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第三章(月・火・水・木)
第4話
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和也は仰向けになった智美にのしかかっている状態で、耳元に智美の熱い吐息。さらに、しっかりと和也を智美が強く抱き寄せた。和也は智美の豊満な巨乳に顔を埋めている体勢になった。
智美の香りはとても懐かしく、肉体は柔らかく淫靡で、欲望をそそられる。実際に和也も別れて以降、何度も智美とのセックスを思い出して自慰したものだ。
「トモ、一体どうしたんだよ?」和也は智美の誘惑の呪縛から逃れるように、腕を振りほどく。振り払われた智美は、虚をつかれたような顔だ。
「あたしのこと、いつも好きっていってたじゃん」
元は熱烈に智美のことを愛していただけあって、和也が智美を拒否するのは心苦しい。だがクローゼットに隠れているユミを思い出して、
「昔の話だ。俺はしないよ」和也は心を鬼にして智美に力強く言った。
「あたしさ、彼と別れちゃって、和クンしか頼る人いないんだー。今日一晩だけでも泊めてよー。和クン、一生のお願い!」
智美は悲しげな表情で、見上げてくる。知り合いが悲しんでいるのを見るだけで、心が痛む和也である。ましてや智美は六年間深く付き合って、短いながらも楽しい結婚生活をおくった伴侶だ。涙が出そうに心が苦しい。
「タクシー代貸すから、帰ってくれ」和也は振り絞るように言った。和也の返事は智美には相当意外だったのだろう。
「えーっ!? 信じられないんだけど!」驚きの色を隠せない智美が、和也に鋭い視線を浴びせ、叫ぶ。
そして、智美はぷいと和也から顔をそらしたかと思えば、ベッドにうつ伏せになって、シーツにすがり泣き始めた。大学当時から智美の泣き落としに和也は弱く、甘い言葉を掛けるのが常だったが、今回は違っていた。
「トモとは離婚したんだし、しょうがないだろ?」和也は感情を押し殺して言った。
ところが、智美は和也の言葉にはまったく返事をせずに、さっと体を起こして和也を力強く見つめた。
「あ! 和クンがあたしを泊めない理由が分かった!」
突然、智美は何を言いだすんだろう。
「えっ?」まさかユミのことがばれたのか。と和也は焦る。
「和クン、彼女ができたんだね。そうでしょ!?」
智美は自信に満ちた表情で言い放つ。女性の勘は鋭いというが、智美にほぼ核心をつかれた和也は、思わずたじろいでしまった。既に離婚しているので、和也に彼女ができたとしても構わないのだが、和也は責められている気分になった。
ユミと自分はいったいどのような関係なんだろう。ユミに深い愛情を感じているのは、和也はもちろん自覚している。だが胸を張って、ユミを彼女だ、とは言えなかった。ユミは霊なので、いずれ消滅する運命だ。
そのため智美への和也の返事も、「彼女ができたわけではないけど、とにかく帰ってくれよ」と弱腰になってしまう。
「ウソ! このベッドに女の匂いがする!」智美は叫ぶと、くんくんとベッドに鼻を近づけて匂いを嗅いでいる。どこの警察犬だよ、と和也はツッコミを入れたかったが、ユミの匂いが付いているのは間違いないはず。まったくの図星なので洒落にならない。
「匂いなんてないだろ?」全否定できない和也は、さらに弱気になってしまった。
「ていうかさー。この部屋全体、すごく女の匂いがするんだけど?」
いつの間にか酔いが醒めた智美は、ぴょんと元気に立ち上がった。智美は鼻をクンクン鳴らしながら、「和クンの彼女の匂いがするー」とか「こっちから強く匂いが!」など言いながら部屋中を嗅ぎ回る。
「トモ、彼女はいないから、やめてくれよ」との弱気な和也の願い虚しく、警察犬智美号は、ユミが隠れているクローゼットに近づいていく。
「ここから女の匂いがプンプンするんだけど!」
智美がクローゼットの扉に手を掛けた。そこにはユミが隠れているんだ。やめろ、開けないでくれ。和也は天に祈った。
智美の香りはとても懐かしく、肉体は柔らかく淫靡で、欲望をそそられる。実際に和也も別れて以降、何度も智美とのセックスを思い出して自慰したものだ。
「トモ、一体どうしたんだよ?」和也は智美の誘惑の呪縛から逃れるように、腕を振りほどく。振り払われた智美は、虚をつかれたような顔だ。
「あたしのこと、いつも好きっていってたじゃん」
元は熱烈に智美のことを愛していただけあって、和也が智美を拒否するのは心苦しい。だがクローゼットに隠れているユミを思い出して、
「昔の話だ。俺はしないよ」和也は心を鬼にして智美に力強く言った。
「あたしさ、彼と別れちゃって、和クンしか頼る人いないんだー。今日一晩だけでも泊めてよー。和クン、一生のお願い!」
智美は悲しげな表情で、見上げてくる。知り合いが悲しんでいるのを見るだけで、心が痛む和也である。ましてや智美は六年間深く付き合って、短いながらも楽しい結婚生活をおくった伴侶だ。涙が出そうに心が苦しい。
「タクシー代貸すから、帰ってくれ」和也は振り絞るように言った。和也の返事は智美には相当意外だったのだろう。
「えーっ!? 信じられないんだけど!」驚きの色を隠せない智美が、和也に鋭い視線を浴びせ、叫ぶ。
そして、智美はぷいと和也から顔をそらしたかと思えば、ベッドにうつ伏せになって、シーツにすがり泣き始めた。大学当時から智美の泣き落としに和也は弱く、甘い言葉を掛けるのが常だったが、今回は違っていた。
「トモとは離婚したんだし、しょうがないだろ?」和也は感情を押し殺して言った。
ところが、智美は和也の言葉にはまったく返事をせずに、さっと体を起こして和也を力強く見つめた。
「あ! 和クンがあたしを泊めない理由が分かった!」
突然、智美は何を言いだすんだろう。
「えっ?」まさかユミのことがばれたのか。と和也は焦る。
「和クン、彼女ができたんだね。そうでしょ!?」
智美は自信に満ちた表情で言い放つ。女性の勘は鋭いというが、智美にほぼ核心をつかれた和也は、思わずたじろいでしまった。既に離婚しているので、和也に彼女ができたとしても構わないのだが、和也は責められている気分になった。
ユミと自分はいったいどのような関係なんだろう。ユミに深い愛情を感じているのは、和也はもちろん自覚している。だが胸を張って、ユミを彼女だ、とは言えなかった。ユミは霊なので、いずれ消滅する運命だ。
そのため智美への和也の返事も、「彼女ができたわけではないけど、とにかく帰ってくれよ」と弱腰になってしまう。
「ウソ! このベッドに女の匂いがする!」智美は叫ぶと、くんくんとベッドに鼻を近づけて匂いを嗅いでいる。どこの警察犬だよ、と和也はツッコミを入れたかったが、ユミの匂いが付いているのは間違いないはず。まったくの図星なので洒落にならない。
「匂いなんてないだろ?」全否定できない和也は、さらに弱気になってしまった。
「ていうかさー。この部屋全体、すごく女の匂いがするんだけど?」
いつの間にか酔いが醒めた智美は、ぴょんと元気に立ち上がった。智美は鼻をクンクン鳴らしながら、「和クンの彼女の匂いがするー」とか「こっちから強く匂いが!」など言いながら部屋中を嗅ぎ回る。
「トモ、彼女はいないから、やめてくれよ」との弱気な和也の願い虚しく、警察犬智美号は、ユミが隠れているクローゼットに近づいていく。
「ここから女の匂いがプンプンするんだけど!」
智美がクローゼットの扉に手を掛けた。そこにはユミが隠れているんだ。やめろ、開けないでくれ。和也は天に祈った。
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