【R18】僕とあの子の10日間~もふもふインコを助けたらアレな少女がやってきた~

里見つばさ

文字の大きさ
4 / 46
第一章(木・金・土)

第4話

しおりを挟む
「おい、おい。そんな怨みで怨霊になっちゃうのかよ?」
 和也は少女の表情から、害意はないと踏んで、ツッコミをいれる。
「そんな怨みっていうけど、おじさんに、信じてもらえなかったのが悲しかったし。すごく恥ずかしかったんだよ」と、膨れ面をしている少女に対し、
「ごめん。悪かったよ」と和也は即座に謝る。少女は謝罪に満足したようで、表情を和らげた。
「じゃあ……ちょっと許して、おじさんから『和也さん』に格上げしてあげるね」

「お。ありがとうな。って、なんで俺の名前を知ってる?」
 和也は、自分の名前を呼んだ少女に驚いて尋ねる。超常現象の発生に動転したこともあって、名前は教えていないはずだ。
「はじめて男の人の部屋に入ったんだから、警戒するのは当然よ。坂口さかぐち和也かずやさん――そこにあった郵便物の宛名に書いてあったの。それと多分、奥さんに逃げられているはず」
 少女はリビングの入口にある、郵便物の収納ポケットを指差している。和也は、智美と別れたことを正確に指摘されて、心がちくりと痛んだ。宛名で見た名前はともかく、離婚していることなど、どうして分かったんだ?

「あ、うん。確かに俺は離婚しているけど、なんで分かった?」
「そうね。一人暮らしには不釣り合いな間取り。大き目のダイニングテーブルやダイニングボードにソファ。寝室に大きなベッドがあるのがちらっと見えた。それに、このマンションは分譲でしょ? ならば結婚を機に、将来に備えて買ったはず。どう? 正解でしょ?」
 少女は誇らしげに自分の推理を披露した。和也は観察力と洞察力に舌を巻くと同時に、少し恐ろしさも覚える。
「なるほど。キミ、すごいな。いったい何者なんだ?」
「私? ただの怨霊だよ」さも当然、とばかりに少女は言い放つ。

 ――そうだ。怨霊だったんだ。
 普通に話しているので全く実感が湧かないけれど、笑顔の一見清楚な美少女は怨霊なんだ。先ほどの怪現象が証明している。だが、俺の前に現れた目的は何だ? 和也は不審に思う。
「なんでただの怨霊さんが、俺の前に現れるんだ?」
「怨霊さん、って呼び方、かわいくないしイヤ」彼女が膨れている。少女が自ら怨霊と言っただろう。まったくもって怨霊少女のペースだな。和也は苦笑しながら尋ねる。

「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「私はユミだから、和也さんの好きに呼べばいいよ」
「ユミさんでいいかい?」と、当たりさわりのない呼び方を和也は提案した。だが怨霊少女は、「なんだか他人行儀だし、かわいくないからイヤ」と、相変わらず不満な様子。
「好きに呼んでいいって言ったじゃないか。それに、今日あったばかりの他人だろ?」和也は反論する。
「実際に呼ばれてみたら、かわいくなかったの。それに……」と相変わらず、彼女は膨れている。
「分かった。じゃあ、ユミちゃんにするよ?」呆れながら、和也は同意を求める。
「オッケー。もう少し優しく愛情を込めて、呼んでくれると嬉しいけど」
 ようやく少女は満足したようだが、和也は、彼女が言いかけた言葉が気になり尋ねる。

「それに……ってなんだい?」
「もう和也さんに、取りいちゃったから、他人じゃないし」
 少女は満面の笑みだ。アイドル顔負けのキュートな笑顔だけれど、取り憑くなどと不穏なフレーズを出すので、和也は焦ってしまう。
「と、取り憑く、ってどういう意味?」
「私の居場所がないので、ここに少し居させてほしいんだ」ぽつりと彼女がこぼす。和也は図らずも独身状態で、実害がなければそうろうは構わない。だが、なにより和也は寂しげな少女の様子が気になってしまった。
「ユミちゃんの家はないの?」
「あるけど……ママは後妻だし、私のこと好きじゃないから嫌がる」
 なるほど、彼女の母親は後妻なのか。再婚後に子供との関係が悪化するのはよくある話だ。そう和也は納得して、智美との間に子ができなくて良かった、と思った。
「そうか……お父さんは?」
「パパは優しいよ。でも私に驚いて、心臓が停まったら困るでしょ」
 父親と良好な関係なら、救いはまだあったのだろう、と和也は思ったが、「俺の心臓は驚いて停まってもいいのかよ」少女の失礼な物言いに、和也はなんとか言い返す。
「和也さんの心臓は停まらなかったじゃない? 結果オーライでしょ」とあっさり言ってのける少女の笑顔を見て、和也は、彼女を追い出す気持ちが全くないのに気づいた。変わっているところも多いけれど、何より彼女と話していると楽しい。美少女の笑顔は見ているだけでも、幸せになれるし放っておけないぞ。

「ああ、幸いなことに俺の心臓は停まらなかったけどな」
「インコを泊めてあげた和也さんが、飼主を優遇しない訳ないでしょ?」
 ――もふもふインコのピーちゃん!
 彼女が部屋に入り込んでから、超常現象の発生の続出もあり、和也はすっかり忘れていた。
「ああ、ピーちゃんは無事に戻ったの?」和也はピーちゃんの安否を尋ねる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...