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ある日のこと。
祖父のルエンディタール侯爵がこう言った。
「ディオンよ。お前は転生者じゃな?」
「え……お、おじい様、い、いったい何を──」
「わしも転生者じゃ」
──と。
「わしは溺死じゃった」
「俺は車と外壁の間に挟まれて死にました」
「そりゃ痛そうじゃのぉ」
お互いどんな状況で死んだのか、前世は何をしていたのか。
そんな会話を祖父としたのは八年前、当時俺は七歳になったばかりだった。
同じ転生者ということで、いろいろと相談にも乗ってくれた。
その祖父は十日前、病で亡くなった。
祖父であると同時に、親友のような人だった。
「うわっ。本当にスキルポイントがこっちに来てる!?」
転生者ボーナスのひとつ、ステータスボードを呼び出してある箇所を凝視した。
この世界に暮らすもの全てに、ステータスは存在する。モンスターも然りだ。
これが自分の状態を確認するためのものであって、ゲームのようにステータスを自由に弄れたり──はしない。
だけど転生者にはステータスボードが与えられ、これを使えばゲームと同じようにステータスを自由に振り分けることが出来た。
まぁポイントは自由に獲得出来るモノじゃなくって、まぁそこはレベルアップ必須なんだけども。
もちろん、このことを知っているのは転生者だけで、この世界の人は転生者の存在は知らない。
だから誰にも内緒だ。
そして転生者は、血縁者に自分の能力を一つだけ継承することが出来た。
じーちゃんは亡くなる前に、
「わしの持っておるものの中で、何か欲しいものはあるか?」
と尋ねてきた。
継承出来ないのはステータスそのものと、ユニークスキルの二つ。
ユニークスキルは、転生者だけが持っている訳じゃない。でも持っている人は極端に低く、転生者は必ず持って生まれる。
その二つ以外は継承出来る──と、おばあ様が妊娠した時に、ステータスボードにメッセージが浮かんだそうだ。
じーちゃんのスキルは領主向けの物が多かった。
侯爵家の長男に生まれたのだから、当たり前と言えば当たり前だけど。
でもそれらスキルは、俺も努力すれば習得出来る。
習得困難なスキルのほうが、貰った時に嬉しいはず……と思ったけど、結局決められず。
「だったらじーちゃん。余ってるこのスキルポイントは継承できないのかな?」
「スキルポイントか。なるほど、なかなかいい所に目を付けたな。いつかポイント交換でないと習得できないスキルが出てくるかもと思って、必要な分以外はずっと残していたんだが。役立ちそうじゃの」
そう言って満面の笑みを浮かべていたじーちゃんは、数日後に逝ってしまった。
最後に「継承はわしが死ねば完了する」──そう言って。
だからこの十日間、それを確かめるのが嫌でステータスボードを呼び出していなかった。
けど、せっかくじーちゃんが俺のために譲ってくれたスキルポイントなんだ。
だったら……
「じーちゃんが残したの領地を、スキルポイントを使って立派に治めてみせ──」
コンコン、と、このタイミングで部屋のドアをノックする音が。
「俺だ。入るぞディオン」
実父は婿養子で、俺が生まれる直前に病で亡くなっている。
母はいきなりの未亡人で、俺は父親のいない子供。
かわいそうだと思ってひいじーちゃんがもう一度婿養子を募集してやってきたのがこの──
「どうぞ、義父上《ちちうえ》」
と言う前にドアを開け放って入って来た男だ。
「なんだ、まだ身支度を済ませていなかったのか」
「身支度、ですか? えぇっと……」
今日は何かあっただろうか?
祖父の葬儀の後は慌ただしかったが、親戚が気を使ってくれてここに三日はゆっくりできたけど。
おかげでやっとじーちゃんの死を受け入れられた。
「なんだ、聞いていなかたのかディオン」
「いったい何をでしょうか?」
義父がニタリと笑う。
俺はこの男が正直嫌いだ。
屋敷で働いてくれている侍女が言っていた。
この男は女遊びが酷く、結婚相手に逃げられまくっていたって。
優しくされた記憶もない。まぁ暴力を振るわれたこともなかったけれど。
「何ってお前……お前は今日から辺境の砦の守備を任せるのだよ」
「……は?」
なんで突然辺境の砦なんかに?
そもそも俺、王国兵でもないし、むしろこれからここの領主として──まさか!?
「アリーシャ、やってくれ」
「承知いたしました、侯爵様」
義父の後ろからエッチなローブを着た女が出てきた。
見るからに魔術師っぽいその女は、義父を『侯爵様』と呼んだ。
義父はこのルエンディタール侯爵家を継ぐことはできない。
そういう約束で婿養子に来させたのだから。
侯爵家を継いだのは俺だ。
けど、まさかこの男。
「まさかあんた……ルエンディタール家を乗っ取る気か!?」
「そうだとも。ようやく手に入るんだ、侯爵の称号をな! 心配するな。ルエンディタール領はこの俺が立派に治めてやるさ」
「んふふふ。では坊ちゃん、さようならぁ」
「冥途の土産だ。持って行くといい」
そう言ってクソ義父──ウェルソンが袋を投げて寄こす。
「え、さようならってどういう──」
どういうことなんだ──と言い終える前に、俺の足元がピカーっと光った。
そして視界は真っ白に。
やられた。
これ、空間転移の魔法陣だ。
女好きなクソウェルソン好みの、エッチなローブ着ていたあの女は、正真正銘の魔術師だったようだ。
そしてクソ義父は……侯爵家を乗っ取りやがったのか!
「ああぁぁー、くっそおぉぉぉぉ! くっそ寒みいぃぃぃーっ!」
視界が開けると、遠くには薄っすら雪化粧の見える景色が広がっていた。
祖父のルエンディタール侯爵がこう言った。
「ディオンよ。お前は転生者じゃな?」
「え……お、おじい様、い、いったい何を──」
「わしも転生者じゃ」
──と。
「わしは溺死じゃった」
「俺は車と外壁の間に挟まれて死にました」
「そりゃ痛そうじゃのぉ」
お互いどんな状況で死んだのか、前世は何をしていたのか。
そんな会話を祖父としたのは八年前、当時俺は七歳になったばかりだった。
同じ転生者ということで、いろいろと相談にも乗ってくれた。
その祖父は十日前、病で亡くなった。
祖父であると同時に、親友のような人だった。
「うわっ。本当にスキルポイントがこっちに来てる!?」
転生者ボーナスのひとつ、ステータスボードを呼び出してある箇所を凝視した。
この世界に暮らすもの全てに、ステータスは存在する。モンスターも然りだ。
これが自分の状態を確認するためのものであって、ゲームのようにステータスを自由に弄れたり──はしない。
だけど転生者にはステータスボードが与えられ、これを使えばゲームと同じようにステータスを自由に振り分けることが出来た。
まぁポイントは自由に獲得出来るモノじゃなくって、まぁそこはレベルアップ必須なんだけども。
もちろん、このことを知っているのは転生者だけで、この世界の人は転生者の存在は知らない。
だから誰にも内緒だ。
そして転生者は、血縁者に自分の能力を一つだけ継承することが出来た。
じーちゃんは亡くなる前に、
「わしの持っておるものの中で、何か欲しいものはあるか?」
と尋ねてきた。
継承出来ないのはステータスそのものと、ユニークスキルの二つ。
ユニークスキルは、転生者だけが持っている訳じゃない。でも持っている人は極端に低く、転生者は必ず持って生まれる。
その二つ以外は継承出来る──と、おばあ様が妊娠した時に、ステータスボードにメッセージが浮かんだそうだ。
じーちゃんのスキルは領主向けの物が多かった。
侯爵家の長男に生まれたのだから、当たり前と言えば当たり前だけど。
でもそれらスキルは、俺も努力すれば習得出来る。
習得困難なスキルのほうが、貰った時に嬉しいはず……と思ったけど、結局決められず。
「だったらじーちゃん。余ってるこのスキルポイントは継承できないのかな?」
「スキルポイントか。なるほど、なかなかいい所に目を付けたな。いつかポイント交換でないと習得できないスキルが出てくるかもと思って、必要な分以外はずっと残していたんだが。役立ちそうじゃの」
そう言って満面の笑みを浮かべていたじーちゃんは、数日後に逝ってしまった。
最後に「継承はわしが死ねば完了する」──そう言って。
だからこの十日間、それを確かめるのが嫌でステータスボードを呼び出していなかった。
けど、せっかくじーちゃんが俺のために譲ってくれたスキルポイントなんだ。
だったら……
「じーちゃんが残したの領地を、スキルポイントを使って立派に治めてみせ──」
コンコン、と、このタイミングで部屋のドアをノックする音が。
「俺だ。入るぞディオン」
実父は婿養子で、俺が生まれる直前に病で亡くなっている。
母はいきなりの未亡人で、俺は父親のいない子供。
かわいそうだと思ってひいじーちゃんがもう一度婿養子を募集してやってきたのがこの──
「どうぞ、義父上《ちちうえ》」
と言う前にドアを開け放って入って来た男だ。
「なんだ、まだ身支度を済ませていなかったのか」
「身支度、ですか? えぇっと……」
今日は何かあっただろうか?
祖父の葬儀の後は慌ただしかったが、親戚が気を使ってくれてここに三日はゆっくりできたけど。
おかげでやっとじーちゃんの死を受け入れられた。
「なんだ、聞いていなかたのかディオン」
「いったい何をでしょうか?」
義父がニタリと笑う。
俺はこの男が正直嫌いだ。
屋敷で働いてくれている侍女が言っていた。
この男は女遊びが酷く、結婚相手に逃げられまくっていたって。
優しくされた記憶もない。まぁ暴力を振るわれたこともなかったけれど。
「何ってお前……お前は今日から辺境の砦の守備を任せるのだよ」
「……は?」
なんで突然辺境の砦なんかに?
そもそも俺、王国兵でもないし、むしろこれからここの領主として──まさか!?
「アリーシャ、やってくれ」
「承知いたしました、侯爵様」
義父の後ろからエッチなローブを着た女が出てきた。
見るからに魔術師っぽいその女は、義父を『侯爵様』と呼んだ。
義父はこのルエンディタール侯爵家を継ぐことはできない。
そういう約束で婿養子に来させたのだから。
侯爵家を継いだのは俺だ。
けど、まさかこの男。
「まさかあんた……ルエンディタール家を乗っ取る気か!?」
「そうだとも。ようやく手に入るんだ、侯爵の称号をな! 心配するな。ルエンディタール領はこの俺が立派に治めてやるさ」
「んふふふ。では坊ちゃん、さようならぁ」
「冥途の土産だ。持って行くといい」
そう言ってクソ義父──ウェルソンが袋を投げて寄こす。
「え、さようならってどういう──」
どういうことなんだ──と言い終える前に、俺の足元がピカーっと光った。
そして視界は真っ白に。
やられた。
これ、空間転移の魔法陣だ。
女好きなクソウェルソン好みの、エッチなローブ着ていたあの女は、正真正銘の魔術師だったようだ。
そしてクソ義父は……侯爵家を乗っ取りやがったのか!
「ああぁぁー、くっそおぉぉぉぉ! くっそ寒みいぃぃぃーっ!」
視界が開けると、遠くには薄っすら雪化粧の見える景色が広がっていた。
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