ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔

文字の大きさ
50 / 52
3章

第──50

しおりを挟む
 衣料品店で買ったのは、直射日光を避けるための外套。つまりフード付きマント。

「暑さは俺の空気操作でどうにかなると思うんだ。効果時間90秒だから、その時間に歩ける範囲の温度を少し下げてさ」
「え、そんなこと──そ、そうよね。出来るわよね」
「日光は防げませんから、日焼け対策をするだけなのですね」
「あぁ。念のため長袖の服もあったほうがいいだろうな」

 それらを買い揃えて、次は雑貨屋へと向かった。
 砂漠にいくのだから、水は必須。もちろん水筒は持っているけれど、余分に買っておこうと思って。
 それからテントだ。

 ギルド職員さんのメモには「虫の侵入を完全に防げるテント」と書いてある。
 砂漠=サソリとかの毒虫だろうなぁ。

 ちょっと高級でもいいから、しっかりしたものを買おう。

「じゃあこの三人用のテントで!」
「……やっぱりそうなるのか」
「いいじゃないですか空さん。私たち、恋人ですもの」
『ぎゅふふ』
「お前はカウントしていないからなっ」
『きゅ!? うきゅきゅぅ』

 泣くな兎!

 テントや水筒、依頼の花を入れるための麻袋とそれに──

「鋏とブラシもね」
「鋏って、一つじゃダメなのか?」

 シェリルたちが店の主人に頼んで出して貰った鋏は二種類。切るだけなら一つでいいじゃないかと思うんだけどなぁ。

「こっちは長くなった髪を切るための鋏よ」
「こちらの鋏は、髪の量を調節するための鋏です」
「あぁ、すき鋏とかいうやつか」

 代金を支払って俺のリュックへ全部詰めていく。

「空、公園の石──」
「抜かりはない。ちゃーんと拾ってあるさ」

 ポケットに入れた石を取り出しシェリルへと見せる。
 無くしちゃマズいし、リュックに入れておこう。
 まぁ失くした場合は『帰還』すればいいんだけどな。

 それから砂漠へ向かうために、王都を出て北へと向かった。
 王都の北門から出るという手もあるんだけれども、あの迷路のような町を歩くのはもう嫌だ。
 きっとまた迷子になる。そうに違いない──という意見が三人で一致したので、最寄の門から出て北へと向かうことに。

 だがその前にイベントが待っていた。

「一通りの少ない所でやってしまいましょう」
「そうね。空さん、毛玉。お覚悟を」

 か、覚悟をって……髪の毛を切るだけだろ!?





 布団のシーツなんかに使うような布を首元から撒いて、切った髪が服や肌に落ちないようにする。
 まるで日本の床屋さんそのものだ。

 手ごろな岩に座って、これから髪を切られる。
 足元では心配そうに俺を見上げる毛玉の姿があって、その毛はぷるぷる震えていた。

「いや、髪の毛切るだけだからな。怖くないんだぞ毛玉」
『ぎゅいぃ』

 耳元でシャキっという音が鳴る。
 目の中に入らないよう閉じて、ただただ身をゆだねる。
 足の上に乗っかっている毛玉がぷるぷる震えるのを感じていると、ちょっと笑いが込み上げてきた。

 シャキシャキという音が鳴るたび、少しずつ頭が軽くなっていく気がする。
 そのうち前髪が切られはじめると、鼻先がむずむずするのに耐えて──

「はい、出来ました」
「ありがとう。なんか頭スッキリした感じ──おぉ!」

 目を開けるとシェリルが鏡を持って立っていてくれて。
 そこに映っている俺は、花粉を気にしていた時には見たこともないほど前髪がスッキリしていた。
 半分以上隠れていた目も見えるようになったし、隠れていた耳も髪から出てきた。

 その感想はまさに、

「誰だこれ」
『ぎゅ!?』

 それまで蹲ってぷるぷるしていた毛玉が俺を見上げると、何故か威嚇しはじめた。

「おい、髪切ったぐらいで俺が誰だか分からなくなるのかよ!」
『ふぎゅーっ』
「はいはい、毛玉もスッキリしましょうね」
「空、毛玉をその岩に座らせて」
「ほいよ」
『ぎっぎゅうぅぅぅぅぅっ』

 街道脇の林道に毛玉の断末魔が響き渡す。
 いや死んじゃあいないけど。

 シャキシャキと鋏が軽快な音を鳴らし、そのたびに青みがかった毛がどさどさと落ちていく。
 そうして出来上がったのは──

 丸いフォルムから兎らしい形に。
 うん……なんとなく前の、もさもさしている毛玉のほうが俺は好きだなとか思った。
 
「ふぅ、大仕事でした」
「さっきまでの毛玉は、半分が毛だったのね」
『きゅえっくしゅん』

 突然毛が薄くなった毛玉は、初夏だというのに寒そうだった。
 
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...