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25話:湧き水
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地下十四階に到着したのは、ダンジョンに入って三日目だった。
ここのダンジョン、予想していたよりずっと広いんだな。あとめちゃくちゃ迷路になってて、何度も同じ道をぐるぐる回った気がする。
「つ、次は地図を買いましょう」
「そうしよう……」
「でも迷子になった甲斐はあったにゃねぇ~」
それは迷子になった甲斐と言っていいものか。
地下十一階、十二階、十三階と、左手の法則にの途って歩き回った。たぶんほとんどの通路を通ったと思う。
おかげで薬草も結構見つかった。
やっぱり『甲斐』と言うべきなんだろうか。
「あとはここの水を検査して、飲み水に不適切だったらその原因を調査するだけ」
「でもどうやって調べるんだ?」
「この瓶よ。この中に水を入れると、飲める水は透明なまま、ダメな水はどす黒い色になるんですって」
ルーシェが冒険者ギルドから受け取った瓶を見せてくれた。
香水なんかが入ってそうな、アンティークにもなりそうな瓶だ。
この瓶には水の精霊魔法が施されているようで、飲み水なら色は変わらずそのまま。
たんに汚くて飲料水としては適さないだけだと、うっすら茶色に濁る。
毒系統だとどす黒い色に変色すると教えてくれた。
「しかし十四階までくると、ほっとんど人の姿をみないな」
「転送魔法陣が十階ごとにしかないから仕方ないわね。移動の手間もあるし」
「十一階は何人か見たけど、地図さえあれば移動時間もそう掛からないからか」
「そういうこと。でも水場がある限り、定期的に調査は必要なのよ。絶対に誰も来ないって訳じゃないから」
だからこそ、こういう中途半端な階層の依頼を受けてくれる冒険者は少ないようだ。
それもあってか、移動が面倒くさいっていう点以外楽な仕事だってのに、報酬はそこそこいいらしい。
「じゃあ川だっけ? 早いとこ探して帰ろう。あ、帰りも徒歩か……」
「だ、大丈夫よ! 十二階と十三階には、私がマジック・マーカーで印付けて来たし」
「マジック・マーカー?」
「魔力の痕跡ね。それを辿れば、元来た道を迷わず引き返せるの。十一階は……つけ損ねちゃったけど」
と、ルーシェが申し訳なさそうに話す。
というのもこの魔法、やっぱり使えばレベルがひとつ下がるので躊躇っていたようだ。
この階層だと、モンスターを倒しても俺のレベルすら上がらなうからなぁ。
「いっそこの辺りの階層モンスターと、同じレベルになるまで吸い取って貰うか」
「い、いいの? 結構レベル下がっちゃうわよ?」
「これが終わったら地上に引き返すんだろ? いいさ、別に。また次来た時にガンガンレベル上げをするさ。その時はよろしく」
「ふふ、任せてよ」
「にゃっ。水の音するにゃよ」
おっと、早くも発見したようだ。
暫く歩くと俺の耳にもちょろちょろとせせらぎのような音が聞こえ、やがて壁に開いた大きな穴から緑色に濁った水が流れ出ているのが見えた。
「ルーシェさん……」
「……飲める気がしないわね」
「もし飲めるとしても、飲みたくないな」
「にゃ~。思いっきり毒水にゃねぇ」
毒かよ!
「強くはないみたいだけど、毒ね」
ギルドから渡された瓶に水を汲み、蓋をしてシェイクする。
濁ったような緑色の液体は、瓶の中でうっすら黒くなった。
「この黒色が濃ければ濃いほど、毒の成分も強いそうなの」
「透明感のある黒だから、毒としては強くないってことか」
強くなかろうが毒は毒だ。絶対飲みたくない。
「しかし毒になってるってことは、その原因を……」
「突き止めなきゃね。はぁ、楽な依頼だと思ったのになぁ」
「ま、しゃーないさ。じゃあこの水がどこから流れてきているか、調べなきゃな」
といっても水は壁の穴から出て来ている。
この壁の向こう側がどうなっているのか、調べるには……
「水の中に入って、穴の向こう側に行くのが早いよなぁ」
「入りたくないわねぇ」
「おいらここで待ってるにゃ」
一番小柄で難なく穴を潜れそうな奴が拒否るとは。
穴を覗くと一応向こう側は見えた。この穴を通らないなら、通路から行くしかないけれど──。
「そこの通路があっちに通じているとは限らないんだよなぁ」
「またぐるぐる回ることになるでしょうね」
「穴から入る方が早いにゃねぇ~」
そう言いながらミトは一歩後ろに下がる。
どうやっても行きたくないらしい。
「なんか穴の向こう、ジャングルみたいなんだけど。なんでダンジョンの中にジャングルが?」
「んー……ダンジョン植物が密集しているのね。薬草も結構生えてるみたい」
「依頼にあった?」
ルーシェは頷く。
薬草は重さによって報酬が上乗せされるというし、毟っておきたい。
だけどこの毒川には入りたくない。川は浅いけど、毒が混ざっている訳だし足が浸かるだけでもマズいんじゃないかって思う。
「どうにかして川に浸からず、向こうにいけないかなぁ。うぅん……あ」
俺は隣で同じように穴を覗くルーシェを見た。
俺が見ていることに気づいた彼女が振り向き、頬を赤らめる。
「な、なに?」
「うん。ルーシェってさ、氷系の魔法、使えるのかな?」
一分でも川の水を凍らせられれば、その上を歩いて穴を超えられるはず!!
ここのダンジョン、予想していたよりずっと広いんだな。あとめちゃくちゃ迷路になってて、何度も同じ道をぐるぐる回った気がする。
「つ、次は地図を買いましょう」
「そうしよう……」
「でも迷子になった甲斐はあったにゃねぇ~」
それは迷子になった甲斐と言っていいものか。
地下十一階、十二階、十三階と、左手の法則にの途って歩き回った。たぶんほとんどの通路を通ったと思う。
おかげで薬草も結構見つかった。
やっぱり『甲斐』と言うべきなんだろうか。
「あとはここの水を検査して、飲み水に不適切だったらその原因を調査するだけ」
「でもどうやって調べるんだ?」
「この瓶よ。この中に水を入れると、飲める水は透明なまま、ダメな水はどす黒い色になるんですって」
ルーシェが冒険者ギルドから受け取った瓶を見せてくれた。
香水なんかが入ってそうな、アンティークにもなりそうな瓶だ。
この瓶には水の精霊魔法が施されているようで、飲み水なら色は変わらずそのまま。
たんに汚くて飲料水としては適さないだけだと、うっすら茶色に濁る。
毒系統だとどす黒い色に変色すると教えてくれた。
「しかし十四階までくると、ほっとんど人の姿をみないな」
「転送魔法陣が十階ごとにしかないから仕方ないわね。移動の手間もあるし」
「十一階は何人か見たけど、地図さえあれば移動時間もそう掛からないからか」
「そういうこと。でも水場がある限り、定期的に調査は必要なのよ。絶対に誰も来ないって訳じゃないから」
だからこそ、こういう中途半端な階層の依頼を受けてくれる冒険者は少ないようだ。
それもあってか、移動が面倒くさいっていう点以外楽な仕事だってのに、報酬はそこそこいいらしい。
「じゃあ川だっけ? 早いとこ探して帰ろう。あ、帰りも徒歩か……」
「だ、大丈夫よ! 十二階と十三階には、私がマジック・マーカーで印付けて来たし」
「マジック・マーカー?」
「魔力の痕跡ね。それを辿れば、元来た道を迷わず引き返せるの。十一階は……つけ損ねちゃったけど」
と、ルーシェが申し訳なさそうに話す。
というのもこの魔法、やっぱり使えばレベルがひとつ下がるので躊躇っていたようだ。
この階層だと、モンスターを倒しても俺のレベルすら上がらなうからなぁ。
「いっそこの辺りの階層モンスターと、同じレベルになるまで吸い取って貰うか」
「い、いいの? 結構レベル下がっちゃうわよ?」
「これが終わったら地上に引き返すんだろ? いいさ、別に。また次来た時にガンガンレベル上げをするさ。その時はよろしく」
「ふふ、任せてよ」
「にゃっ。水の音するにゃよ」
おっと、早くも発見したようだ。
暫く歩くと俺の耳にもちょろちょろとせせらぎのような音が聞こえ、やがて壁に開いた大きな穴から緑色に濁った水が流れ出ているのが見えた。
「ルーシェさん……」
「……飲める気がしないわね」
「もし飲めるとしても、飲みたくないな」
「にゃ~。思いっきり毒水にゃねぇ」
毒かよ!
「強くはないみたいだけど、毒ね」
ギルドから渡された瓶に水を汲み、蓋をしてシェイクする。
濁ったような緑色の液体は、瓶の中でうっすら黒くなった。
「この黒色が濃ければ濃いほど、毒の成分も強いそうなの」
「透明感のある黒だから、毒としては強くないってことか」
強くなかろうが毒は毒だ。絶対飲みたくない。
「しかし毒になってるってことは、その原因を……」
「突き止めなきゃね。はぁ、楽な依頼だと思ったのになぁ」
「ま、しゃーないさ。じゃあこの水がどこから流れてきているか、調べなきゃな」
といっても水は壁の穴から出て来ている。
この壁の向こう側がどうなっているのか、調べるには……
「水の中に入って、穴の向こう側に行くのが早いよなぁ」
「入りたくないわねぇ」
「おいらここで待ってるにゃ」
一番小柄で難なく穴を潜れそうな奴が拒否るとは。
穴を覗くと一応向こう側は見えた。この穴を通らないなら、通路から行くしかないけれど──。
「そこの通路があっちに通じているとは限らないんだよなぁ」
「またぐるぐる回ることになるでしょうね」
「穴から入る方が早いにゃねぇ~」
そう言いながらミトは一歩後ろに下がる。
どうやっても行きたくないらしい。
「なんか穴の向こう、ジャングルみたいなんだけど。なんでダンジョンの中にジャングルが?」
「んー……ダンジョン植物が密集しているのね。薬草も結構生えてるみたい」
「依頼にあった?」
ルーシェは頷く。
薬草は重さによって報酬が上乗せされるというし、毟っておきたい。
だけどこの毒川には入りたくない。川は浅いけど、毒が混ざっている訳だし足が浸かるだけでもマズいんじゃないかって思う。
「どうにかして川に浸からず、向こうにいけないかなぁ。うぅん……あ」
俺は隣で同じように穴を覗くルーシェを見た。
俺が見ていることに気づいた彼女が振り向き、頬を赤らめる。
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一分でも川の水を凍らせられれば、その上を歩いて穴を超えられるはず!!
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