転生領主の辺境開拓~転移魔法で屋敷を追放されましたが、自由にスキルリセット出来る『リカバリー』で案外元気に暮らしています~

夢・風魔

文字の大きさ
10 / 32

10:テイミング

しおりを挟む
「これでよしっと。帰り道に薬草があって良かったわ」
『ンメェ』

 砦に戻る途中、火傷か、せめて怪我に効く薬草がないか探して鑑定しまくってやっと見つけたのは化膿止めに使える薬草だ。
 すりつぶして少量の水と混ぜ合わせてペースト状に。それを傷口に塗るだけ。
 包帯でもあればいいけど、ここにあるのは未洗濯の百年もののシーツだしなぁ。

「いいか。薬を舐めるんじゃないぞ」
『ンメ』

 クラッシュゴートは頷くが、こいつは人の言葉をどこまで理解できるのだろうか。
 モンスターだから動物よりは知能が高い。
 けどモンスターだって人の言葉を理解できない奴らも多いからなぁ。

 それに……こいつはモンスターだ。
 今はまだ子供のようだから中立、なのかな?
 でもいつ本能に目覚めるかも分からない。
 可愛いけど……自然に還す方がいいんだろうな。

「はぁ……」

 撫でてくれ──と頭を突き出すクラッシュゴートを見ると、ため息が出てしまう。
 モンスターじゃなくって、動物の山羊だったら良かったのになぁ。

「どうしたの、ディオン」
「ん、いやさ。こいつも一応モンスターだし、いつ本能に目覚めて俺たちを襲うかも分からないよなぁって考えてたらさ」
「そうねぇ……クラッシュゴートはそこまで狂暴なモンスターではないけれど、だからと言って友好的ではないし」

 友好的なモンスターというのは、非情に稀な存在だ。
 温厚なドラゴンは人との対話も可能だって聞くけど、そんなの……伝説級のドラゴンだけだ。
 
 モンスターと仲良くなるなんて、まず無理なんだよ。

「火傷が治ったら、元の場所に戻さなきゃなぁ」
「うぅん……でもこの子、親はどこにいるのかしら? 逸れただけなら親元に帰ればいいけど。でももし親がいないなら……」
「いないと、なにかマズい?」
「そりゃあ……この子、一匹だけじゃ生きていけないわよ。他のモンスターに捕食されるだけよきっと」

 捕食……食べられるってこと!?
 そ、そりゃそうか。
 まだ小さく、角も生えていない。
 クラッシュゴートは『クラッシュ』というだけ、頭の角を使った頭突きでなんでもかんでも破壊してしまう。
 その攻撃手段を、こいつはまだ持てていない。

 他のモンスターに食わせるために、自然に還すなんて……そんなの、嫌だな。

「テイミングスキルでもあれば違うんでしょうけど」
「……え。テイミング……テイミングか!」

 テイミング。モンスターを従属させるスキルのことだ。
 このスキルを使ってモンスターを使役する人の事を『モンスターテイマー』と呼ぶけど、職業限定スキルという訳じゃない。
 この世界のスキルは、職業ありきじゃないところがミソだ。

「な、なに? え? まさか、それも持ってるの!?」

 あ、やばっ。ど、どうしよう……。
 
 こそこそとステータスボードを開いて確認すると、獲得可能スキル一覧にテイミングはちゃんとあった。
 レベル1獲得に必要なポイントは20。

 スキルとしても、テイミングは難しい類に入る。
 その辺りも関係しているんだろうな。

 どうする……。このクラッシュゴートをテイミングしても、リカバリーでリセットすれば、テイミングも解除されるだろう。
 ってことはリカバリーは出来ない。
 テイミングスキルをゲットして、八時間以上経てばリセット事故もなくなるけど……。

 必要ポイント20か……。
 レベル1ではテイミングの成功率も低い。少なくも10ぐらい必要だろう。

「ディオン? もしかしてレベルが1か2しかないとか?」
「え、あ……」
「でもきっと大丈夫よ」
「え? 大丈夫って?」

 モンスターを手懐けるのは簡単なことじゃない。テイミングスキルを使って従属させようとしても、スキル自体に抵抗されるからだ。
 スキルの成功率はレベルと、術者とモンスターの力の差が関係していると言われている。

「まだ子供だから……とか?」
「いいえ。この子がもう既にディオンに懐いているからよ」
「俺に? 懐かれていたら、成功しやすいものなのかな」
「私の知り合いにテイマーがいたけど、そう聞いてるわ」

 本職の言葉か。
 なら……

「お前、俺のテイミングモンスターになるか? ここで一緒に暮らすために、俺のスキルを受け入れてくれるか?」

 そう尋ねると、仔クラッシュゴートは尻尾をぷりぷりしながら『メェー』っと鳴いた。

 消費ポイント20。リセットは出来ない。
 一度今の状態をリセットして──それから「スキルの使い方をおさらいするから待っててくれ」と言って、こっそりテイミングスキルをレベル1だけ取る。

 今夜は内職もなし。鑑定は──収穫したものは全部済んでいるから大丈夫だな。

 よし。

「えぇっと……"汝、我と契約したまえ"」

 その後の呪文は、目的によって自由に変えられるようだ。
 ならこれだな。

「"我の友として、我が魔力を受け入れよ"」
『ンメェー』

 突き出した右手の先から、赤い光がぽぉっと浮かぶ。
 その光を、仔クラッシュゴートは頭突きをするようにして跳ねて取り込んだ。

「友達、なのね」
「うん。なんか無理やり従わせたり、そういうのはね」
「ふふ。優しいのね、ディオンは」
「いやいや。敵対心剥き出しのモンスターなら、躊躇せず切り捨てるよ」

 そうじゃない相手だと、殺すことに躊躇いはあるかもしれないけど。

『メェーッ。メェメェー』
「え、な、なんだよ。なんだって」

 突然仔クラッシュゴートがすり寄って、何かせがむように鼻を擦りつけてくる。
 お腹空いたのか?

「名前じゃないかしら? テイミングスキルでモンスターを従属したら、直ぐに名前を付けてやるんだって聞いたわよ」
「名前? ふぅーん、名前かぁ。名前ねぇ……」
『メェーッ』

 ……クラッシュゴート……クラッシュ……クラ……クララ!?

「お前、女の子か?」
『ンン』

 違う、というように首を振る。

「男の子かしら?」
『メッ』

 尻尾ぷりぷり。

 男の子かぁ。

 男の子っぽい名前ねぇ……ゴー……ゴ……

「よし、ゴン! でどうだ?」
「え……ゴ、ゴン?」
『ンメェ』
「うんうん、気に入ってくれたか」

 ゴンは尻尾をぷりぷりして頭を擦りつけてきた。

「ゴン……も、もう少し何かないの?」
「強そうな名前だろ?」
『ンメェェ』
「……ま、まぁ本人がいいなら、それでいいんだけど」

 こういうのは直感で付けるべきなんだよ。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。 だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。 それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。 世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。 快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。 ●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。

処理中です...