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17話 20億。
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「だいぶ多い方だと思うぜ」
「あ……そう……」
「なんせ、この世界の人間の存在値は10前後だからな」
「存在値?」
「レベルだと思ってくれて問題ねぇよ。正確に言うと、レベルも含めた総合力だが、その辺の詳細はどうでもいい。ちなみに、存在値10前後のヤツのMPは、基本的に100以下だな。ごくたまに、存在値10前後でMP10000以上とかいうイカれた例外もいるが……そういうのは例外中の例外だ。統計上では無視していいレベル」
「……一般人の資産が平均で『100』以下……けど、おれには『20億』を融資してくれる……と?」
「そういうこと。流石、賢いじゃねぇか。頭ナデナデしてやろうか?」
「金融のプロフェッショナルとして一言だけ言わせてもらうが……交渉の際に、その手の数字を過剰に盛るのはご法度だ。盛った分だけ、人心は離れていく」
「嘘だったら心も魂も離れていくだろうぜ。けど事実なら、数字はデカければデカいほどいい」
そこで、センはベッド端に腰を下ろす。
手を伸ばすと、指先が空間のひずみに沈んでいった。
そのままズズッと、虚空から『本のようなもの』を取り出す。
おかしなもので、異質に慣れてきたのか、ヒッキエスは、その光景を見ても、まったく驚かない。
感覚が麻痺している。
「魔導書もくれてやる。読み込んで、魔法を使えるようになっておけ」
そう言いながら、ヒッキエスに向かって本を投げ渡すセン。
革装の背表紙は焼けていて、背には見慣れない文字列が刻まれている。
古めかしくて、いかにもヤバそうな本。
ヒッキエスは眉間にしわを寄せて、
「……魔導書ねぇ……クトゥルフ神話なんかだと、その手の本を読んだ者は発狂すると相場が決まっているんだが……」
「発狂もせずに生きようとすることが、そもそも論外なのだ」
「……はぁ?」
「おまえは常識にとらわれているから狂う事の本当の意味がわかっていない。狂ったらいいな……ぐらいにしか考えてこなかった、だから今、クズとしてここにいる」
「狂ったらいいな、などと思ったことは一度もないが――」
「黙れ小僧。お前に狂気が救えるか。狂ったらいいな……じゃない! 狂わなきゃダメなんだ!」
何を言われているのか一ミリも分からない……という顔で呆けているヒッキエスに、
センは、堂々と続ける。
「ぶっ壊れて歪んで腐って……それでもなくさなかった全てをかき集めて、最後の最後まで狂気を叫び続けること。それだけが、朧げな命を繋ぐたった一つの極理なのだ。わかるな?」
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