異世界帰りの彼は、1500キロのストレートが投げられるようになった野球魔人。どうやら甲子園5連覇をめざすようです。

閃幽零

文字の大きさ
37 / 65

お前を甲子園に連れていく

しおりを挟む
 さらにいくつか諸々、彼らの『設定』について聞いた後、トウシに、練習試合のDVDとスコアと記録ノートを渡して、古宮はグラウンドを後にした。

 彼女の姿が完全に見えなくなってから、

「信じましたかね? 僕らのバックボーン」

 若干不安そうな顔を浮かべているツカムに、

「矛盾もスキもない。所々で違和感が匂う背景やけど、異常さを覚えるほどでは絶対にない。少なくとも、絶対に秩序は乱れへん。問題無い」

「だといいのですが」

「ぴよぴよ(160キロ超えの球をなんなく捕るツカムくんの身体設定に関しては、あの説明だと、正直、微妙な気が……)」

「ふかし扱いされるんは別にかまわん。証拠を提出せなあかん訳やないしな。ツカムの捕球能力かて、所詮は捕るだけなんやから、称賛はされても、異常視はされへん。二百キロ・三百キロならともかく、たかが160キロくらいやったら、練習しだいで誰でも捕れるようになる。そもそも、ワシ、設定的に、試合で128キロ以上の球を投げるつもりないしな」

「ぴよぴよ(本当にその球速で投げ続けるつもり? さすがに、遅すぎると思うのだけれど)」

「たかが高校生相手やで。コントロールと変化球だけで十分余裕やて。一応、球種は五つ投げられる事にしとるしな」

「カーブ、シュート、スライダー、スプリット、ナックル……でしたっけ?」

「ぴよぴよ(高校生がナックルなんて投げて秩序的に問題はないの?)」

「コントロールがつかん上、不完全やから滅多に揺れんというマイナスポイントをつける。それなら、いかにも高校生が投げそうな、ほとんどチェンジアップの意味しか持たんクソ微妙ナックルという評価を受けるはずや」

 そこまで話したところで、

「ん?」

 トウシは、グラウンドに入ってくる人影を見つけて口を閉じた。

(樹理亜? こっちに向かってきとる。何の用や?)

 いぶかしい目を浮かべたまま、

「ふたりとも、今日はもう帰ってええ。ほなな」

「え、あ、はい」

「ぴよぴよ(ん? あ、ああ……あの変な女がこっちに来ているからね。あなたも大変ね)」

「もう慣れた」




 ★





「で、何の用や?」

「今日、一緒に行動してみてハッキリとわかったけど、あの女、異常」

「そんなん知っとる。せやから監視を頼んでんねん。それ言いにきただけか? ほな、ワシ帰るけど」

「あともう一つ」

「なんやねん」

「あんた、まさか、本気で勝つつもりじゃないよね?」

「あ?」

「西教の選手を目の当たりにして、ハッキリとわかった。あそこは強い。この学校は弱い」

「で?」

「三分は悪くない投手だけど、決して最高の投手じゃない。最高クラスの選手ばかりの高校には歯が立たない」

「せやろな」

「じゃあ、どうして、西教の偵察なんて行かせた? 無意味だろ」

「おまえを……」

「え、なに?」

「甲子園に連れていく」

「……」

「そのためや」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...