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19話「持参金の回収準備」
オスヴァルドが侯爵家に押しかけてきた翌日。
私は実家の応接室で、王都でも指折りの法務士と分厚い書類の束を前に向かい合っていた。
「これが、ルクレール伯爵家に対する持参金の返還請求書、および違約金の算定書です」
法務士が机の上に滑らせてきた羊皮紙には、気が遠くなるような桁の数字が並んでいた。
私が侯爵家から嫁ぐ際、ルクレール家に持ち込んだ持参金。
それは、赤字領地を立て直すための莫大な投資だった。
契約書には明確に『正妻とその子の地位を保証するための資金であり、これが毀損された場合は全額返還を求める』と記されている。
「監察院の監査により、伯爵家の資金流用は完全に証明されました。これをもって、持参金の即時返還を求める法的手続きを開始します」
「問題ありません。進めてください」
私は即答した。
「ただし、現在の伯爵家には現金が残っていません。したがって、返還の代償として彼らが所有する共同財産……王都の別邸、領地の美術品、そして最終的には『領地運営権』の差し押さえへと移行することになるでしょう」
領地運営権。
貴族にとっての命そのもの。
それを奪われるということは、オスヴァルドが平民へと転落することを意味する。
「構いません。彼が領地を持ち続ければ、領民が飢えて死ぬだけです。早急に剥奪への布石を打ってください」
「承知いたしました。冷徹で的確なご判断、恐れ入ります」
法務士が書類を鞄にしまい、席を立ったその時。
応接室の扉が控えめにノックされ、老執事が入ってきた。
「お嬢様。ルクレール伯爵家より、レオン坊ちゃま宛てに荷物が届いておりますが……」
執事の声には、明らかな警戒の色が混じっていた。
この状況で、あの家から贈り物が届くなど異常だ。
「送り主は?」
「オスヴァルド様のお名前になっております。『レオンの七歳の誕生日を一足早く祝うための贈り物だ』という添え状がついておりまして……」
確かに、あと数週間でレオンは七歳になる。
しかし、今まで息子の誕生日など気にも留めなかった男が、なぜ急に?
「荷物はどこに?」
「念のため、別室のテーブルの上に置いてございます。いかがなさいますか。危険ですので、私どもで処分いたしましょうか」
「……いいえ」
私は立ち上がり、目を細めた。
ただの嫌がらせか、それとも何か別の意図があるのか。
確かめなければならない。
「私が確認します」
別室に案内されると、そこには綺麗な青い包装紙で包まれた、木箱のようなものが置かれていた。
リボンがかけられ、一見するとただの豪奢なプレゼントに見える。
「開けますか?」
私は実家の応接室で、王都でも指折りの法務士と分厚い書類の束を前に向かい合っていた。
「これが、ルクレール伯爵家に対する持参金の返還請求書、および違約金の算定書です」
法務士が机の上に滑らせてきた羊皮紙には、気が遠くなるような桁の数字が並んでいた。
私が侯爵家から嫁ぐ際、ルクレール家に持ち込んだ持参金。
それは、赤字領地を立て直すための莫大な投資だった。
契約書には明確に『正妻とその子の地位を保証するための資金であり、これが毀損された場合は全額返還を求める』と記されている。
「監察院の監査により、伯爵家の資金流用は完全に証明されました。これをもって、持参金の即時返還を求める法的手続きを開始します」
「問題ありません。進めてください」
私は即答した。
「ただし、現在の伯爵家には現金が残っていません。したがって、返還の代償として彼らが所有する共同財産……王都の別邸、領地の美術品、そして最終的には『領地運営権』の差し押さえへと移行することになるでしょう」
領地運営権。
貴族にとっての命そのもの。
それを奪われるということは、オスヴァルドが平民へと転落することを意味する。
「構いません。彼が領地を持ち続ければ、領民が飢えて死ぬだけです。早急に剥奪への布石を打ってください」
「承知いたしました。冷徹で的確なご判断、恐れ入ります」
法務士が書類を鞄にしまい、席を立ったその時。
応接室の扉が控えめにノックされ、老執事が入ってきた。
「お嬢様。ルクレール伯爵家より、レオン坊ちゃま宛てに荷物が届いておりますが……」
執事の声には、明らかな警戒の色が混じっていた。
この状況で、あの家から贈り物が届くなど異常だ。
「送り主は?」
「オスヴァルド様のお名前になっております。『レオンの七歳の誕生日を一足早く祝うための贈り物だ』という添え状がついておりまして……」
確かに、あと数週間でレオンは七歳になる。
しかし、今まで息子の誕生日など気にも留めなかった男が、なぜ急に?
「荷物はどこに?」
「念のため、別室のテーブルの上に置いてございます。いかがなさいますか。危険ですので、私どもで処分いたしましょうか」
「……いいえ」
私は立ち上がり、目を細めた。
ただの嫌がらせか、それとも何か別の意図があるのか。
確かめなければならない。
「私が確認します」
別室に案内されると、そこには綺麗な青い包装紙で包まれた、木箱のようなものが置かれていた。
リボンがかけられ、一見するとただの豪奢なプレゼントに見える。
「開けますか?」
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