JKが小説に書いた転生者は、売国政府を断罪する怪物で――世界が大発狂

閃幽零

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トコ1話 はじまりの投稿。

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 トコ1話 はじまりの投稿。

 昼休みの教室。
 『薬宮(くすりのみや)図子(とこ)』は机に突っ伏し、コンビニパンをかじりながらスマホをいじっていた。
 目立たず、余計なことを言わず、一日を無難に過ごす――それが彼女の処世術だった。

 しかし、その静けさは突然破られる。

「ねぇ、薬宮。あんた、マジで感じ悪いんだけど」

 ギャル数人が机を囲む。
 カラコンとアイラインの奥から、爛々とした視線が図子に突き刺さる。
 一人は机の端を靴で小突き、パンの袋がカサリと揺れた。

「……別に、何もしてへんけど」

「それがムカつくっての。『私、あなたたちとは違いますから』って態度」

「えぇ……そんなつもりないし。もしかして、関西弁が気に入らんの? 大阪から引っ越してきただけやで」

「マジうざい。かわいこぶるのやめてくれない?」

「なにが? どれが?」

 これはどう答えても無駄だ、とトコは直感した。

(鬱陶しいな……どうしようかな……)

 などと辟易していた、その時、教室中に甲高いアラームが響き渡った。

【緊急速報】
〈渋谷で正体不明の男が暴れています。近隣にいる方は直ちに避難してください〉

 全員のスマホが一斉に震え、教室がざわつく。

「なにこれヤバ……」
「テロ? 日本で? エグ」

 クラスメイトが口々に騒ぎ立てる中、トコは画面を凝視した。
 そこには、青い長羽織の男が映っている。
 彼を見て、胸の奥で鼓動が妙に速くなるのを感じた。

 恐怖というより、もっと別の何か。
 まるで、ずっと探していた物語の扉が急に開いたような――そんな熱。


 ★


 ――放課後、夕方。
 トコの自室、六畳ワンルーム。
 小さなテレビが薄暗い部屋を照らしていた。

『速報です――総理大臣が、渋谷で……殺害されました!』

 キャスターの絶叫。
 映し出されたのは、スクランブル交差点に立つ長羽織の男。
 戦車も銃も意味をなさず、総理は黒い渦に呑み込まれて消えた。

 総理を殺した怪物は、テレビカメラを指差し、

『見ているか、民衆。俺はセンエース。詳細な自己紹介は省く。俺のことは、怪物と忌避してもいいし、悪魔と蔑んでもいい。好きにしろ。とりあえず、この国を浄化し、そして世界にケンカを売っていく。――今日から世界は変わる。数奇な運命と向き合う覚悟だけ固めておけ』

 トコは無意識に息を呑んだ。
 恐怖よりも先に、胸の奥を焼くような熱が走る。

(不謹慎や。けど……この衝動……残したい。何かに……何か……なにか……そうやっ)

 心の中で言葉にならない衝動が渦を巻く。
 トコは古びたノートパソコンを開き、キーボードを叩き始めた。
 渋谷に現れたセンエースが暴れる様を情緒たっぷりに。

 思考より速く指が動き、胸の熱を文章に変えていく。

 気がつけば、ひとつの小説が完成していた。

「タイトルは……どうしようかな……『転生』ってつけたほうが……見てもらえるやろな。どうせなら文学もつけたろ。……『どこが文学やねん』って感じで、違和感がフックになるやろ……」

 決定したタイトルは『転生文学センエース』。
 ダサさが逆に洒落ているし、韻も踏めているのでいい感じ……と、トコは思う。

「さぁて……どんな反応がくるかな……別にバズらんでもいいけど、せめて、一人ぐらいは読んでくれ……」

 震える指先で投稿ボタンを押す。

 数分後、PVの数字が『0』から『1』に変わった。
 誰かが読んでくれた。

 その瞬間、薬宮図子の小さな部屋から――世界を揺らす物語が放たれた。

 感想も一つついた。
 『文章下手』

 トコはちょっと泣いた。
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