがただちにびくと反応していた…!
「あ、ああっ、アーガイルで、じぶんはっ、リドルっ、アーガイル伍長であります! いえっ、こちらのコリンス・ベアランド准尉と同様に、シーサー・ウルフハウンド准尉どのはそのお名前がとても特徴的でありますので、これを一度耳にしたらよほどの単細胞でなければ忘れることはまずないものと思われますがっ…あ!」
「うっ…!」
ひどい怪力でじぶんのことをギリギリと締め付けていた怪物おおぐまの身体に、その時、何故かしら脱力したスキが生じていた…?
すかさずに身をよじってこの両腕の束縛から抜け出す。
地面に尻餅ついて青息吐息で天を見上げる若者だ。
「ふうっ…たっ、助かった…! あれ??」
目の前で手をクロスして仁王立ちしたままの兄貴分(?)がなにやらひどく微妙な顔つきしてるのに不思議に思うが、その横でこれまたやけに白けたオオカミとブルのおやっさんの顔つきにも首を傾げさせる。
「はあん、言われちまったな? よっぽどの単細胞なんだとよ! ならこのオレのこと、ついいましがたになんて言ってたっけ? おまえ??」
「ま、悪く思うなよ、なにぶんに根が正直なもんでな、おれっちの弟子は! いやはやどうして、マジでかわいいだろう? きつく抱きしめたくなるほどによ??」
「ううっ…!」
ビュルルッ…!
バツが悪いままに立ち尽くすでかいクマの足下を、いやな風が吹き抜けていった。
※次回に続く…!
「聞いたことありゃしねえよ! なにが大型1種のクマさんだっ、んなもんもはやただの虐待だろうが? だから話が進まねえからいい加減にやめやがれっ!! たくっ…んで、機体のチェックって、オレらのテスト機はもうこっちに届いたのか? 若いあんちゃんよ??」
怪訝な目つきでオオカミが見上げるに、今やグロッキー寸前の若者はヒイヒイ悲鳴を発しながらも懸命に返答をする。
「て、テスト機っ、でありますか? いえっ、それはまだこちらにはっ…あ、ああっ! う、くく、で、ですからっ、既存の機体を専用に修理、もといっ、カスタマイズしたものをご用意して…あ!」
「カスタマイズ? ちっ…! まだ届いてねえのかよ? あのふざけたうすのろどもめ、本国のお偉いさんがたはこれだからっ…ん、あ! ってなんだ??」
舌打ち混じりの悪態を地べたに唾棄しておいて、また怪訝な視線を上げるとすぐ間近からこちらはひどく驚いたような視線ともろにかち合う。苦痛にゆがんだ表情が今やひどい驚愕に目を見開いたものらしいクマ族の青年は、裏返った声で恐縮することしきりだった。
「あっ、あなたは、じゅ、准尉どの!? し、シーサー・ウルフハウンド准尉どのもこちらにおられたのですか!! これはっ、フツーに気がつきませんでした! 大変失礼しました!! それではウルフハウンド准尉どのにも以下同文で同様の命令が下されておりますので、よろしくお願いいたします! ぐっ、あ、あとついでにっ、准尉どのの機体もこのじぶんが整備を行わせていただきます!! あっ、ああああっ!?」
「今さら気づいたのかよ!? ああああっ、じゃねえ! やいてめえ、さっきから言葉を選んでいるようでその実、失礼きわまりねえだろうが? てめえが戦場で命を預けるって機体をついでで整備されたらたまったもんじゃありゃしねえ! その他にもツッコミどころが満載だったぞ!? だからやいこらっ、白目をむいてるんじゃねえよ!!」
「つうか、口から泡を吹いてるじゃねえか? こりゃ今からスパナやレンチやらを取りに行っても手遅れだな! おいオオカミ、おめえさん拳銃もってねえのか? いいからぶっ放しちまえ! このくそでかクマ公に!!」
わめくオオカミにより苦み走った表情のブルドックおやじまでが悪態つくが、クマとクマの危険なじゃれ合いになすすべもなく慄然となるばかりだ。
「あいにく持ってねえよ! あとこのふざけたクマ助も助けてやる気がしねえ!! よくもひとをみくびりやがってからに、扱いが露骨にぞんざいになってるじゃねえか? 敬意がみじんもありゃしねえっ、慇懃無礼てなこういうヤツのことを言うんだろうよ!!」
「わっはは! 無礼だなんてことはないよなぁ、チビぃ? 単純に人を見てるってだけのことだよな♡ そりゃこんな人相と口の悪いパワハラオオカミなんかより、この俺みたいな優しくてがっつり頼れる兄貴のほうがシッポを振っておいて損はないって、ほんとにただそれだけのことだもんな! 俺たち振れるようなシッポなんてありゃしないけど♪」
お気楽なトーンであっけらかんとぶっちゃけまくった発言するそれは野放図なクマ公である。
心底げんなりしたよなブルの親方が心ここにあらずの変わり果てた弟子にため息ついて言った。
「ふうっ…それはそれでよっぽどろくでもないだろう、おまえさんたちよ? おいどうした、リドル、成仏しちまったか?? まったく、今度からはちゃんとスパナのひとつも持ち歩いとけよ、機械をこよなく愛するガチのメカニックたる者…!」
「メカニックの必需品、ていうか、ただの護身用の鈍器だよな、それ? まったくもっていけ好かねえクマ公どもめ、だがこのオレさまの名前をきちんと把握していたってあたりは、それなり評価してやれるぜ? えっと、リドル、なんつったっけか?」
やがて渋々でコトの次第を了解したらしいオオカミの相づちに、昇天寸前の若手のメカニックは最後の力を振り絞ってかすれ加減の返事を返す。
ただしこれには殺人ハグベアがただちにびくと反応していた…!
「あ、ああっ、アーガイルで、じぶんはっ、リドルっ、アーガイル伍長であります! いえっ、こちらのコリンス・ベアランド准尉と同様に、シーサー・ウルフハウンド准尉どのはそのお名前がとても特徴的でありますので、これを一度耳にしたらよほどの単細胞でなければ忘れることはまずないものと思われますがっ…あ!」
「うっ…!」
ひどい怪力でじぶんのことをギリギリと締め付けていた怪物おおぐまの身体に、その時、何故かしら脱力したスキが生じていた…?
すかさずに身をよじってこの両腕の束縛から抜け出す。
地面に尻餅ついて青息吐息で天を見上げる若者だ。
「ふうっ…たっ、助かった…! あれ??」
目の前で手をクロスして仁王立ちしたままの兄貴分(?)がなにやらひどく微妙な顔つきしてるのに不思議に思うが、その横でこれまたやけに白けたオオカミとブルのおやっさんの顔つきにも首を傾げさせる。
「はあん、言われちまったな? よっぽどの単細胞なんだとよ! ならこのオレのこと、ついいましがたになんて言ってたっけ? おまえ??」
「ま、悪く思うなよ、なにぶんに根が正直なもんでな、おれっちの弟子は! いやはやどうして、マジでかわいいだろう? きつく抱きしめたくなるほどによ??」
「ううっ…!」
ビュルルッ…!
バツが悪いままに立ち尽くすでかいクマの足下を、いやな風が吹き抜けていった。
※次回に続く…!
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