ルマニア戦記・『○×△□◇の逆襲!』

おおぬきたつや

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風が臭う? 不穏の気配…!

シーン3

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「んっ...! まあ、こんなとこでツノつき合わせていてもしょうがねえだろう? それよりもほれ、お呼びが来たぞ? おまえさんがたがいつまでも油売ってるから。えらいあせってるやがるみたいだが...お、しかもありゃうちの愛弟子まなでしだな!」

「あ、チビだろ、あいつ? ほんとだ焦ってる! おーい、そんなにあわててるとコケるぞ、チビー!!」

「相変わらずヒョロっちいな? マジでコケるんじゃねえのか?? なんであんなに焦ってるんだよ? おいおいっ...!」

 ブルのおやじが気がついた時は豆粒まめつぶみたいだったのが、今は誰だかそれとはっきり視認ができる。
 遠く本庁舎のある方面からこっち、おんぼろな建物の壁際を息急いきせってけってくるのは、ふたりのパイロットたちよりもまだ若いような青年であり、見るからに細身ほそみ華奢きゃしゃな男子だった。
 熟年の機械工とおなじような全身が緑のオーバーオールの格好なのが、この基地内での役割や立ち位置ももはや明確だ。
 それが一気に三人の下まで駆けつけるとただちに直立不動の気をつけ!
 ビシッとしたきれいなをかましてくれる。
 まだちょっと息が上がったさまで、おまけ表情もかなりアップアップ気味で緊張した第一声を張り上げる若手の見習いメカニックくんだ。



「はあっ、はあっ、はあっ…! こ、こんなところにいらしたのですか!? 基地中さがしてしまいましたっ、はあっ、ごっ、ご報告申し上げます! ベアランド准尉じゅんいどのっ、本日12:00をもちまして、准尉どのに実戦配置ならびに戦闘待機命令が…あっ、いや! 戦闘準備の要請が本部より出されております! よってこれよりすみやかに隊舎たいしゃに戻られまして、ただちに機体の確認、出撃の準備を整えられますよう、お願い申し上げます!! あとぶしつけながら、准尉どのの機体の整備はこの自分、アーガイル伍長ごちょうめが一任いちにんされております! なにとぞよろしくお願いいたします!!」

「ははっ、そうかい? いや、命令なら命令でいいんだよ! そんな気を使ってくれなくともな? こっちじゃさんざんお客さん扱いされてきたんだから、望むところだ。あとおまえさんもそんな恐縮してくれなくたっていいんだぜ? お互いに一介いっかいのパイロットとメカニックじゃないか。コリンスの兄貴あにきばわりでぜんぜんかまわないよ、リドル! そうとも何を隠そう、俺たちなんだからな♡」

「そそっ、そんな滅相めっそうもありません! 自分はただの見習いの身でありますから。それに見てくれもこのさまでありますから…准尉どのとはまるで…」

 胸を張ったおおらかな巨漢のクマの物言ものいいに、見るからに物怖ものおじした虚弱きょじゃくグマが言葉をにごしてしまいにはうつむき加減となる。最後のほうはまるで聞き取れなかったが、視線を落とした先から思いも寄らない人物に声を掛けられて思わずぎょっとなる青年機械工だ。

1ってななんだ? まあ、確かにおんなじ大型のクマ族とは思えないくらいにガタイに差があるが、それでもリドルよ、おまえさん機械いじりとしての腕は悪くねえんだぜ。すじがいいのはこのオレのお墨付すみつきよ! もっと胸を張りな。しょせんそこのデカブツと比較すること自体が間違っているんだ」

「おおっ、親方おやかた!? いらしたんですか? ちっちゃいからまるで気が付かなかった! まことに失礼しました!!」

「やかましい! 本当に失礼じゃねえか! んなこた周りからチビすけ呼ばわりされてるおめえから言われたくはねえっ、小せえのはこのブルドック族のさがでありほこりでもあるのよ! だったらおめえはもっと身体をきたえてそこのデカぐまの半分でもボリュームをつけなっ、それで晴れて一人前よ!!」

 すっかりご機嫌斜きげんななめの親方にあたふたする弟子のメカニックだが、それをすぐ真ん前のでかいクマのパイロットさまが明るく笑い飛ばしてくれる。
 おまけに太い腕を伸ばして問答無用で華奢な同族の細身を抱え上げていた。
 それはいわゆる愛情表現のなのらしいが、はたから見るにはまるで手加減のないわざにしか見えなかったりする。

「あっはははははは! 半分だったらまだ半人前なんじゃないのかい? まあ確かにガリでチビではあるが、これはこれでかわいげがあるってもんだよ、うん! てかチビ、ちゃんと毎日メシ食ってるのか? モリモリ食ってバリバリ働かねえと将来立派なクマ族にはなれないって、子供の頃に言われてただろ! なあ、チビ~~~!!」

「ああっ、いやっ、イタタタタ! じゅ、じゅじゅっ、准尉どの、ちからが尋常じんじょうじゃないでありますっ! 両足が地面からすっかり離れてっ…ぐっ、スーツのかどが本気でめり込んでいるであります!! うひいいっ…」

「ちっ、おいやめな、でかグマ! おれっちのかわいい弟子が使い物にならなくなっちまうだろう? やいリドル、もってねえのか? そいつでこいつの無駄にでかいオツムを!!」

「む、ムリであります!」

 必死にもがく若手のメカニックに、それまで傍から冷めたまなざしで見ていたオオカミのパイロットもしょうもなさげにこの大口を開く。

「まったくてめえの虚弱さも目にあまるものがあるが、こんなデカブツ相手じゃまともでも手を焼くってもんだよな! おら、だったらオレに貸せよ、! オレが代わりになぐたおしてやるから!! でないとおまえ、死んじまうだろ?」

「も、持ってないであります!!」

「あっはは! いいんだよ、これで! クマ族ってのは元来みんなで群れてがっちりしたハグをするのが大好きな生き物なんだから♡ 他の種族からはわりかしイヤがられるけど、クマさん同士はこんなの当たり前の日常茶飯事なんだぜ? この俺もちっちゃいころはおやじやおじきからあばらが折れるくらいにきっついのを食らわされていたよ! みんなそうやって強くなっていくんだから、俺たち大型Ⅰ種のくまさんは♪」 

「あっ、あばら!? ひえええっ!」

「聞いたことありゃしねえよ! なにが大型1種のクマさんだっ、んなもんもはやただの虐待だろうが? だから話が進まねえからいい加減にやめやがれっ!! たくっ…んで、って、オレらのテスト機はもう届いたのか? 若いあんちゃんよ??」
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