冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人

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第30話(最終話):君は、俺だけの光

始まりの神殿は、もはや、神の領域ではなかった。
禍々しい瘴気が渦巻き、邪龍の怨念が、空間そのものを歪めている。
その最奥、『天の祭壇』で、私たちは、ついに〝それ〟と対峙した。

具現化しかけた、邪龍の魂。
それは、明確な形を持たない、巨大な、悪意の塊だった。
ただ、そこにいるだけで、精神が削られていく。

「リリア!」
「はい!」

カインと私は、祭壇の中央に立つと、強く、手を繋ぎ合った。
彼の右手には、『太陽の欠片』の力が、私の左手には、『月の涙』の力が、それぞれ、光となって溢れ出す。

赤と、青。
太陽と、月。
守護騎士と、聖女。

二つの力が、一つに溶け合っていく。

私たちの体が、まばゆい、金色の光に包まれた。
その光の中で、私は、見た。
金色の髪の聖女アレイアと、カインによく似た守護騎士が、私たちの後ろに立ち、優しく、微笑んでいるのを。

『───あとは、頼みます』
『───我らの、悲願を』

魂の祝福。
五百年の時を超え、二つの魂が、私たちに、すべてを託してくれた。

もう、怖いものはなかった。
私たちは、二人で、一つなのだから。

カインと、私の声が、完全に、重なった。

「「───***破邪顕正(はじゃけんせい)!!***」」

金色の光が、巨大な奔流となって、邪龍の魂へと放たれた。
それは、世界から、あらゆる闇を消し去る、浄化の光。

『ギシャアアアアアアアアアッ!!!』

邪龍の、断末魔の叫びが、響き渡る。
悪意の塊は、聖なる光に焼かれ、塵となって、消滅していった。

瘴気が、晴れていく。
空に、暖かい、太陽の光が戻ってくる。

戦いは、終わったのだ。

「……はぁ……はぁ……」

力の反動で、私は、その場に崩れ落ちそうになる。
それを、カインが、力強く、抱きしめてくれた。

「……終わったのか」
「はい……終わりましたね」

私たちは、互いの温もりを確かめ合うように、強く、抱きしあった。
二人とも、生きている。
そして、未来は、私たちの手の中にある。

それから、半年後。

邪龍の脅威が去ったエルドラ王国は、エリアス王子……改め、新国王エリアスの手によって、再建への道を歩んでいた。
カインの反逆の罪は、国を救った功績によって、完全に雪がれた。

しかし、彼は、騎士団長に戻ることはしなかった。

「カインさーん! ご飯、できましたよー!」

国の喧騒から離れた、穏やかな田舎町。
小さな家の庭で、洗濯物を取り込んでいた私は、家の中に向かって、そう呼びかけた。

「ああ、今行く」

家から出てきたのは、騎士の鎧ではなく、ラフなシャツを着た、カインだった。
彼は、私の隣に来ると、洗濯かごを、ひょいと持ってくれる。
その表情は、騎士団長だった頃の、氷のような冷たさは、どこにもない。

「ありがとう」
「いいや。……それより、リリア」

彼は、私の腰を、そっと抱き寄せると、その額に、優しくキスを落とした。

「今日の、お前も、可愛いな」
「も、もう……! 毎日、言わないでください!」

顔を真っ赤にする私を見て、彼は、楽しそうに笑う。
彼の、かつてのヤンデレ気質は、今では、少し過剰な、甘い愛情表現へと変わっていた。

「俺は、何度でも言うぞ」

彼は、私の瞳を、愛おしそうに、真っ直ぐに見つめて言った。

「お前は、永遠に、俺だけの光だ。……愛している、リリア」

その言葉に、私は、世界で一番の幸せを噛み締めながら、微笑み返す。

冷酷な騎士団長に、出来損ないと蔑まれた、あの日から始まった、私の異世界生活。
それは、たくさんの涙と、恐怖と、そして、かけがえのない愛に満ちた、物語だった。

そして、その物語は、これからも、彼の隣で、ずっと、ずっと、続いていく。

(完)
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