JKが小説に書いた転生者は、売国政府を断罪する怪物で――世界が大発狂

閃幽零

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セン4話 裁かれる支配層。

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 セン4話 裁かれる支配層。

【国際放送/LIVE】

 土曜の朝、渋谷。
 スクランブル交差点は警視庁と自衛隊の合同管制で完全封鎖され、歩道には立入禁止テープと可搬式バリケードが連なる。
 路面は前夜の消火でまだ湿っており、排水口の奥から焦げと薬品の匂いが立ち上る。
 上空には報道ヘリのローター音と、自治体許可を受けた無人機の低い唸り。
 電柱の拡声器は避難指示ループを止め、
 代わりに『これより国際中継を開始します』というアナウンスが淡々と流れた。

 前夜の国連安保理緊急決議に基づき、『渋谷における公開討議の実施』と全世界への同時配信が要請された。
 国連広報局(UN Web TV)の衛星回線に、NATOの放送バックボーンとASEANの中継網が相互接続され、ITU(国際電気通信連合)が周波数調整を支援。
 QFRONT、MAGNET、そしてSHIBUYA109の大型ビジョンは非常電源に切り替わり、広告枠は一斉に中断。数百ミリ秒の衛星遅延を挟みながら、スクリーンは国際同時生中継の映像へとフェードした。


 ★

『え、何これ? 渋谷のスクリーンに世界の首脳が並んでる……センがやってんの?』
『違う。各国が勝手に動いてる。昨日、米中がミサイルを撃って、でも全部防がれて失敗しただろ。もう武力で殺せないって証明されてしまった』
『だから、今度は話し合いでってこと?』
『そう。責任は日本に押しつけたまま、【人類代表として対話する】という体裁を作ろうとしたんだ。国連が緊急決議を通して、各国首脳を中継で出す形にした』
『でも、なんで渋谷?』
『センを自国に呼びたくないだろ。俺だって、センエースを自室には呼びたくないよ』

 ★

 ホワイトハウス、人民大会堂、エリゼ宮、ダウニング街。
 ――各国首脳のクローズアップが、無人の交差点の空へ幾枚も並ぶ。
 誰も笑わない。カメラの向こうから、彼らの喉の固さだけが伝わる。


「This is a message from the United States…」


 冒頭の英語が流れた瞬間、センは鼻で笑った。


「日本語で話せ」


 スクリーン越しの『世界』が一瞬凍る。
 同時通訳ブースの赤ランプが点滅し、回線オペレーターが慌ててチャンネルを切り替える。
 首脳たちはわずかに視線を泳がせ、隣席の補佐官へ目だけで合図を送った。

「俺は日本語でしゃべっているだろう。合わせろよ。なめんな」

 たった一行がSNSのトレンドを焼き替える。

 #日本語強要外交
 #ShibuyaEntity
 #舐めんなよ

 結局、各国代表は日本語同時通訳を介して話し始めた。
 防衛、経済、外交――整った文言が順序よく並ぶが、核心には触れない。
 用意された紙の音だけがマイクに乗る。

 欧州の代表が喋っている途中で、センは冷たく言い放つ。

「もういいよ。……これは、この世界の歴史でもっとも大事な話し合いだぜ。面と向かってやろうや。来いよ。ここまできて、直接、俺の目を見て話せ。安全圏から高みの見物なんざ許さねぇ」

 首脳たちは黙した。拒否の言葉は出ない。
 こうして『渋谷サミット』の開催が決まった。

 ★

 【SNS】

『#日本語強要外交 で草、でもかっけーな』
『いやこれ完全に恫喝じゃん。マジで危ないわ』
『日本語で話せ=日本の立場を強制的に格上げしたってことだろ?』
『外交プロトコルぶち壊してて草。通訳陣泣いてる』
『世界の首脳が渋谷で裁判されるとか映画超えてんだが』
『こいつ独裁者ムーブやん。拍手してるやつ頭おかしい』
『でも正直スカッとした。英語一強の国際政治ぶっ壊した感』
『ShibuyaEntityが歴史の教科書に載る瞬間をリアタイしてるとか震える』
『これから世界どうなるんだよ……』

 ★

 ――放送が終わるや否や、日本国内の権力層に動揺が走った。
 各国首脳とセンの直接対話が『渋谷サミット』として全世界に定着すれば、日本の財界や官僚機構、宗教勢力が割り込む余地は消える。
 今のうちに接触しなければ、主導権を完全に奪われる。
 最悪、日本の利権が、勝手に切り売りされる。
 ――その焦りが、彼らを動かした。

 封鎖線の最内周――神南一丁目の検問に、黒塗りの公用車が列を作る。
 都庁・内閣官房共同で発行された一時通行証のQRを端末が読み取り、車体下ミラーで底部を確認。SPが金属探知を走らせると、ドアが重たく開いた。

 財界の重鎮、巨大銀行の頭取、広告代理店の幹部、宗教法人の教祖、霞が関の長老官僚。

 焦っている彼らの胸中は一律。
 渋谷サミット後では、取引の余地も密談の窓もない。
 だから、その前に――『最後の交渉の機会』を求め、恐る恐る境界線をくぐったのだ。

 護衛と秘書を従え、彼らはセンの前に進み出る。
 靴底が濡れたアスファルトで小さく軋む。
 そして口々に言った。

「我々は敵ではありません。民間の力なくして国家は回りません。経済の安定は我々が担います」
「国を動かすには資金が必要です。選挙も、復興も。我々の融資網を使えば、国庫に頼らず資金を回せます」
「世論の操作なら我々が専門です。新聞もテレビも広告も、我々を通さずには成り立ちません」
「信仰は人々の心を一つにまとめます。民衆を鎮めたいなら、我々の教義と説法をお使いください」
「行政の継続には官僚機構が不可欠です。経験の浅い政治家より、我々の知恵こそが国を支えます」

 声色は一様に低く、媚びと打算がにじむ。
 周囲では機動隊の面盾が微かに反射し、
 交番前の携行無線からは『チェック完了』の短い応答。

 センは冷笑し、短く呟いた。

「――【プロパティアイ】――」

 空気の温度が一段下がる。影が濃く寄り、彼らの内側が透けて見えた。
 賄賂で膨れた財布。
 高級クラブの個室で札束を受け取る指の動き。
 性接待に酔いしれる薄い笑い。
 信者から巻き上げた献金を数える爪先。
 天下り先の椅子を水面下で奪い合う汚れた握手。

「……笑わせるねぇ」

 何を見られているか気づいた頭取は、蒼白になりながら、震える声で必死に取り繕った。

「お、お待ちください、センエース閣下……! 確かに私は、これまで……政治家や役人に金を渡し、便宜を得てきました。高級クラブでの接待も、裏口座での調整も、否定はできません。しかし、それは国の金融を安定させるためです。巨大プロジェクトも、景気対策も、そうした『潤滑油』なくしては動かない。もし私を『悪』だと断ずるなら……社会全体が悪ということになります。政治も、官僚も、業界も、みな同じ仕組みに依存している。私一人を裁いても、何も変わりません。……しかし、私は理解しました。これまでの在り方は間違っていたのです。これからは、あなた様に尽くします。資金も人脈も、すべてをセンエース閣下に捧げる覚悟があります。だから、だからどうか、話を――!」

「言い訳が長ぇよ」

 財界トップの頭上に、音のない黒い渦が開いた。
 路面の水滴が逆流するように吸い寄せられた。

「地獄で会おうぜ、ベイベー」

 続けて、続々と黒い渦にのみこまれる。
 悲鳴を上げる暇もなく、銀行の頭取も、広告代理店の幹部も、宗教教祖も、長老官僚も――次々に消えた。残響だけが遅れて届く。

 取り残されたのは、副官や部下たち。

 銀行副頭取。
 広告代理店の叩き上げ営業。
 宗教法人の誠実な僧侶。
 霞が関の若い課長補佐。

 センは冷たい視線を向ける。

「さっきクソどもの代わりは……お前らだ」

「よかったな。棚ぼたでナンバーツーからナンバーワンに格上げだぜ。ラッキィ、ラッキィ」

「「「……」」」

「……この先、立場に驕り、腐り果てたら、お前らの元上司と同じ末路になるぞ。まっとうに組織を運営した方がいいと俺は思うが、お前らはどうだ?」

 彼らは蒼白のまま、何度も何度も頷いた。
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