妹が私の全てを奪いました。婚約者も家族も。でも、隣国の国王陛下が私を選んでくれました

放浪人

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第二十五話『雪解けと、新たな旅立ちの予感』

「お姉様……本当に申し訳ございませんでしたっ!」

セレーナの魂からの謝罪。
その震える声を聞いて私はゆっくりと立ち上がり彼女の前にしゃがみこんだ。

そしてその肩に優しく手を置く。

「……もういいのよセレーナ」

「顔を上げて」

私の言葉にセレーナは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
その瞳にはもうかつてのような嫉妬や憎悪の色はどこにもなかった。

「でも、でも私はお姉様に、取り返しのつかないことを……!」

「ええそうね。あなたのしたことは決して許されることではないわ。私も一生忘れることはないでしょう」

私の静かだが厳しい言葉にセレーナの顔が再び絶望に染まる。
私は言葉を続けた。

「でもそれとこれからは別。私たちは姉妹なのだから。過去は変えられないけれど未来はこれから作っていくことができる」

「……お姉様……」

「だからもういいの。その代わり……」
私はにっこりと微笑んだ。
「これからは私のために精一杯働きなさい。いいわね?」

私の言葉にセレーナは何度も何度も深く頷いた。
私と妹の間にあった長くて冷たい冬。
その氷がついに完全に溶けた瞬間だった。

翌日からセレーナは私の専属侍女の『見習い』として正式に働くことになった。

もちろん先輩であるアンナの指導はそれはそれは厳しいものだった。

「そこ! 廊下の拭き方が全くもって甘いですわ!」
「なんですのその紅茶の温度は! ぬるすぎて妃殿下のお口に合うとでも!?」
「妃殿下への言葉遣いがいちいち馴れ馴れしいですわよ! もっと敬意を払いなさい!」

アンナの愛のムチ(?)にセレーナは毎日泣きそうになりながらも必死で食らいついていた。
その様子を私とアレクシオス陛下は離宮のテラスから微笑ましく見守る。

「……アンナが一番楽しそうだな」
「ええ本当に……」

そんな穏やかで幸せな日々。
しかしその平穏は長くは続かないことを私たちは知っていた。

リンドール公爵がもたらした情報、『黒き蛇』の残党と『月の聖杯』。
それは世界にとって新たな脅威の火種だった。

ある日の午後、アレクシオス陛下は私を真剣な目で見つめて言った。

「イリス。『月の聖杯』が万が一にも奴らの手に渡るようなことがあれば世界は再び危機に陥る。聖女である君の力が必要になるかもしれない」

「……はい」

「だから……」
陛下は私の手を取り優しく微笑んだ。
「二人で『水の都』へ行こう。新婚旅行もまだだったしな」

それは甘いお誘いの言葉。
そして同時に新たな冒険の始まりを告げるファンファーレだった。

旅立ちの準備を進める私と陛下。
その姿を見ていたセレーナが意を決したように私たちの前に進み出た。

「お姉様、陛下!」

「私もその旅にお連れください!」

彼女の瞳にはもう迷いや甘えはなかった。
ただひたむきな決意の光だけが強く強く宿っていた。

「今度こそ私が……! 私がお姉様のお役に立ってみせます!」
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