ワンパン無双の最強聖職者は、スローライフを夢見た最強魔王の転生者でした。

夢・風魔

文字の大きさ
23 / 50

元魔王は脅迫する。

しおりを挟む
「た、大変なのね!」

 デリントン事件から十日後。
 彼らの姿はあれ以来無く、ローリエの啓示によって破門された。
 ――と思っていた。
 ポッソが来るまでは。

「デリントンくんが、デリントンくんが司祭になっているのね!」

 講義室にてポッソがそう叫ぶと、一瞬の静寂。そしていっきに大騒ぎ。

「ちょ、え? なんで?」
「待てよポッソ。まだ大神殿で学び始めて半年じゃないか」
「そうよ。三年学んで、それから見習い神官からスタートでしょ?」
「そりゃあ成績が優秀なら見習いをすっ飛ばせるけど、いくら何でも司祭はおかしい!」
「っていうか、デリントンくんの取り巻き軍団って、禁忌を犯して破門されてるじゃない。親分の彼だって、一緒に破門されたんじゃ?」

 ポッソに聞いたが、大神殿での学徒は三年ごとに募集される。
 三年学べば卒業となり、証を手にすることが出来るのだ。
 それを持って実家へと帰る者、見習い神官となって聖職者の道へ進む者とに分かれる。

 逆に言えば三年学ばなければ卒業の証は貰えず、聖職者への道も絶たれるという訳だ。
 
 聖職者の道を選んだ場合には、まず見習い神官からスタート。
 昇級試験に合格すれば神官に。そこから更に司祭、高司祭となるが、聖職者の二割は見習い神官、六割が神官だ。
 最大人口の神官をすっ飛ばし、まさかの司祭とはこれいかに。

 いや、何故デリントンは破門されていないのだ?

 お昼――礼拝堂へ行って女神像を睨みつけた。

 どういう事だ?
 ぼくを騙したのか?
 地獄に落とすぞ?

 ――いや待ってください。あのですね。
 ――ちゃんと啓示出しましたよ?
 ――デリントンとその配下の者、禁忌を犯したものにてわたくしの庇護下から除外するように……と。

 だがデリントンが司祭になったと噂されているぞ。

 ――うぅ、それはその通りです。

 じゃあ地獄行き決定。

 ――いやいや待ってぇ。最後まで話を聞いてぇ。
 ――そもそもわたくしは直接人にどうこう指示を出してはいけない存在なんです。
 ――その点は分かってくださいますよね?

 まぁ理解しよう。

 ――ほっ。それでですね、天の啓示を与えはしても、その後どうするかは人間社会に委ねられることになるのです。
 ――最初は審問会でも、彼含めた全員の破門が決定していました。
 ――しかし、この国の有力貴族の一声で、デリントンのみ処断無しと決まったのです。

 は?
 つまり神の言葉より貴族の言葉が優先されたと?

 ――うぅ。悲しいことですが、その通りです。

 神の声も地に堕ちたものだ。

 ――うぅ。最近は邪な者が安易に神官だの司祭だのになってしまって、ほんと困るんですよねぇ。

 ぼくの知ったこっちゃない。

 次は無い。そうデリントンには言った。
 もっとも、あの時の記憶は消去してある。ぼくに対して抱いた恐怖心だけを残して。
 それでもぼくは自分の言葉は曲げない。

 何かあれば、次は地獄に叩き落とす。
 文句はないね?

 ――えぇ。仕方ありません。

 ならお前の地獄行きも保留にしておこう。

 ――いえそこは無かったことにしてくださいませんか?

 さぁ、安心してこれからも目指せ聖職者の気持ちで頑張るぞー!

 ――急に爽やかにならないで。ね? ねぇ!?





 そんな事があってからひと月が過ぎた。
 毎晩ラフィに剣術を教え、フィリアと話をし、学友との親交も深めて行った。

「ポッソ、聞いてもいい?」
「うん。どうしたのであるかルインくん」
「このところ、随分と神殿内がカラフルに彩られているようなのだが、気のせい?」

 食堂までの渡り廊下。ひと月前まで頭上から落下物が絶えなかったあの場所だが、柱と言う柱に赤いリボンが巻かれ、植木にはキンキラ輝く小さなボールが飾られている。

「あぁそれはねぇ、神々の祝勝会が近いからなのね」
「祝勝会?」

 一年の最後の締めくくりの月。
 奴らは戦でもしていたのか? 誰と?
 神々の大戦はそもそも千年以上前に終わっている。

「光と闇の神々がそれぞれの陣営に分かれて戦った大戦の、祝勝会なのね。聖書に書かれているんだけど、読んでない?」
「いや確かに書かれているし暗記もしているが、年末だとは書いてなかったはず」
「あぁ、そうなのね! うん、書いてないのね。でも普通はどこの家庭でも、この時期になるとご馳走作ってお祝いするから知ってると思ってたの」

 ……知らなかった。

 ポッソの言う普通というのは、普通に豊かな暮らしが送れる家庭のようだ。
 うん。ぼくの実家、ド貧乏だったから。
 ここ数年でやっと飢え死にする年寄りが居なくなったところだし。

 しかし何故ご馳走が?

「お祝いだからね!」
「いやでもそれ、千年以上昔のこと――」
「いいのねそんなこと! 美味しい物が食べられれば、なんでもいいのね!」

 そう言ってポッソはぼくの手を引いて食堂へと駆けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

処理中です...