37 / 60
第三十七話『新しい力と、ざまぁの後日談』
私の力はなくなってなどいなかった。
むしろペンダントという枷から解き放たれより自然により優しく私の魂と一つになっていたのだ。
それはおばあ様から与えられた力ではなく私自身が生まれながらに持っていた本来の力。
そのことに気づいた時私の心は晴れやかな青空のように澄み渡っていった。
「すごいぞイリス! 君は歩く聖樹になったのだな!」
「まさに生命の女神だ!」
私の新しい力を知ったアレクシオス陛下は大喜びでまた少しズレた賛辞を贈ってくれる。
「ではイリス、試しにこの私の心の中に君への愛という名の大輪の花を咲かせてみてはくれないだろうか!」
「陛下、それは私の力ではどうにも……」
「なんと! 聖女の力をもってしても不可能なことがあるとは……!」
本気でがっかりしている陛下に私は苦笑するしかない。
「これからはお姉様のことをこうお呼びしますわ! 『緑の手を持つ聖女(グリーン・ハンド・セイント)』!」
セレーナがキラキラした目で私に勝手な二つ名をつけようとする。
「却下ですわセレーナさん。安直すぎます」
しかしその提案は即座にアンナによってバッサリと切り捨てられた。
そんな風に穏やかで笑いの絶えない日々が月の離宮に戻ってきた。
戦いの緊張から解放され誰もが心からの平穏を楽しんでいた。
そんなある日。
一通の手紙が私の元に届けられた。
差出人はアルメリア侯爵家。
私の父からの手紙だった。
封を開ける前からその内容はおおよそ想像がついた。
私はアレクシオス陛下の前で静かにその手紙を読み始める。
そこにはやはり予想通りの悲惨な現状が弱々しい文字で綴られていた。
――領地は王家からの沙汰により没収寸前であること。
――先代から続いていた事業はことごとく破綻し莫大な借金だけが残ったこと。
――その心労から父自身が病に倒れ母も後を追うように寝込んでしまったこと。
手紙の最後には私への見苦しいまでの命乞いの言葉が書き連ねてあった。
『どうかお前の力で我らを救ってはくれまいか』と。
さらに追伸としてこんな一文も添えられていた。
『追伸:先日街の酒場でフレデリック殿を見かけた。彼はバーンシュタイン公爵家から勘当され全ての身分を剥奪されたそうだ。今は日銭を稼いでは安酒を煽るだけの荒んだ生活を送っている。見る影もなかった』
かつての婚約者の哀れな末路。
私から全てを奪った家族の自業自得の報い。
私はその手紙を読み終えると何の感情も見せず静かに暖炉の火の中へと投げ入れた。
燃え上がる炎が私の過去を完全に灰に変えていく。
「……よかったのかい?」
陛下が心配そうに尋ねる。
「はい。もう私には関係のない人たちですから」
これで全てが終わった。
そう思った時。
父からの手紙が入っていた封筒の中に、もう一つ別の封筒が同封されていることに私は気づいた。
そこには気品のある美しい紋章が刻印されている。
バーンシュタイン公爵家の紋章だ。
『イリス妃殿下に内密にお会いしお渡ししたい儀あり。バーンシュタイン公爵』
フレデリック様の、お父上から……?
一体何の用だろうか。
むしろペンダントという枷から解き放たれより自然により優しく私の魂と一つになっていたのだ。
それはおばあ様から与えられた力ではなく私自身が生まれながらに持っていた本来の力。
そのことに気づいた時私の心は晴れやかな青空のように澄み渡っていった。
「すごいぞイリス! 君は歩く聖樹になったのだな!」
「まさに生命の女神だ!」
私の新しい力を知ったアレクシオス陛下は大喜びでまた少しズレた賛辞を贈ってくれる。
「ではイリス、試しにこの私の心の中に君への愛という名の大輪の花を咲かせてみてはくれないだろうか!」
「陛下、それは私の力ではどうにも……」
「なんと! 聖女の力をもってしても不可能なことがあるとは……!」
本気でがっかりしている陛下に私は苦笑するしかない。
「これからはお姉様のことをこうお呼びしますわ! 『緑の手を持つ聖女(グリーン・ハンド・セイント)』!」
セレーナがキラキラした目で私に勝手な二つ名をつけようとする。
「却下ですわセレーナさん。安直すぎます」
しかしその提案は即座にアンナによってバッサリと切り捨てられた。
そんな風に穏やかで笑いの絶えない日々が月の離宮に戻ってきた。
戦いの緊張から解放され誰もが心からの平穏を楽しんでいた。
そんなある日。
一通の手紙が私の元に届けられた。
差出人はアルメリア侯爵家。
私の父からの手紙だった。
封を開ける前からその内容はおおよそ想像がついた。
私はアレクシオス陛下の前で静かにその手紙を読み始める。
そこにはやはり予想通りの悲惨な現状が弱々しい文字で綴られていた。
――領地は王家からの沙汰により没収寸前であること。
――先代から続いていた事業はことごとく破綻し莫大な借金だけが残ったこと。
――その心労から父自身が病に倒れ母も後を追うように寝込んでしまったこと。
手紙の最後には私への見苦しいまでの命乞いの言葉が書き連ねてあった。
『どうかお前の力で我らを救ってはくれまいか』と。
さらに追伸としてこんな一文も添えられていた。
『追伸:先日街の酒場でフレデリック殿を見かけた。彼はバーンシュタイン公爵家から勘当され全ての身分を剥奪されたそうだ。今は日銭を稼いでは安酒を煽るだけの荒んだ生活を送っている。見る影もなかった』
かつての婚約者の哀れな末路。
私から全てを奪った家族の自業自得の報い。
私はその手紙を読み終えると何の感情も見せず静かに暖炉の火の中へと投げ入れた。
燃え上がる炎が私の過去を完全に灰に変えていく。
「……よかったのかい?」
陛下が心配そうに尋ねる。
「はい。もう私には関係のない人たちですから」
これで全てが終わった。
そう思った時。
父からの手紙が入っていた封筒の中に、もう一つ別の封筒が同封されていることに私は気づいた。
そこには気品のある美しい紋章が刻印されている。
バーンシュタイン公爵家の紋章だ。
『イリス妃殿下に内密にお会いしお渡ししたい儀あり。バーンシュタイン公爵』
フレデリック様の、お父上から……?
一体何の用だろうか。
あなたにおすすめの小説
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~
放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」
最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!?
ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
初夜に放置された花嫁は、不誠実な男を許さない~不誠実な方とはお別れして、誠実な方と幸せになります~
明衣令央
恋愛
初夜に新郎は元婚約者の元へと走り、放置された侯爵令嬢セシリア。
悲しみよりも屈辱と怒りを覚えた彼女は、その日のうちに父に連絡して実家に帰り、結婚相手に婚姻無効叩きつけた。
セシリアを軽んじた新郎と元婚約者は、社交界の制裁を受けることになる。
追い詰められた元婚約者の男爵家が放った刺客に襲われそうになったセシリアを救ったのは、誠実で不器用な第三騎士団副隊長レオン。
「放置どころか、一晩中、離すつもりはないよ」
初夜から始まったセシリアの物語は、やがて前回とは違う初夜へと辿り着く――。
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
捨てられ令嬢は騎士団長に拾われ、いつのまにか国を救って溺愛されてました ~「地味で役立たず」と婚約破棄された私が、最強騎士様の唯一無二の光に
放浪人
恋愛
伯爵令嬢エレオノーラは、婚約者であるアルフォンス王子から「地味で役立たず」と罵られ、夜会の中、一方的に婚約破棄を告げられる。新たな婚約者として紹介されたのは、王子の寵愛を受ける派手好きな公爵令嬢だった。
絶望と屈辱の中、エレオノーラを庇ったのは、王宮騎士団長カイウス・ヴァレリアス。彼は冷静沈着で近寄りがたいと噂されるが、エレオノーラの隠れた才能と優しさを見抜いていた。
実家からも冷遇され、辺境の叔母の元へ身を寄せたエレオノーラは、そこで薬草の知識を活かし、村人たちの信頼を得ていく。偶然(?)辺境を訪れていたカイウスとの距離も縮まり、二人は次第に惹かれ合う。
しかし、元婚約者の横暴や隣国との戦争の危機が、二人の穏やかな日々を脅かす。エレオノーラはカイウスと共に困難に立ち向かい、その過程で自身の真の力に目覚めていく。