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第二十七話「ざまぁ:証拠で詰む“聖女(自称)”」
カイル王子率いるクーデターは、実にあっけない幕切れを迎えた。
頼みの綱だった黒竜が、私の提示した「福利厚生プラン(魔力定額給付)」にあっさり寝返ったからだ。
「ギャオォォォン(魔力くれ)」
「はいはい、後であげますから。今は大人しくしていてください」
中庭の真ん中で、巨大な黒竜が犬のようにお座りをしている。その足元で、泥まみれになったカイル王子が近衛騎士たちに取り押さえられていた。
「は、離せ! 僕は第二王子だぞ! これは正当な王位継承権の行使だ!」
カイルは往生際悪く喚いているが、その顔には焦りと恐怖が張り付いている。
レオンハルト殿下が冷ややかに見下ろした。
「見苦しいぞ、カイル。……お前が頼った『力』は、リュシアの『知恵』の前に敗れ去ったのだ」
「くそっ……! なぜだ、なぜあの女なんだ! ただの公爵令嬢ごときが、なぜ竜を従え、国を動かせる!?」
カイルは私を睨みつけた。
私はドレスの裾(破れてミニスカ状態)を払い、ため息をついた。
「それは私が、あなたのように他人を利用することしか考えない人間ではなく、契約の重さを知る『社会人』だからですわ」
私はカイルの前にしゃがみ込み、小声で囁いた。
「それに、あなたは詰めが甘いです。黒竜への生贄契約書、ちゃんと読みました? 裏面に『甲(竜)は乙(契約者)の魔力供給が途絶えた場合、即座に契約を破棄できる』って小さい字で書いてありましたよ?」
「なっ……!?」
「契約書は隅々まで読む。基本です」
嘘である。そんな契約書はない。ハッタリだ。
しかし、カイルは「まさか……騙されたのか!?」と青ざめ、ガクリと項垂れた。
彼が連行されていく背中を見送りながら、私はドッと疲れが出た。
「……終わった」
これで、やっと。
やっと私の平穏な生活が……来るわけがない。
まだ最後の仕事が残っている。
◇
翌日。
王宮の大広間にて、『王家反逆罪および国家転覆未遂事件』に関する特別法廷が開かれた。
傍聴席には、騒動の真相を知りたがる貴族たちや、神殿関係者がひしめき合っている。
被告人席には、拘束具をつけられたカイル元王子(すでに廃嫡が決定)。
そして、車椅子に乗せられた元聖女、セレナ・ルミエール。
セレナは怪物化の後遺症か、顔色は土気色で、かつての可憐さは見る影もない。しかし、その瞳だけはまだギラギラと周囲を睨みつけていた。
「……私は悪くない」
開廷一番、セレナは掠れた声で主張した。
「騙されたのよ! カイル殿下に『これを飲めば王妃になれる』って言われて、無理やり薬を飲まされたの! 私は被害者よ!」
彼女はボロボロと涙をこぼし、お得意の「可哀想なヒロイン」を演じ始めた。
カイルが「貴様、裏切る気か!」と怒鳴るが、セレナは無視して私に縋り付くような視線を送ってきた。
「リュシア様ならわかりますよね? 私、操られていたんです。怪物の姿になって暴れたのも、意識がなかったんです。……お願い、助けて。私を許して……!」
会場の空気が少し揺らぐ。
確かに、彼女は薬で変異させられた被害者という側面もある。
同情を買う余地はあるかもしれない。
――今までの私なら、そう思ったかもしれない。
でも、今は違う。
私は「国の心臓」だ。情で法を曲げることは、国を腐らせることになる。
「……哀れなお芝居はおやめなさい、セレナ」
私は証言台に立ち、冷徹に告げた。
隣には、怪我をおして復帰したエルダ監査官が、大量の資料を抱えて立っている。
「エルダ、証拠物件Aを」
「はい」
エルダが魔導プロジェクターを起動する。
空中に投影されたのは、セレナとカイルが交わした『裏契約書』の写しと、地下水路での密会を記録した音声データだった。
『――ねえカイル殿下。リュシアを殺せば、私が王妃になれるのよね?』
『ああ、約束しよう』
『うふふ、楽しみ。あの女が苦しむ顔を見るためなら、魂だって悪魔に売ってやるわ』
セレナの高笑いが、大広間に響き渡る。
会場が凍りついた。
「操られていた」どころか、ノリノリで殺害計画を練っているではないか。
「こ、これは捏造よ! 音声加工だわ!」
セレナが叫ぶ。
「往生際が悪いですわね。……では、証拠物件B」
次に映し出されたのは、神殿の帳簿データだ。
セレナが「聖女の奇跡」演出のために横領した金額と、その使途が詳細に記されている。
「総額、国家予算の三パーセント相当。これだけの巨額資金が、違法薬物の購入や、暴徒を扇動するための工作員雇用に使われています。……そして、その発注書には、あなた自身の魔力署名(サイン)が残っています」
私は冷ややかに彼女を見下ろした。
「薬を飲まされた? いいえ、あなたは自ら望んで飲んだのです。その証拠に、薬瓶に残った指紋と魔力残滓は、抵抗した形跡を一切示していません」
「っ……!」
セレナは言葉を失い、ガタガタと震え出した。
逃げ場はない。
彼女が積み重ねてきた嘘、欺瞞、そして悪意は、すべて「記録」として残り、今、彼女自身を絞め殺す鎖となっている。
「これが『証拠』です。感情論でも、私の私怨でもありません。……数字と事実が、あなたの罪を証明しています」
私はファイルを閉じた。
会場からは、もはや同情の声は一つも上がらなかった。あるのは軽蔑と、恐怖のみ。
かつて聖女と崇められた少女は、今やただの犯罪者として、衆人環視の中に晒されていた。
裁判長が木槌を叩く。
「静粛に! ……被告人セレナ・ルミエール。弁明の余地なしと認める。判決は後日言い渡すが、極刑は免れないと思え」
「いや……いやぁぁぁッ!!」
セレナが絶叫した。
彼女は車椅子から転げ落ち、床を這いずりながら私を睨みつけた。
「なんでよ! なんであんたなのよ! 悪役令嬢のくせに! ただの当て馬のくせに!」
彼女は狂ったように叫び続けた。
「私が主役なの! 私が愛されるはずだったの! あんたなんか……あんたなんか……!」
衛兵たちが彼女を取り押さえようとする。
その時。
レオンハルト殿下がスッと手を挙げ、衛兵を制した。
彼はゆっくりとセレナの前に歩み寄り、氷のような眼差しで見下ろした。
「……君が主役になれなかった理由を教えてやろうか」
「……あ?」
「君は、物語(シナリオ)に頼りすぎたんだ」
レオンハルトは静かに言った。
「『聖女だから愛される』『ヒロインだから許される』……そんな甘えた幻想にしがみつき、目の前の現実や、他人の心と向き合おうとしなかった。だから君は、誰の心も動かせなかったんだ」
「……う、嘘よ……殿下だって、最初は私に優しかったじゃない……」
「それは王族としての礼節だ。愛ではない」
彼はバッサリと切り捨てた。
そして、私の肩を抱き寄せた。
「リュシアを見ろ。彼女は『悪役』という不遇な立場に置かれながらも、決して腐らず、自らの知恵と努力で運命を切り拓いた。……法を学び、国を守り、私の心さえも救った」
レオンハルトの声に熱がこもる。
「私が愛したのは『設定』ではない。『リュシア・ヴァルモン』という一人の人間の、気高く美しい魂だ。……君には、その輝きが決定的に欠けていた」
トドメの一撃だった。
セレナの瞳から光が消え、彼女は糸が切れた人形のように脱力した。
衛兵に引きずられていく彼女の後ろ姿を見ながら、私はふと、胸が痛むのを感じた。
勝った。
完璧なざまぁだ。
でも、なぜだろう。ちっとも爽快ではない。
彼女もまた、この歪んだ世界システムの被害者だったのかもしれない――なんて思うのは、私の感傷だろうか。
大扉の前で、セレナがふと足を止めた。
彼女は振り返り、虚ろな目で私を見た。
そして、最後に呪いのような言葉を吐き捨てた。
「……可哀想なリュシア」
「え?」
「あんた、勝ったつもりでしょうけど……気づいてないの?」
彼女はニタリと笑った。
「あんたも、私と同じよ。……『誓約』というシステムに選ばれて、踊らされているだけの人形よ」
ゾクリと背筋が凍った。
「国の心臓? 無限の愛? ……あはは! それって、あんたの自由意志なの? それとも、システムに書き換えられた『設定』なの?」
「黙らせろ!」
レオンハルトが叫び、扉が閉められた。
大広間に静寂が戻る。
貴族たちが「気にするな」「負け犬の遠吠えだ」と口々に私を慰めてくれる。
レオンハルトも、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「リュシア、あんな戯言、耳を貸す必要はない。君は君だ。私の愛する妻だ」
「……はい、わかっています」
私は笑顔を作った。
でも、心臓の鼓動が早鐘を打っている。
セレナの言葉が、鋭い棘となって胸に刺さっていた。
『システムに書き換えられた設定』。
今の私がレオンハルトを「愛しい」と思う気持ち。
国を守りたいと思う責任感。
これらは本当に私の本心なのだろうか?
それとも、星冠値がカンストした瞬間に、私の脳が「理想の王妃」になるようプログラミングされてしまった結果なのだろうか?
左手の指輪を見る。
肌と同化したその輝きは、美しくも、私を縛り付ける絶対的な鎖に見えた。
「……殿下」
「なんだい?」
「もし、私が……私じゃなくなったら、どうしますか?」
レオンハルトはきょとんとして、それから優しく微笑んだ。
「愚問だな。たとえ君が記憶を失っても、人格が変わっても、私が君をもう一度愛し直すだけだ。……何度でも、君を見つけ出すよ」
その言葉は、とても温かく、そして逃げ場がないほど完璧だった。
その夜。
地下牢のカイルの元に、一人の訪問者が現れたという報告が入った。
侵入経路不明。監視カメラにも映らない「影」。
カイルはその人物を見て、狂喜乱舞したという。
『あの方だ! あの方が来てくれた!』
頼みの綱だった黒竜が、私の提示した「福利厚生プラン(魔力定額給付)」にあっさり寝返ったからだ。
「ギャオォォォン(魔力くれ)」
「はいはい、後であげますから。今は大人しくしていてください」
中庭の真ん中で、巨大な黒竜が犬のようにお座りをしている。その足元で、泥まみれになったカイル王子が近衛騎士たちに取り押さえられていた。
「は、離せ! 僕は第二王子だぞ! これは正当な王位継承権の行使だ!」
カイルは往生際悪く喚いているが、その顔には焦りと恐怖が張り付いている。
レオンハルト殿下が冷ややかに見下ろした。
「見苦しいぞ、カイル。……お前が頼った『力』は、リュシアの『知恵』の前に敗れ去ったのだ」
「くそっ……! なぜだ、なぜあの女なんだ! ただの公爵令嬢ごときが、なぜ竜を従え、国を動かせる!?」
カイルは私を睨みつけた。
私はドレスの裾(破れてミニスカ状態)を払い、ため息をついた。
「それは私が、あなたのように他人を利用することしか考えない人間ではなく、契約の重さを知る『社会人』だからですわ」
私はカイルの前にしゃがみ込み、小声で囁いた。
「それに、あなたは詰めが甘いです。黒竜への生贄契約書、ちゃんと読みました? 裏面に『甲(竜)は乙(契約者)の魔力供給が途絶えた場合、即座に契約を破棄できる』って小さい字で書いてありましたよ?」
「なっ……!?」
「契約書は隅々まで読む。基本です」
嘘である。そんな契約書はない。ハッタリだ。
しかし、カイルは「まさか……騙されたのか!?」と青ざめ、ガクリと項垂れた。
彼が連行されていく背中を見送りながら、私はドッと疲れが出た。
「……終わった」
これで、やっと。
やっと私の平穏な生活が……来るわけがない。
まだ最後の仕事が残っている。
◇
翌日。
王宮の大広間にて、『王家反逆罪および国家転覆未遂事件』に関する特別法廷が開かれた。
傍聴席には、騒動の真相を知りたがる貴族たちや、神殿関係者がひしめき合っている。
被告人席には、拘束具をつけられたカイル元王子(すでに廃嫡が決定)。
そして、車椅子に乗せられた元聖女、セレナ・ルミエール。
セレナは怪物化の後遺症か、顔色は土気色で、かつての可憐さは見る影もない。しかし、その瞳だけはまだギラギラと周囲を睨みつけていた。
「……私は悪くない」
開廷一番、セレナは掠れた声で主張した。
「騙されたのよ! カイル殿下に『これを飲めば王妃になれる』って言われて、無理やり薬を飲まされたの! 私は被害者よ!」
彼女はボロボロと涙をこぼし、お得意の「可哀想なヒロイン」を演じ始めた。
カイルが「貴様、裏切る気か!」と怒鳴るが、セレナは無視して私に縋り付くような視線を送ってきた。
「リュシア様ならわかりますよね? 私、操られていたんです。怪物の姿になって暴れたのも、意識がなかったんです。……お願い、助けて。私を許して……!」
会場の空気が少し揺らぐ。
確かに、彼女は薬で変異させられた被害者という側面もある。
同情を買う余地はあるかもしれない。
――今までの私なら、そう思ったかもしれない。
でも、今は違う。
私は「国の心臓」だ。情で法を曲げることは、国を腐らせることになる。
「……哀れなお芝居はおやめなさい、セレナ」
私は証言台に立ち、冷徹に告げた。
隣には、怪我をおして復帰したエルダ監査官が、大量の資料を抱えて立っている。
「エルダ、証拠物件Aを」
「はい」
エルダが魔導プロジェクターを起動する。
空中に投影されたのは、セレナとカイルが交わした『裏契約書』の写しと、地下水路での密会を記録した音声データだった。
『――ねえカイル殿下。リュシアを殺せば、私が王妃になれるのよね?』
『ああ、約束しよう』
『うふふ、楽しみ。あの女が苦しむ顔を見るためなら、魂だって悪魔に売ってやるわ』
セレナの高笑いが、大広間に響き渡る。
会場が凍りついた。
「操られていた」どころか、ノリノリで殺害計画を練っているではないか。
「こ、これは捏造よ! 音声加工だわ!」
セレナが叫ぶ。
「往生際が悪いですわね。……では、証拠物件B」
次に映し出されたのは、神殿の帳簿データだ。
セレナが「聖女の奇跡」演出のために横領した金額と、その使途が詳細に記されている。
「総額、国家予算の三パーセント相当。これだけの巨額資金が、違法薬物の購入や、暴徒を扇動するための工作員雇用に使われています。……そして、その発注書には、あなた自身の魔力署名(サイン)が残っています」
私は冷ややかに彼女を見下ろした。
「薬を飲まされた? いいえ、あなたは自ら望んで飲んだのです。その証拠に、薬瓶に残った指紋と魔力残滓は、抵抗した形跡を一切示していません」
「っ……!」
セレナは言葉を失い、ガタガタと震え出した。
逃げ場はない。
彼女が積み重ねてきた嘘、欺瞞、そして悪意は、すべて「記録」として残り、今、彼女自身を絞め殺す鎖となっている。
「これが『証拠』です。感情論でも、私の私怨でもありません。……数字と事実が、あなたの罪を証明しています」
私はファイルを閉じた。
会場からは、もはや同情の声は一つも上がらなかった。あるのは軽蔑と、恐怖のみ。
かつて聖女と崇められた少女は、今やただの犯罪者として、衆人環視の中に晒されていた。
裁判長が木槌を叩く。
「静粛に! ……被告人セレナ・ルミエール。弁明の余地なしと認める。判決は後日言い渡すが、極刑は免れないと思え」
「いや……いやぁぁぁッ!!」
セレナが絶叫した。
彼女は車椅子から転げ落ち、床を這いずりながら私を睨みつけた。
「なんでよ! なんであんたなのよ! 悪役令嬢のくせに! ただの当て馬のくせに!」
彼女は狂ったように叫び続けた。
「私が主役なの! 私が愛されるはずだったの! あんたなんか……あんたなんか……!」
衛兵たちが彼女を取り押さえようとする。
その時。
レオンハルト殿下がスッと手を挙げ、衛兵を制した。
彼はゆっくりとセレナの前に歩み寄り、氷のような眼差しで見下ろした。
「……君が主役になれなかった理由を教えてやろうか」
「……あ?」
「君は、物語(シナリオ)に頼りすぎたんだ」
レオンハルトは静かに言った。
「『聖女だから愛される』『ヒロインだから許される』……そんな甘えた幻想にしがみつき、目の前の現実や、他人の心と向き合おうとしなかった。だから君は、誰の心も動かせなかったんだ」
「……う、嘘よ……殿下だって、最初は私に優しかったじゃない……」
「それは王族としての礼節だ。愛ではない」
彼はバッサリと切り捨てた。
そして、私の肩を抱き寄せた。
「リュシアを見ろ。彼女は『悪役』という不遇な立場に置かれながらも、決して腐らず、自らの知恵と努力で運命を切り拓いた。……法を学び、国を守り、私の心さえも救った」
レオンハルトの声に熱がこもる。
「私が愛したのは『設定』ではない。『リュシア・ヴァルモン』という一人の人間の、気高く美しい魂だ。……君には、その輝きが決定的に欠けていた」
トドメの一撃だった。
セレナの瞳から光が消え、彼女は糸が切れた人形のように脱力した。
衛兵に引きずられていく彼女の後ろ姿を見ながら、私はふと、胸が痛むのを感じた。
勝った。
完璧なざまぁだ。
でも、なぜだろう。ちっとも爽快ではない。
彼女もまた、この歪んだ世界システムの被害者だったのかもしれない――なんて思うのは、私の感傷だろうか。
大扉の前で、セレナがふと足を止めた。
彼女は振り返り、虚ろな目で私を見た。
そして、最後に呪いのような言葉を吐き捨てた。
「……可哀想なリュシア」
「え?」
「あんた、勝ったつもりでしょうけど……気づいてないの?」
彼女はニタリと笑った。
「あんたも、私と同じよ。……『誓約』というシステムに選ばれて、踊らされているだけの人形よ」
ゾクリと背筋が凍った。
「国の心臓? 無限の愛? ……あはは! それって、あんたの自由意志なの? それとも、システムに書き換えられた『設定』なの?」
「黙らせろ!」
レオンハルトが叫び、扉が閉められた。
大広間に静寂が戻る。
貴族たちが「気にするな」「負け犬の遠吠えだ」と口々に私を慰めてくれる。
レオンハルトも、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「リュシア、あんな戯言、耳を貸す必要はない。君は君だ。私の愛する妻だ」
「……はい、わかっています」
私は笑顔を作った。
でも、心臓の鼓動が早鐘を打っている。
セレナの言葉が、鋭い棘となって胸に刺さっていた。
『システムに書き換えられた設定』。
今の私がレオンハルトを「愛しい」と思う気持ち。
国を守りたいと思う責任感。
これらは本当に私の本心なのだろうか?
それとも、星冠値がカンストした瞬間に、私の脳が「理想の王妃」になるようプログラミングされてしまった結果なのだろうか?
左手の指輪を見る。
肌と同化したその輝きは、美しくも、私を縛り付ける絶対的な鎖に見えた。
「……殿下」
「なんだい?」
「もし、私が……私じゃなくなったら、どうしますか?」
レオンハルトはきょとんとして、それから優しく微笑んだ。
「愚問だな。たとえ君が記憶を失っても、人格が変わっても、私が君をもう一度愛し直すだけだ。……何度でも、君を見つけ出すよ」
その言葉は、とても温かく、そして逃げ場がないほど完璧だった。
その夜。
地下牢のカイルの元に、一人の訪問者が現れたという報告が入った。
侵入経路不明。監視カメラにも映らない「影」。
カイルはその人物を見て、狂喜乱舞したという。
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