異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

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「そうか。坊主がトレインマン撃退少年だったのか」
「げ、撃退少年……」

 ライガルさんには、俺が冒険者になったことを話した。
 どうやらここのダンジョンに潜っている人たちの間では、俺の噂が広まっているらしい。

「そりゃそうだろう。冒険者でもない若い男女二人で、トレインマンとモンハウを片付けたってんだ。誰だってその人物に興味を持つだろう。ギルドに行ったのなら、クランに誘われなかったか?」
「えぇまぁ……。でもルーキーへの勧誘は禁止らしく、ひとりを覗いてはすぐに引き下がりました」
「ってことは引き下がらない奴もいたのか」

 ライガルさんが大きなため息を吐き、その髭が少し垂れ下がる。
 かと思ったらピンっと伸びて、やや険しい表情で俺を見た。

「気を付けろ。引き下がらなかったってことは、この迷宮都市にいる限りしつこくやって来るぞ」
「しつこく……そいつ、俺じゃなくってセシリアだけを勧誘しようとしていたんです。こっちのことは眼中にねぇって感じで無視しやがって」
「お嬢ちゃんを? まさか身バレ……いや、見た目と魔術師系だからか」

 見た目ってのは……綺麗な顔立ちってことだろう。
 だけどまだ十四だぜ? そんな子供に手出そうってのかあのロリコン。

「魔術師系って人気なんですか?」
「当たり前だ。冒険者の六割は前衛職で、物理の遠距離職二割、残りが神官と魔術師だ」

 神官にしろ魔術師にしろ、どこのクランでも喉から手が出るほど欲しがっている。
 それはライガルさんが冒険者だった頃でもそうだったらしい。

「俺たち獣人族は魔力が低い。魔術師になれるような奴はほぼいないといっても過言じゃない」
「魔力が高いと言えばエルフですよね?」
「あぁ。だがあの種族は滅多に人の町には来ない。冒険者をやっているエルフなんて、俺は見たことがないな。まぁゼロではないだろうが」

 エルフっぽいのは、だいたいハーフエルフだと彼は言った。
 それだけエルフが人間を毛嫌いしている証拠だろう。

 他に魔力の高い種族は──有翼人。
 その数は極端に少なく、正体がバレれば高確率で奴隷商人に突き出される。
 冒険者をやっている有翼人などいない。

「あぁ、ここに例外がいたな」
「んふぅ~」

 ライガルさんに頭を撫でられ、嬉しそうにセシリアが笑顔になる。

「それで、これからダンジョンか?」
「いえ、地上のモンスターから素材を取ってきてくれという依頼を受けたんで」
「ほぉ。地上の依頼か。出るのは初めでか?」
「昨日初めて上に出ました。町の外に行くのは初めてになります」
「そうか」

 ライガルさんが笑顔を浮かべ、それから立ち上がってどこかへ行ってしまった。
 食堂の店主が「直ぐに戻って来るだろうから待ってな」というので、そのまま椅子に座って待つ。
 すると、店主の言う通り五分もしないうちに戻って来た。

 どさっとテーブルの上に背負い袋が置かれる。

「これは俺が現役の時に使ってたものだ。もう必要ないから持って行ってくれ」
「え、で、でも。ダンジョンに潜ってるんじゃ!?」
「あぁ、行っても数時間だ。その日のうちに帰ってきてるからいらねえ」

 そう言うと袋の中からいろいろと取り出し始めた。

「ちょっとこい。これは広い場所じゃねえと広げられない・・・・・・もんだから」

 荷物の中から手のひらサイズの三角形の箱のような物を持って、厨房の勝手ぶちから外へと出る。
 外へ出ると、三角形の箱から伸びた紐を引いた。

「少し離れろ」

 シューっと音を発しながら、箱が段々と大きくなる。それにつれて形が変わった。

「野営用のテントだ。紐は五段階で引くことが出来て、段階によって広さが変わる。これは三段階目だ」

 そう、テントだ。しかも結構デカい。これだと五、六人サイズか?
 これで三段階目の広さってことは、五段階目だとかなり広いのでは?
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