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敵地潜入? 残されたふたり…!

シーン4

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「…よしっと! これでひとまず大丈夫だろ? シーサー、いいからとっとと張り倒しちゃえよ、そいつはもうただのなんだから! あとのヤツらもこんなカンジでやっつけていこうぜっ…と、もうそろそろなんだよな?」

 しれっと言いながらどこかしら無関係な空の方角を見上げてるみたいなでかいクマ、ならぬでかい旧型のアーマーに、内心で苦々しくした新型アーマーのパイロット、オオカミは舌打ち混じりに毒づく。

「なにがだ! れしいこと当たり前みたいに抜かしやがってからに、おまけに今のはおまえがそのでかいアーマーで相手をふんじばって、そのスキにこのオレさまが背後に回ってエンジンぶっ壊すほうがよっぽど合理的だろうが? おい、ってなんだ??」

 ひょっこりと出てくるなりあれよあれよと突拍子もないことの連続で、さすがに警戒心が色濃く顔に出るシーサーだ。
 また良からぬコトをしでかすのかとモニターの中の呑気な顔したクマに問いかけるに、そのでかいアーマーのコクピットに収まったでかいクマベアランドは、まるで屈託くったくのない笑顔で言ってのける。

「まあ、ちょっとしたってヤツをね? さっさきの信号弾が上がって5番隊が戦線を離脱したら、テキトーにぶっぱなしてくれるようにお願いしてあるんだ、リドルに! だからもうそろそろ、あっちの東の空から対地ミサイルがワラワラ降ってくると思うんだけど…!」

「なっ、なんだと!? わらわらって、おまえっ、こんな状況で連装ランチャーぶっ放して、まともに標的なんて狙えるもんかよ! 最悪こっちまで巻き添え食らっちまうぜ!! ていうかもっと早くに言いやがれ!!!」

 ガッチリと組み付いていた今は糸の切れた操り人形みたいな七番隊のアーマーを無理矢理地面にたたき伏せてみずからも明後日の空を見上げるオオカミだ。
 白く曇った東の空に朝日がさしてあたりは多少明るくはなるが、むしろ逆光で空から飛来するというものが見づらかった。
 センサーは濃霧ガスに邪魔されてまともに使えない。
 両目をひたすら凝らして焦りまくるシーサーに、忌々いまいましいことあっけらかんとした張本人、ベアランド自身はまた笑ってぬかすのだった。

「いいんだよ。当てる気なんてないから、元からね? アーマーの撃破でなくて、むしろこっちのキリに向けてだからさ。威力もちゃんと抑えてあるから、最悪直撃しても止まりなんじゃないかな? 当たらないのが一番だけど♡」

「小破か中破って、てめえマジでバカなんじゃねえのか! 味方の援護射撃で被弾するだなんてまっぴごめんだぜっ、てかこんなもん援護射撃だなんて言えるのかよっ!!?」

「あはは! いいからいいから、それよりもほら、おいでなすったよ? ほんとにワラワラと♡ 当たるも八卦はっけ当たらぬも八卦はっけってね♡♡」

「ふっ、ふざけんなよっ! うおおおおおおおおおっーーー!!?」

 どこまでも呑気なでかいクマ、ベアランドが言った通り、上空からはいくつもの飛来物が長い尾を引いてこちらに迫るのが薄曇りのモニターの中にうっすらと確認ができる。
 反射的に逃げ場を求めて当たりを探っても平たく拓けた平地のここでは物陰などがどこにも見当たらない。唯一、に、なかばやけっぱちでアーマーの操縦桿を押し倒すシーサーだ。巨大な重量を低減する重力装置を切っているから一歩一歩が歯がゆいことこの上ないが、どうにかギリギリで唯一の遮蔽物の影に入ることができた…!
 直後、周囲でいくつもの着弾と爆発音、爆風が巻き起こる!!


(あちゃ~、今回は挿絵、失敗しました…! ニュアンスだけです♡)

「うおっ、おおおおおっ、くそったれ!!」

「あっははははははははは! 大丈夫だって、ちゃんと落下地点をまんべんなくバラすように設定してあるし、炸裂弾じゃないんだから♡ 至近弾くらいじゃビクともしないよ♪」

 ミサイルの嵐はあっという間に巻き起こってあっと言う間に過ぎ去っていた。
 その後に身を隠していたコクピットの中で顔を上げたオオカミが見たものは、すっかりと視界の晴れた空に東の地平線から顔を出す朝日のまぶしいまでの輝きだった…!
 
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