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第2章

関係の改善

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時間は少し前、エリックが起きて、事をやらかす30分ほど前のこと。
この日、1番に起きたのはマリだった。

「ふんっ、ふわぁー」

体を伸ばした後、大きな欠伸をして周りを見渡す。すると視界にエリックが入った。
少しの間エリックに見とれていた。
するといきなり耳元で

「マリちゃん、何を見てるの?」

「っ!?」

ビクッとして後ろを見るとルルがいた。

「な、なぁーんだ、ルーちゃんか......びっくりしたぁ」

「びっくりさすつもりはなかったんだけどな......で、何を見てたの?」

「いやぁー、その...」

動揺しながら横目でエリックを見るマリ。
ルルはその視線を見逃さなかった。初めから誰を見ていたのか分かっていたが。

「エリックの事を見てたんでしょ?」

ビクッ!

マリの体が一瞬反応した。

「ま、それ以外見るものは無いけどね」

「あ、あのぉ......ご、ごめんなさいルーちゃん!」

「え?」

いきなりのことにちょっと意味がわからなかった。

「だって、ルーちゃんとご主人様はその......恋人、だし。それに、マリがご主人様のことをじっと見てたら怒っちゃうよね...」

しょぼんとしながらルルに言う。でもルルの気持ちは違った。

「マリちゃんがエリックのことを好きなのは知ってるよ。もちろんユイちゃんもね!」

笑いながら話すルルに少し驚くマリ。
驚くのも無理もない。恋人がいる人を他人が熱い目で見て、それを見た恋人はいい気分はしないだろう。
でもルルはそれを笑いながら話しているのだ。

「一応、一夫多妻はこの国でも認められているし、エリックの場合は次男だけど侯爵家の息子として扱われる。それは準貴族と同じ扱いを受けるからそれなりの地位があるし、どこかの貴族の娘さんとかから婚約を申し込まれてもおかしくないから、それなりに婚約相手が増えるのは覚悟の上だったしね!」

「そ、そうなの?」

「うん!でも、エリックは冒険者になるという道を選んだからそういうのとはほとんど無縁だったけど」

苦笑しながらルルは言った。

「じゃあ、ルーちゃんも準貴族なの?」

「私は扱い上は平民だよ」

この国では貴族当主が貴族、その兄弟や、子供、そして親が準貴族、それ以上離れると平民扱いになる。ルルは当主、リックの弟の娘なので平民、エリックは当主の息子なので準貴族だ。

リックの弟はよく頭が回るため、リックが王都に出向いている間は弟が代わりに領地をまとめているらしい。なので一緒に住んでいる。

「私の場合はおじ様、リック侯爵の屋敷にお父さんが住んでいるから私も一緒に住んでたんだよ」

「そうだったんだ」

「でさ、エリックを振り向かせたくない?」

「いやいやいや、でもそれはルーちゃんが......」

「私は大丈夫だよ!マリちゃんとユイちゃんもエリックの恋人になったら楽しそうだしね!」

「で、でも。本当にいいの?」

「私はそれでもいいよ」

「ううっ、ちょっと怖いなぁ。もし、失敗して振られちゃったらこの後からの旅が気まずくなっちゃうし...」

「そこは大丈夫だと思うよ!エリックは積極的に行けば折れるしね!」

「でも、どんなことをすればいいの?」

「エリックは結構お寝坊さんだから、起きるのは遅い。だから起きる前にみんなを起こして外に出て、朝ごはんでも作る。
そのあいだにマリちゃんがエリックのことを起こしに行く。起こされた時に『あと5分』はエリックの口癖みたいなものだからそれを言った時に『私も5分だけ』みたいなことを言ってエリックのベッドに入れば多分落ちるよ!」

「そんな勇気ないよぉー!」

「大丈夫だって!マリちゃんならできる!」

そんな感じで決まった作戦だった。



エリックside
(これからどうすればいいんだぁー!マリとはやらかしてしまったし、ルルとは危険な関係に......)

「ご主人様っ!朝食の時間なので行きましょ!」

「......うん。な、なぁ。」

「どうしました?」

キョトンとするマリ。

「ルルに、謝った方がいいよな?」

マリはハッとして自分がやったことに気づく。あそこまでやるとは計画にもなかったのだ。

「そ、それは......」

マリもルルのことが少し怖くなってきた。
ルルから言われた作戦とはいえ、大胆にやりすぎてしまったからだ。

「一緒に謝りましょう...」

「そうだな、それが1番?いいかもな」



「......ということです」

俺は今、ルルの前で土下座をしている。
こうなった理由は簡易な家を出てルルのところに行ってすぐに華麗なジャンピング土下座を決めたからである。

「本当にすいませんでしたァ!」

「ま、マリもごめんなさいっ!」

「い、いや、あやまらなくても......」

「「え?」」

返ってきたのは意外な言葉だった。

「この計画を立てたのは私だし、まぁちょっとやり過ぎかなぁとは思うけど私は別に怒ってないよ?ただ......ちょっと嫉妬してるだけ」

最後の言葉はもじもじしててあまり聞き取れなかったがなんか計画?があったらしい。


そして俺は一連の流れを聞いて少しほっとした。
マリもルルがそこまで怒っていなかったことにほっとしたらしい。

「で、マリちゃんはエリックに気持ちを伝えたの?」

「あっ!」

「え、気持ち?」

「まだそんなこと言うの?」

「はい?」

「はぁ、マリちゃん気持ちを伝えたら?」

「え、えっとぉ......その、ま、マリはぁ...ご主人様のことが好きですぅ...」

マリがもじもじしながら恥ずかしそうに言う。

「そ、そうなのか?」

「やっぱり、エリックはエリックだね」

呆れたようにルルは言った。
ユイと黒龍は隣で笑っている。

(てか、いつの間に仲良くなったんだよ!)

ついツッコミを入れてしまった。

「ほら、返事は?返してあげないとマリちゃんが可哀想でしょ!」

「あぁ、ええっと......俺にはルルがいるし、この国は一夫多妻は認められてる。それでもいいか?」

「ご、ご主人様の隣にいられるならそれでもっ!」

「じゃあ、よろしくお願いします、かな?」

「はいっ、こちらこそ!」

「「ヒューヒュー」」

ユイと黒龍から冷やかしが飛んできた。

「2人とも!からかうなって!」

「「痛い痛いー!」」

俺は二人同時に頭ぐりぐりをした。
腕が4本ある訳では無いから2人の頭を横にくっつけてだ。

「ふふっ、賑やかだね!」

「そうだねっ!」

朝から大はしゃぎな5人だった。




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