JKが小説に書いた転生者は、売国政府を断罪する怪物で――世界が大発狂

閃幽零

文字の大きさ
84 / 188

22話 細かい調整。

しおりを挟む

 22話 細かい調整。

 水を飲み、呼吸を整え、魔導書に戻る。
 付箋を増やし、式の重みづけを見直し、
 出力・持続・反応の三値を別々に滑らせる感覚を刻む。

 今度は最小出力で点灯、最小厚で膜、解除は一拍早く。
 小刻みに成功を積み、失敗はすぐに原因メモへ落とす。

 夕刻、窓の格子が赤く縁どられはじめるころ、ヒッキエスはふと本を閉じ、天井を見た。

「このまま、俺が、とんでもない魔法使いになってしまったら……妻はどう思うだろうか……」

 指先に残る熱を握りしめる。
 彼女の横顔、笑うときのシワの寄り方、朝の弱さ。

「まあ、彼女なら、それでも、変わらず愛してくれるだろうな。彼女はそういう女だ」

 軽く笑って、再び姿勢を正す。
 出力を0,05刻みで落とし、
 反応速度を0,02上げ、
 式の末尾に解除の合図を追加――地味な調律を続ける。
 房の隅で、青白い光が何度も生まれては、静かに消えた。


 ★


 センは、自分の房のベッドで仰向けになり、
 天井の染みをぼんやり数えながら、
 視線だけを動かし、内側の思考盤面で、
 ――『手持ちの駒』を並べていく。

(ヒッキエスの力があれば、ヴァルハラ軍団の総合戦力を一気に底上げできる。俺のMPをヒッキエスに預けて増やさせ、それを兵に再分配――それだけでも魔力系統のスペックが爆上がり。……ありがたいぜ。思わぬ拾いものだ)

 小さく笑い、目を閉じる。
 意識の奥底……マブタの内側で、別の空が立ち上がった。

 鍛練世界ヴァルハラ。
 黒ずんだ大地は炭化したウロコのように割れ、裂け目の底で鈍い赤が呼吸する。
 空気は鉛の粒子を混ぜて肺を擦り、遠い稲妻が血のような光を滲ませる。

 ――元首相・闇川はボロボロのスーツのまま泥を噛み、額を地につけて膝で這っていた。 
 グジュグジュに泣いているが、知ったこっちゃない。

 迷彩の男たちはノドを焼く呼気で詠唱をちぎる。
 誰かが使った『闇獄炎ランク73』の残滓が黒い硝子片のように風へ流れた。

 別列では警盾を構えた者らが『障壁ランク60』を重ね張りにして突撃する。
 誰もが汗に濡れ、血の味を噛み、倒れては立ち、立っては倒れる。

 それを見たセンは、うんうんと頷いた。

(全員、徹底的に鍛えたから、だいぶ強くなってきたな。存在値的には、現時点で平均10000前後。……もちろん、この程度じゃ話にならないが、ここまでは『下地を積んだだけ』だから、ここから一気に伸びるヤツも出てくるだろう。いい感じだ。この調子なら、『ラストラグナロク』には間に合いそうか……)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...