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「おはよう電気くん。今日の分の体力も頂いて行くぜ」

 迷宮都市で過ごしたのは一日だけ。直ぐにまた素材の収集依頼を受けて山に戻って来た。
 一日に一回、ステータス強奪は忘れない。
 今回の依頼期間は二カ月だ。特にレアという拘りもないので期間いっぱい狩りをして町に戻る。戻ったらまた新しい依頼を貰って地上へ。
 
 素材採取だけでなく、村を襲撃するモンスター退治。旅人を狙う山賊狩りといろいろやった。
 どの依頼を受けようと、一日一回電気くんの元に欠かさず通い続けた。
 そんな暮らしが約一年続いて、ようやくステータス強奪にしっぱい。

「こいつ、いったいどんだけ体力あったんだよ……」
「うわぁ、リヴァの体力凄い……ドン引き」
「引くなよ!」

 まぁ俺も引くよ、これは。


******************************************

 筋力255 体力967 敏捷221 魔力164

****************************************** 


 体力……四桁目前。
 少なくとも電気くんから、この一年間で700以上の体力を貰っている。
 俺の体力が電気くんと同じになったから強奪が失敗した訳で、元々の電気くんの体力は967プラス700という計算になる。
 考えただけでも恐ろしい。

「じゃあ次は筋力を貰おうかな」
「うえぇ、まだ電気くんから貰うの? 電気くんかわいそうじゃない?」
「なに電気くんに同情なんかしてんだよ。そもそもこいつ、嫌がるそぶりとか全然みせないだろ」

 一時停止をしていても、相手の意識はハッキリしている。
 停止中の間に俺が何をしているのか、そしてこれだけ体力を奪ってんだ、何をされているのかも理解しているはずだ。
 それでもこいつは暴れるそぶりも無ければ、封印の中ですら俺を威嚇することはない。

 むしろ最近は、望んでいるのかとすら思えている。

「お前、このまま俺にステータス強奪され続けたら、確実に弱くなるぞ?」

 その目は俺をじっと見つめても、質問には答えない。
 こいつはいったい何なんだろう?
 生臭に電気くんの話をしてはみたが、そんなモンスター見たことも聞いたこともないと言う。

「お前……いったい何者なんだよ」
「モンスター?」

 隣のセシリアが真顔で答える。
 いや、そういう事じゃなくって……。

「でもね、少し変なの」
「変?」
「うん。電気くんね、精霊力を感じる」

 精霊力?
 じゃあ精霊魔法が使えるモンスターってこと?

「パチパチ放電してるし、雷の精霊魔法でも──ん? 雷の精霊って、いるのか?」
「うん、はい。下位の精霊はヴォルトっていうの」
「セシリアはヴォルトの召喚は?」

 セシリアは両手をクロスし、×を作る。

「雷の精霊、とっても気難しがり屋だから召喚は難しいの」
「確かに雷の精霊を扱うって物語は、あまり見たことないもんな」
「物語?」
「あー……いろんな人から聞く冒険譚さ。うん」

 前世で読んでいた小説とか漫画ですとは言えないだろ。
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