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11話 コズミックホラーな新入り。
しおりを挟む11話 コズミックホラーな新入り。
――ベアの身体能力はずば抜けていた。
ここは刑務所の中なので、体力自慢・腕力自慢がそれなりにいるが、ベアはその中で圧倒的ナンバーワン。
そんなベアを処理してみせたセンに、誰もが畏怖を感じている。
何をどうしたのかが不明なため、余計に恐怖だけが募っていく。
――そんな囚人たちの輪から、ぽつりと外れている男がひとり。
ヒッキエス・トレージ。
肘に擦り傷、頬に腫れ、目だけがいつもより深く沈んでいる。
体の痛みに耐えながら、じっと、存在感を消して、目立たないように、絡まれないようにしていた。
……そんな彼の努力は泡となる。
なんと、ダルいことに……センエースが、話しかけてきたのだ。
「おっす、おらセンエース。特に理由はないけど、なんか、わくわくすっぞ」
ヒッキエスが顔を上げる。
周囲の囚人はそしらぬ顔で雑談を続けるが、
耳の意識だけはセン達の方に向けている。
ヒッキエスは、
(な、なんで、おれに話しかけてくるんだよ……)
しんどそうな顔をセンに向けて、
「わ、悪いが……話しかけないでほしい。あんたといたら……無意味に目立ってしまう。これ以上、暴行を受けるのは勘弁だ……」
「そうか。じゃあ、こうしよう。もし、俺とのお喋りを拒絶するのであれば、今からお前を完膚なきまでにボッコボコにする。俺はこう見えて、空手1700万段だ。拳一つで宇宙を砕く事も可能。……そんな俺から『コズミックホラーな暴行』を受けるか、それとも、囚人共のぬるい暴行を受けるか……さあ、どっちがいい?」
「な……なんで、おれは、こんなにも……ついていないんだ……」
もちろん、センの『宇宙どうこう』の発言を信じているわけではないが、
『センがイカれた野郎であること』だけはハッキリと理解できた。
世のなかは、『肉体的に強いだけの常人』より、『極度にイカれたサイコ』の方が怖いもの。
……ヒッキエスは、一度、自分の運命を呪ってから、
「……ぁ、あんた……あの『ベアとか呼ばれている大男』に何した?」
『どうせ拒絶できないのであれば』と、気になっていたことを聞いてみるヒッキエス。
「と、糖尿は確かに目をやるが、急に視力がまったくなくなるようなことは……ない」
「なーに、大したことじゃない。ちょいとした魔法をかけたのさ。ちちんぷいぷいと軽やかにな」
「魔法ねぇ……」
ヒッキエスの眉が、痛みと懐疑で同時にひきつる。
背後で衣擦れの音がする。
盗み聞きの輪が、一段、静かになった。
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